うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

仲間由紀恵主演ドラマ「そして誰もいなくなった」を、原作と比較しながら感想を述べたい。

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2017年3月25日(土)26日(日)に二夜連続で放送された、仲間由紀恵主演ドラマ「そして誰もいなくなった」の感想及び、原作との相違点についてなどを語ります。

第一夜

第一夜

 

 
原作及びドラマのネタバレをしています。未読未聴の方はご注意ください。

 

ドラマを主軸にして原作と絡めて話をするため、登場人物の名称を俳優名で統一しています。

 

 

 

 

 

 

思ったよりも原作通りだった

ドラマ内の役割も各人が告発された殺人の内容も事件の経過も、思ったよりも原作通りでした。現代だと少し不自然な点、理解されづらいだろう点、問題になりそうな点だけ変更して、あとはほとんど設定を変えていません。

 

柳葉敏郎が元傭兵で軍事評論家というのはちょっと苦しい設定だな、と思いましたが、殺人の告発内容を余り変更したくないとなるとこの辺りがギリギリだったのかなとも思います。

個人的には独身の老婦人エミリー・ブレントがキャラとして好きなので、女優(大地真央)に変更されていたのは残念でした。物議を醸しだしそうな設定は避けたのかもしれません。

他の人物設定の変更は、さほど気になりませんでした。

 

他にも気になった点があります。最初の船のシーンで家庭教師(仲間由紀恵)と仲良く話すのは、原作だと柳葉敏郎の役どころです。

この事実は重要で、このシーンがないと、後に仲間由紀恵が「医者が怪しい」と打ち明けるのがなぜ柳葉敏郎なんだろう? と不自然に思えます。この二人は、それ以前に絡んでいるシーンがないんですよね。柳葉敏郎は、残った人員の中ではかなり怪しいほうだと思うのですが…。

ドラマしか見ていなければ、仲間由紀恵が何か企んでいる伏線か?と疑うところです。

原作だと島に上陸する以前から、柳葉敏郎と仲間由紀恵が仲良く話すシーンがあるのでそれほど不自然には感じないです。

向井理のキャラを立てるためだとは思うのですが、それはみんなを紹介するシーンで十分じゃないかなとも思います。

 

元議員(津川雅彦)が妻の愛人を殺すために、手に入れたテロの情報を黙っていたというのも気になりました。それはいくらなんでも…どうなんだろう?? 他にもたくさん人が死にましたよね?? いくら嫉妬に狂っても、そういう殺し方をするかな?? 

あと妻の手紙の内容が、余りに分かりやすくて笑いました。中学生かYO!

 

サスペンスとミステリーの見事な融合

ドラマの作りとしては、事件そのものを前半に持ってきて、後半が警察による謎解きという作りがすごく上手いなと思いました。

原作のボトルメッセージも「その告白文が嘘か本当か分からない」ような怖さがあってすごく好きですが、ミステリーとして成立させるなら「どういう証拠からどういう解答を導き出したか」という道筋は不可欠だと思います。

 

「そして誰もいなくなった」という物語自体は、個人的にはミステリーというよりはサスペンスの傑作だと思います。

ドラマは少し過剰演出な面もありましたが、事件自体はサスペンスとして描いていて、内容が分かっていても見ていて面白かったです。

仲間由紀恵が首を吊るときに、後ろから突き飛ばされて足をバタバタさせている映像が最高に怖かったです。

サスペンスとして終わらせず、後半謎解き編を盛り込んで、きちんとミステリーとして成立させているところも良かったです。

 

この変更点が、どうしても気になった

すごく面白かったですし、「原作もこうしたほうが良かったのでは」と思う箇所すらありました。

ただどうしても「招待客の中で、渡瀬恒彦だけは告発された殺人を犯していない」という箇所をなぜ変更したのかが気になります。

 

原作ではこれが解決へのヒントとして、判事(渡瀬恒彦)の告白文の中で書かれています。

だいいちに警察当局はエドワード・シートンが有罪であることを知っている。したがって、島に集まった十人のうちの一人は殺人を犯していないので、逆説的に、この人間が犯人であることは明らかである。

(引用元:「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティー 早川書房)

クリスティーはミステリーを書くにあたって、フェアであるということに非常にこだわっています。

「フェアかアンフェアか」と物議を醸しだした「アクロイド殺し」も「こうだから、この物語はフェアだ」と言っています。ポアロ最後の事件である「カーテン」でもポアロの口を借りて、「きちんと手がかりを見れば誰が犯人か分かるはず」と述べています。

こういう公平さがあるからこそ、「そして誰もいなくなった」はサスペンス色が強くともミステリーであるという自負がクリスティーにはあったと思うんです。(その手がかりが解決に至るまで十分なものだ、と読者が思うかどうかはともかく。)

 

判事(渡瀬恒彦)のキャラを考えるときも、殺人をしたいという衝動を、事件を起こす前まで強靭な意思で押さえつけていたというのは、非常に重要な要素だと思います。

その自らの二面性までも俯瞰しているかのような怖さが最後の告白文の中にあり、その怖さこそ、物語が終わったあとの怖さにもつながっているのだと思います。

 

「殺人に芸術はない」

という結論に収めたかったのは分かりますが、そのために判事(渡瀬恒彦)が下した死刑判決は適正だったという箇所が変更され、結果的にキャラクターも変化していたのは残念でした。

 

ここは「そして誰もいなくなった」という物語をミステリーたらしめるために、変えてはいけない箇所だったのではないかと思います。

 

原作ファンも十分に楽しめる内容だった

最後の一点は、原作の根幹を支える箇所の変更だったために見逃せないと思いましたが、それ以外は楽しんで見れました。

結末を知っている人でも、十分楽しめる内容だと思います。

亡くなられた渡瀬恒彦さんをはじめ、俳優陣の演技も良かったです。

 

歴史に残る名作である原作に、十分な愛と敬意が払われた良質なドラマでした。

 

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