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うさるの厨二病な読書・漫画日記

生涯中二の着ぐるみが、本や漫画、ドラマなどについて好きも嫌いも全力で語ります。【ネタバレ前提です。注意してください】

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会社という理不尽な場所の楽しさと、理想の上司像を描く「中間管理録トネガワ」

社会問題 漫画 この人から学ぶシリーズ

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購読しているみかんさんのブログ「好きに生きる」で、先日、こんな記事を読ませていただいた。

litoli.hatenablog.com

「仕事」に対してずっとネガティブなイメージを抱いていたが、少し気持ちが変わってきたという記事だった。

 

はてなでも昨年「レールの乗った人生は嫌だからフリーランスになる」という記事が話題になった。

どんなに他人から見て見通しが甘かろうと、人生は本人の自由に生きる権利がある。大学を中退しようが、就職しないでフリーで働こうが好きに生きればいいと思う。

自分が非難するのは、経験したこともない他人の生き方を勝手な想像で「レールに乗った人生」「そんな人生は嫌だ」と語ったことに対してだ。

 

ただ最近、少し違う考えも出てきた。

ネットでは、「働く」ということに対してネガティブなことが語られていることが多い。

もちろん仕事に必ずつきまとう理不尽さや後ろ向きな気持ちを吐き出しているだけで、そういう思いを抱えながらも真面目に日々仕事をこなしている人が大多数だと思う。

ネットでくらい、ネガティブな気持ちを吐き出したい、その気持ちは十分わかる。

 

ただネットでこういう言葉を見て、就職したことがない若い人が仕事や会社というものに対して、いいイメージがまったく持てないのも、また当然かもしれないと思った。

自分も就職前の学生の立場でネットを見ていたら、「就職するというのはレールに乗ったつまらない人生なんだな」と思うかもしれない。

 

ということで、今日は働くことや会社というものが楽しく思える本を紹介したい。

中間管理録トネガワ(4) (ヤングマガジンコミックス)

中間管理録トネガワ(4) (ヤングマガジンコミックス)

 

 すごい、表紙からして、とても楽しそうだ。

 

利根川幸雄は、カイジの敵役だ。

「中間管理録トネガワ」は、福本伸行の大人気漫画「賭博黙示録カイジ」のスピンオフであり、物語初期の最大の敵役である利根川幸雄を主人公にした漫画だ。

 

利根川と言えば、このセリフが一番有名だろう。

「世間の大人が本当のことを言わないなら、オレが言ってやる」

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(引用元:「賭博黙示録カイジ」福本伸行 講談社)

「その認識を誤まるものは、生涯地を這う」

 

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(引用元:「賭博黙示録カイジ」福本伸行 講談社)

「世間は、お前らの母親ではない」

 

こういう厳しい言葉の数々で、カイジを始めとする集まった若者たちの心に喝を入れる。

「カイジ」の面白さ……、福本漫画の面白さのひとつは、悪党たちが吐く「辛辣だけれども現実的でぐうの音も出ないほどの正論」をカイジが命がけの行動で覆していく点にある。

 

トネガワは集まった若者たちに上から目線で厳しい正論を語るが、自分でもその厳しい正論を貫く。

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(引用元:「賭博黙示録カイジ」福本伸行 講談社)

勝負に負ければ、自らの意思で、約束通り高熱の鉄板の上で土下座する。

こういう善悪を越えた誇り高さや厳しさ、筋を通す強さが利根川の最大の魅力だ。

現実と向き合えず怠惰に日々を過ごしていたカイジにとっては、利根川は社会の厳しさや乗り越えるべき壁を体現した存在であり、自分が向き合えない厳しい社会で生きている人間でもあり、「疑似父親像」として機能している。

 

生まれて初めて所属する社会(家族)の中で、乗り越えるべき壁(父親)を乗り越えて、真の意味で社会(兵藤)に立ち向かう。

「カイジ」をそんな構造で見るのも面白い。

 

会社という場所は、理不尽の塊だ。

「中間管理録トネガワ」は、そんな利根川の普段の働きぶりを描いた漫画だ。

読めば読むほど、「会社あるある」で溢れている。

 

権力者の鶴の一声でくつがえる決定。

気分で動く上司。

何故あるのかが分からない、会社独自のローカルルール。

意味のない会議に、意味のない仕事。

世代間のジェネレーションギャップ。

空気が読めず、暴走する部下。

せっかくの休日に行われる、訳のわからない行事。

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 (引用元:「中間管理録トネガワ」 萩原天晴/橋本智広 三好智樹 講談社)

「何がレジャー! いい迷惑だ、せっかくの休日に……!」

全サラリーマンの心の叫び。

 

利根川は、理想の上司だ。

利根川は中間管理職なので、部下・黒服たちがいる。

上は気分屋で我儘な兵藤会長のご機嫌を常に伺い、下は同じように見えて個性がバラバラな黒服たちをまとめるのに苦労している。

「中間管理録トネガワ」は、上からは抑圧を受け、下からは突き上げをくらい、上も下も自分の苦労を理解しない、孤独な中間管理職の悲哀が描かれている。

 

部下の暴走の責任をとって減俸されたり、会長の顔色を窺いすぎて部下の信頼を失ったりする。

利根川のすごいところは、そういったことをいっさい周りのせいにしない。

ましてや、自分がしてきた苦労を部下に味合わせたり、仕事の価値観を押しつけたりもしない。

利根川は兵藤の命令で20連勤もこなすが、部下の黒服たちにそれを強いたりしない。

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(引用元:「中間管理録トネガワ」 萩原天晴/橋本智広 三好智樹 講談社)

黒服がこれだけ驚いているところを見ると、普段も「忙しいときは休日出勤も当たり前」などの自分の価値観を語ることもないのだと思う。

 

先日、電通社員が過労が原因で自殺したときも問題になったが、人というのは自分がやってきた苦労を他人に(特に下の人間に)押し付けがちだ。

「自分もそれをやってきたのだから、お前たちにできないはずがない」

「あの苦労があったから、今の自分があるのだ。自分は、あの苦難を乗り越えてきた人間なのだ」

自分が苦労していたときはどれほど心の中でそれを強いる上司を毒づこうと、自分が上に立ったときは、自分の過去の苦労を意味のある美しいものにするために、同じことを繰り返してしまう。

そうすることによって、自分のやってきたことに価値を持たせようとする。

 

しかし利根川はむしろ、そういった悪しき連環を断ち切ろうとする。

自分が嫌悪した過去の上司たちと同じことはしない、そういう思いがある。

 

また自分と同じことを言っても、まったく会長から怒られない黒崎に対しても、嫉妬をほとんど抱かない。

会長の不公平を責めたりもしない。

周りの理不尽さを責めることなく、「そういう環境で自分がどうするか」だけを常に考える。

黒崎に嫉妬したり、蹴落とそうとするのではなく、黒崎のいいところを真似し、取り入れようとする。

ギャグ漫画だからまったくクローズアップされないけれど、こういうところがすごいと思う。

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(引用元:「中間管理録トネガワ」 萩原天晴/橋本智広 三好智樹 講談社)

「槍…、アウツ?!」

でも、失敗する。

何でミゾレがよくて、槍が言いすぎなのかはわからない。すごい理不尽。

 

「部下によく言われる上司はいない」とよく言うけれど、そんな利根川だから、黒服たちも、たまには反発したり意見したりしながらも慕っている。

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(引用元:「中間管理録トネガワ」 萩原天晴/橋本智広 三好智樹 講談社)

どんな時も他責的にならず、周りの環境ではなく自分が変わろうとする。

自分の価値観を押し付けず、部下の気持ちをくみ取ろうとし、様々な個性を持つ部下を管理し指導する術を常に学ぼうとする利根川は、稀にみる理想の上司だと思う。 

 

会社というのは、確かに理不尽な場所だが…。

会社というのは、確かに理不尽さばかりを感じる場所だ。

自分の保身しか考えないクソみたいな上司がいて、気分で動くトップが朝令暮改で方針をコロコロ変え、言ったことを言わないと言う奴がおり、言っていないことを言ったという奴がおり、何もできなくせに態度だけはデカいクソ生意気な後輩がいて、自分がやっていない失敗で客に頭を下げなければならず、忙しいときに限ってまったく意味のない会議が開かれ、他人の訳のわからないたわごとに一時間も付き合わなければならず、

 

そういうことを別に自分だけではなく、お互い思っていたり思われていたりする中で、特にやりたくもない仕事を、非合理的で理不尽なルールの中でしなければならない。

そんなことを毎日やるのが仕事であり、それが会社だ。イヤにもなる。

 

どんなに自分が会社や周りのことを考えても、会社というのは会社のことしか考えていない。自分の心身を犠牲にしてまで働こうなどと考える必要は、まったくないと思う。

 

ただ、理不尽でもイヤなことがあっても、気の合わない苦手な人間がいても、仕事というのはそれだけでもない。

楽しいこともあるし、達成感もあるし、喜びもある。

中には仲良くなれる人もいるし、尊敬できるような人に出会えることもある。

環境にもよるし、人にもよる。千差万別だ。

そんな年齢も性別も考え方も性格も、何かもかもがまったく違う人間がひとつの場所に集まり、家族よりも長い時間を一緒に過ごす。よく考えると不思議な場所だ。

そんな場所だから、今まで出会ったことのない人たちにたくさん出会えたし、今まで知らなかった自分自身を知ることもできた、そんな風に思う。

 

[まとめ買い] 中間管理録トネガワ(ヤングマガジンコミックス)

[まとめ買い] 中間管理録トネガワ(ヤングマガジンコミックス)

 

とっても 楽しそうだけど、帝愛グループは超絶ブラック。そして何故か女性社員がいない。

 カイジは「沼」までしか読んでいない。