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うさるの厨二病日記

生涯中二の着ぐるみが、本や漫画、ドラマなどについて好きも嫌いも全力で語ります。【ネタバレ前提です。注意してください】

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【小説感想】司馬遼太郎「播磨灘物語」

小説

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司馬遼太郎黒田官兵衛を主人公にして書いた小説「播磨灘物語」を読んだのですが、

余りおもしろくなかった…。

期待に胸をふくらませて読んだだけに、残念です。

 

司馬遼太郎の小説で一番の武器である、人物描写が今いちだった

というのが、面白くなかった一番の理由だと思います。

 

特に主役の官兵衛が、よく分からない。

作者もこの人物をどういう方向性で描こうか、

迷っていながら連載が進んでしまったのではないかと思います。

一番の問題は、

官兵衛は「人の心の洞察力に優れた、才知溢れる人」ということになっているのですが、

どう読んでも頭が良さそうに見えない……。

という点だと思います。

 

荒木村重を説得しに行って、

牢にぶち込まれる経緯にその問題が端的に表れていると思います。

いくら「まさか主人の小寺氏がそこまで、変質しているとは思わなかった」

とか言い訳がましく書かれても、

「それが見抜けなくて、どこが策士なの???」

と思ってしまうんですよ。

 

「才知溢れるが、逆に平凡な人間の卑しさや小ささが分からない」

という方向性で描こうとしても、

官兵衛が最も優れているところは、

「人の気持ちが分かりすぎるところだ」みたいなことも書かれているので、

さらに頭が混乱します。

 

またそういう方向性で官兵衛を描く場合、

その上位互換の存在として、お父さんの宗円入道や竹中半兵衛がいるので、

主役なのに官兵衛の影が薄くなっています。

実際、ページ数ではそれほど出てきていないのに、

この二人のほうが官兵衛よりも、よっぽど魅力的です。

 

パパ入道を主人公にして欲しかったです。(ひどい…。)

 

あとは、官兵衛と言えば、秀吉との関係が外せないと思うのですが、

司馬遼太郎の他の作品では、

秀吉という人物はめちゃくちゃ明るくて楽しい人柄で、

色々と悪行もあるのにも関わらず、

その明るさによって陰惨な印象がなく人気があるという風に描かれているのですが、

播磨灘物語」の秀吉には、

陰惨さしかない……。

 

名前は一緒ですが、まるで別人です。

というか、作者もどうやってこの陰惨秀吉を描こうか迷ったんではないかと思うほど、

影が薄いです。

影が薄い秀吉って……。

 

播磨灘物語」は官兵衛と秀吉というメインキャラ二人が、

なぜか、影のようにうすらぼんやりとしているのです。

そりゃあ、面白くねーよ。

 

と思いながら、惰性で読んでいたのですが、

如水になったとたん、主人公がメーターがふっきれたかのように覚醒します。

 

(長政は、その程度の男だ)(「播磨灘物語」(四)より)

 

どうした? 突然。

しかも、相手は実の息子だし。

 

頭の悪い奴は、息子だろうが何だろうか人と認めない。

天下を狙って九州で暴れまくり、無理だと思ったらすぐやめる。

こういうのでいいんですよ。

 

こういう黒くて強い策士が見たかったんです。

と思ったら、もう最終章でした。

 

官兵衛時代と如水時代が、考え方も性格も才知も別人のようで、

ちょっと混乱しましたが、

別人なんだと思うことにしました。

播磨灘物語」に外伝「如水物語」が入っていたんだと思います。

たぶん、官兵衛の双子の兄貴か誰か。

司馬遼太郎も、そのつもりで描いたんだと思います。