うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

【箱根駅伝の魅力】「ただ他人が走っているところを見ていて、何が面白いの?」という疑問に全力で答えたい。

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*本記事は2017年箱根駅伝の記事です。最新の2019年の記事はコチラ↓

www.saiusaruzzz.com

 

今年も箱根駅伝が終わった

今年も箱根駅伝が終わってしまいました。

青山学院大学三連覇おめでとうございます(・∀・)

子供のころは、「青山学院?? えっ? 出ているの?」くらいの感覚だったのですが、時代は変わるものですね。

 

お正月の二日間地上波で放送され、毎年高視聴率を記録している箱根駅伝ですが、存在くらいしか知らない人もいると思います。

「関東人以外は興味がないのかな?」と思いきや、札幌から飛行機で来て午前二時から場所とりをして往路スタートを待っている、なんていう強者がテレビで紹介されていましたので、住まいも関係ないのかもしれません。

 

箱根駅伝にほとんど興味がない人からよく聞かれるのが、

「他人がただ走っているだけのところを見ていて、何が面白いの?」

という質問です。

 

この質問は箱根に限らず、駅伝やマラソンの中継を見ることが好きな人は、聞かれることが多いと思います。(そうでもないのか?)

自分は過去に何回か聞かれました。

他のスポーツでは、聞かれたことがありません。

皮肉でも何でもなく、純粋に不思議だ、という感じの聞かれ方です。毎年、箱根を楽しみにしている自分も「まあ、尤もな疑問だな」と思います。

 

今回は、「箱根駅伝? そういやあ親戚の家に行くと、いつもついているな」くらいの感覚の方にも少しでも伝わるように、箱根駅伝の魅力を全力で語りたいと思います。

 

ちなみに自分は陸上経験どころか、スポーツは子供のころからほとんどやったことがありません。

清々しいくらいのもやしっ子の視点から、お送りしたいと思います。

 

選手同士の駆け引きが面白い

一番の見どころはこれですね。

今年の一区は、この駆け引きが非常に面白かったです。

 

一区で今年、最も実績もあり力もある、区間賞候補とみられていたのが、東洋大学の服部弾馬選手です。

 

他の選手がどこまでこの服部選手についていけるか、あわよくば抜きされるか、というのがひとつのポイントでした。 

スタートしてしばらくは、1キロを3分以上で走る超スローペースだったので、20人全員がほぼ、団子状態で走っていました。(一キロ三分で走るのが平均と言われています。)

どこで誰が仕掛けてくるか、

ということを選手全員が走りながら、お互い様子を探りあっている状態です。

 

一体、誰がどういう思惑で、どこで仕掛けてくるのか。

どの選手が何を狙っているのか。

そういうことを見ている側も想像して、この後、どこで何が起こるのか固唾をのんで見守っています。

 

服部選手が4.7キロ付近で仕掛けたのですが、有力校の選手はほとんどついてこれたので再び団子状態になりました。

結果から言えば、失敗したわけです。

仕掛けた側からすると、勝負をかけたのに引き離せなかったというのは、精神的に非常にキツイです。

 

区間賞の最有力候補だったのに、服部、大丈夫か?

もう一度、勝負する力は残っているのか??

そしてこの状態で、誰かが「この隙に、オレが勝負に出る」と考えるのではないか?

そういうことを想像しながら見ています。

 

一度勝負に失敗すると自滅してしまう選手も多いのですが、服部選手はさすが経験が豊富なだけあって、そのあとも焦らず20キロまで集団で走っていました。そして最後の最後で、スパートをかけました。

結果、下馬評通り区間賞をとることができました。

 

ただ駅伝は、一区だけ勝てばいいわけではありません。

総合で勝たなければ意味がない。

東洋大学は、一区で服部弾馬という強力なカードをきっていて、「一区の区間賞は当然とり、できれば2位と30秒差をつけておきたい」という目論見がありました。

 

それは2区以降の選手を地力で図ると、「一区で30秒差がないと厳しい」という計算があるからです。

どういうレース展開にするか、というのも計算して、監督は選手を配置しています。

目論見が多少違ったことで、今後のレース展開をどうしていくか、後続の選手も監督も考え直しているのだろうな、それがどう影響するのかな? ということを考えて見るのが楽しいです。

 

区間賞をとった服部選手は素晴らしい走りでした。

ただ、実績から言うと、「区間賞をとって、さらに2位とは30秒差をつけて欲しい」ということまで期待されていました。

それが2位との差が1秒差、最大のライバルである青山学院大学との差が4秒差しか作れなかったことが、後々どう影響するかなということが新たな見どころになります。

 

コースが特徴的で面白い

箱根駅伝は一区間の中でもアップダウンが激しかったり、海沿いを走るので海風の影響が強かったり、長距離の中でもかなり特殊なコースだと思います。

 

五区の箱根の山登り、六区の山下りが最も特徴的ですが、それ以外に二区も有名な「権太坂」があったりして走ってみるとかなりキツイコースだと思います。

二区はさらに最後の最後でかなりキツイ上りがあり、高低差を見ると、考えた人は鬼だなと思います。

 

こういう特殊なコースがあるからこそ、平地ではそれほどずば抜けて速いわけでもないのに、山登りでは圧倒的な強さを持つ「山の神」と呼ばれる選手も出てきます。

五区の区間記録は、元青山学院大学の神野大地選手が持っています。

 

ただ自分の中で「山の神」といえば、四年間にわたって圧倒的な強さで五区に君臨していた東洋大学の柏原竜二選手ですね。

 

一年生のときに彗星のごとく現れて、「当分は破られないだろう」と言われていた「初代山の神」の今井選手の記録をあっさり塗り替えました。その後も、圧倒的な強さで他校の監督を震え上がらせていました。

駒澤大学の大八木監督が、「五区に柏原くんがいると、五分差があっても厳しい」と言っていたのが印象的でした。

在籍期間中は他校の監督からまで畏怖されていた、まさに神のごとき圧倒的な存在感と異次元の強さを持っていました。

本人は「平地の走りも見て欲しい」と、少し不本意みたいでしたが。

 

もうひとつ、柏原選手は自他共に認めるオタクで、それでもかなりキャラが確立していました。

しかも割とガチオタ。

 

「声優オタクの箱根駅伝選手」という存在が出てきたことに、時代の変化を感じました。

「オタクといえば、根暗でスポーツとは無縁」というステレオタイプで語られ、本人も隠したくなるような時代はもう終わったんだなあと。

テレビで東洋大学の練習風景も映されていましたが、柏原選手以外の選手も普通にオタ話をしていました。

 

選手の思いが熱い

「子供のころから、箱根を走ることが夢でした」

「箱根を走るために、この大学に入りました」

そういう選手がけっこう多いです。

他の駅伝だとこういう話は聞かないので、箱根を特別だと思っている選手が多いんだろうと思います。

 

四年間がんばってきても、一度も走れなかったり、当日の朝にエントリーを外されたり、走っている選手の影にはそういうたくさんの選手がいるんだな、そして走っている選手も「自分だけで走るんじゃない」という言葉を口にしているのを聞くと胸が熱くなります。

 

満足のいく走りができた選手が喜んだり、

万全の体制で挑んだのに、思うような結果が出なくて悔し涙を流したり、

精根尽き果てて倒れこんでしまったり、

どんな選手も全力で走って、全力で喜んで、全力で悔しがる姿に胸を打たれます。

 

監督も個性的で面白い

大学だから選手は四年で箱根駅伝とお別れしますが、監督は在任が長い人が多いです。

 

青山学院大学・原晋監督

原監督は、青山学院大学が強くなった時期から就任した印象があったのですが、監督になったのは2004年だそうです。監督になってからも、低迷期が続いたんですね。

 

「箱根に出れればいい方だ」というイメージだった青山学院大学を三連覇させた名監督ですが、過去には予選会16位の惨敗で大学側から「話が違う」と責められりもしたようです。

とにかく実績を出さなければいけない、大変な仕事ですよね。

 

東洋経済のこのインタビューが、すごく面白かったです。

toyokeizai.net

「報告」と「相談」の違いとか、なるほどなあと思いました。

優れた指導者というのは、自分の考えを他人に伝えるのが上手いですね。

 

駒澤大学・大八木弘明監督

駒澤大学といえばこの人。

意外なことに、監督の就任は2004年からみたいです。その前はコーチや助監督をやっていたようです。

もう四半世紀くらい、監督をやっているかと思っていた…。

 

監督は選手と並走している運営管理車から指示やアドバイスを話すのですが、大八木監督はずっと怒っているイメージです。

「なに、やっているんだあごらあああああ(# ゚Д゚)」

「ちんたら走ってんじゃねえええええええ(# ゚Д゚) 後ろ、きてんだよおおおおおお」

みたいなことを、途切れることなく延々と言っていたのが印象的でした。

ヤ〇ザのようで怖いですが、聞いているぶんにはとても面白いです。

厳しく熱い監督なんでしょうね。

 

東洋大学・酒井俊幸監督

 

イケメンで女子に大人気の酒井監督。一部では、選手よりも人気があります。

2009年に監督に就任したときは、弱冠32歳で「若いなあ」と思いましたが、今や完全にベテランの風格ですね。

無名だった柏原選手を見出したのも酒井監督です。

 

駅伝は人生に似ている

実際に走るときはたった一人で、何があってもどれほど苦しくても誰かに代わってもらうことはできない。

仲間がいても、応援してくれる人がいても、その道は自分の二本の脚で走りきるしかない。

時には周りにライバルがいてその動向を伺ったり、時には敵も味方も誰もいない長く続く道を、たった一人で走ったり、マイペースで走るときもあれば、スパートをかけるときもある。

その時期も、自分の判断で自分で決めなければならない。

監督がアドバイスしてくれることがあっても、最終的に決めるのは自分自身。

 

駅伝というのは、見れば見るほど人生に似ているなと思います。

 

サッカーやバスケがイベント続きの一週間をハイテンションで駆け抜ける期間だとすれば、駅伝は淡々とした日常生活の一コマだと思います。

 

「特に何の事件もイベントも起こらない、他人の淡々とした日常を見ていて何が面白いのか」

でもそこにはいろいろな思いがあり、一生懸命生きている平凡な日常の積み重ねが人生そのものなのだ、と思うと感慨深いものがあります。

 

自分の人生は、自分で歩むしかない。

誰かに代わってもらうこともできない。

でもだからと言って、チームメイトの支えや祈り、周りの応援、テレビで自分の走りを見ている人の眼差しが無意味なわけではない。

そういったものがあったから、ここまでこれた。

そういった形のないものが、自分に自分以上の力を与えてくれる。

そういうものに囲まれて、自分は自分の人生を歩んでいる。

 

駅伝の面白さは、何ということもない平凡な人生の面白さに似ているのかもしれません。

 

というわけで、少しでも興味を持たれた方は、ぜひ、来年のお正月は箱根駅伝を見てみてください。

 

と語りつつ、最近は正月が忙しすぎて、ちゃんと見れていません……(-_-)