うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

ドラマ「銀と金」第13話「殺人鬼有賀編」が色々と残念だったので、その理由を書きたい。

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Amazonプライムビデオでドラマ「銀と金」の第13話「有賀編」を視聴しました。

第13話

第13話

 

 

地上波で放送されたドラマが満足の出来だったので楽しみにしていましたが、非常に残念な内容でした。制作スタッフは同一のようなので、一体、なぜこうなってしまったのかよく分かりません。

「良かった」というかたには申し訳ないのですが、個人的にはだいぶひどいと思いましたし、不満が多いです。

どういうところが気になったか、具体的に書いていきたいと思います。

 

森田のすごいところがすべて削られている。

一番、ひどいと思ったのがここです。

森田は普通の青年に見えて、鋭い嗅覚や判断の素早さ、いざというときの度胸などすごいところがたくさんあります。

原作の「有賀編」は、一人で仕事を請け負うことで、その「普通に見えて常人離れしているところ」「なぜ、銀二が森田を仲間にしたのか」という森田のすごさを読者に説明する編でもあります。

 

扉の開け閉めの回数で、部屋から出てきたのが有賀と分かる。

有賀に罠をしかけて、不意をつく。

有賀に「逃げていいよ」と言われても「逃げないで戦う」と言う。

 

これらがほとんど削られている。

そして「窮地を切り抜けるために判断し戦う」という役割のほとんどが、ドラマのオリジナルキャラクターで、しかもこの回にしか出てこない女殺し屋??に割り振られています。

「女殺し屋」という現実離れした設定は実写で出すのは厳しいと思うのですが、それを押して出したのだから何か目論見があるのかと思いきや、特に何もなかったです。

「逃げない」という森田のセリフを強奪し、ただ撃たれて死にました。

何だったんだ???

 

伏線の使い方や回収のしかたがおかしい

これは「銀と金」には関係なく、物語の構成としておかしいと思った箇所です。

有賀が「子どものころ火事に巻き込まれている」ということを森田が知る、という伏線から、「有賀は火を怖がるのではないか」ということを森田が思いつく点です。しかしこれは、火が風で消えてしまったために、物語の展開としては何の意味もないものになりました。

展開に影響を与えない描写を伏線まで張って入れるというのは、物語の描きかたとしては拙いと思います。単なる尺稼ぎに見えてしまうし。

 

あともうひとつ、撃たれたときに女暗殺者が実は生きている、という描写があったのですが、これも最終的には死んでいるうえに理屈ではなく情緒に回収されるので、あんなに意味深に描写する必要がないです。

伏線というのは「物語が大きく展開し」「読者がああそういえばそれを遠因となる描写があった」と思わせるための装置です。

読者が十分想定できるストーリーラインで物語を展開させているのであれば、伏線というのはいらない描写です。

物語がレールに沿って走っていれば、切り替え装置はいりません。むしろ「何で切り替えたんだ?」「切り替えたあとも、元のレールに沿ったまんまなんだけれど?」という疑問が湧くだけです。

「でも、女暗殺者が船田に電話をかけたから、船田が駆けつけられたのでは?」と思う向きもあると思います。この展開、設定について遡って色々と言いたいのですが、ものすごく長くなるのでやめておきます。

 

そもそもなぜこんな出す必要のないオリキャラを出したのか、ということが分かりません。

物語の展開には関与しない、意味のない、それでいながら世界観を壊しかねない非現実的な設定、主人公森田の役割を奪いとって原作のファンをがっくりさせ、それでいながらほとんど自分のキャラは立たずに死ぬ、という悪夢のような登場人物でした。

 

ドラマ制作陣は、森田に興味がないのか?

テレビ放映されたドラマを見ていたときから、自分はドラマの森田に非常に違和感を持っていました。

原作の森田は「一見、どこにでもいる普通の青年」でいながら「いざというときは優れた判断力を発揮する」

そして一番の特徴は、情が深いところです。

少し前まで自分を殺そうとした人間でも、その境遇に同情して涙を流すし、自分を殺そうとした人間を助けるために、マシンガンの前に丸腰で飛び出す、そういう深い人間愛が森田の一番すごいところです。

ところがドラマの森田からは、そういう「熱いところ」「深い情愛」みたいなものがほとんど感じられません。

「ただクールで頭が切れる男」という印象です。

 

第13話ではそういった森田の「人よりも情が深いところ」「普通の青年らしいところ」が描写されていたのですが、そうすると今度は有賀に「逃げていいよ」と言われたらすぐに逃げようとしたり、炎が消えて慌てふためいたりする小物臭満載になってしまって、がっくりしました。

 

俳優の演技はとても良かった。

このドラマは相変わらず、俳優の選択だけは間違いがありません。

今回、有賀を演じた手塚とおるさんも素晴らしい演技でした。

「銀と金」を見ていて思うのは、俳優というのは本来、このレベルのことができて当たり前なんだな、ということです。笑い方、表情、言葉の抑揚の付け方、間の取り方、そういうもののひとつひとつをどうすれば、見ている人が驚くか、怖いと思うか、どういう感情を抱くか、全部熟知している印象です。

 

船田のカッコよさは異常。

原作では出番どころか、セリフもほぼなかった船田ですが、ドラマでは大活躍しています。今回もカッコよかったです。

 

まとめ

テレビで放映されたぶんは、原作の大ファンである自分も十分楽しみ満足できたので、最後の最後でこれ、というのは非常に残念でした。

あの女殺し屋を主人公にした物語を描きたくて、「銀と金」の話に無理矢理組み込んできたのでは、と邪推してしまいます。そういうことがやりたければ、オリジナルドラマでやって欲しいです。

安田、巽、船田の三人のスピンオフでもいいと思いますよ。

 

この感じで神威編を作ったら、田中が大活躍しそうだな。

 

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