うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

小池ノクト「蜜の島」は、アンチミステリー好き、どんでん返し好きにおすすめ。

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ふと目に留まった小池ノクトの「蜜の島」を購入した。

 
あらすじが面白そうだったこと、全4卷と気軽に読めそうなこと、レビューがかなりの高評価だったことで購入を決めた。
もうひとつ、小池ノクトの絵がものすごく好みなこと。
 
小池ノクトのことは、竜騎士07が原作の漫画「蛍火の灯る頃に」の作画で知った。
最初見たときから、自分が漫画の絵の中では一、二を争うくらい好きな高橋ツトムの絵に似ていると思った。元アシなどつながりがあるのかな、と思ったけれど、そういう情報も出てこないので、空似?かもしれない。とにかくすごい好みの絵だ。

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(引用元:「蜜の島」1卷 小池ノクト 講談社)
 

「蜜の島」あらすじ

終戦直後、復員した南雲が、戦死した上官の娘・ミツを、ミツの母親の生まれ故郷である岩津島に送り届けようとするところから始まる。
岩津島は地図にさえ載っていない島で、終戦後に米国がその存在を発見し、調査に乗り出していた。
南雲とミツは、偶然同じ船内にいた内務省の調査官・瀬里沢と共に岩津島に辿りつく。
 
島に住む住民は明るく屈託がない様子だが、妙に話が通じなかったり、古い家にミイラになった遺体が残されていたり、村はどこか外の世界とは異質な雰囲気がある。
三人が到着した直後に、村の娘ハナが崖から落ち事故死する。
そして瀬里沢の同期であり、村に調査官として派遣されていた今村の、切り落とされた腕が発見される。
 

短い物語の中に、様々な要素が詰め込まれている。

全4卷と短い物語なのだが、「蜜の島」には様々な要素が贅沢なほど詰め込まれている。
 
歴史の裏舞台に追いやられた平田神道、日本の創生の古代神話、共同体とは何か、死とは何か、自分とは何かという概念的な話。
衒学を思う存分楽しんだり、形而上学概念でミステリーを成り立たせようとするその筋は、アンチミステリーの名作群のオマージュのように見える。
そういう方向性で解決するのかと思いきや、最後の最後で提示される驚くべき事件の真実。
アンチミステリーの要素とミステリーが非常に上手く融合した鮮やかな解決は、すさまじく爽快だ。
 
あとは瀬里沢がカッコいい。頭が切れてクールに見えて、実は情に厚い男。

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(引用元:「蜜の島」1卷 小池ノクト 講談社)
三白眼といい、髪型といい、「進撃の巨人」のリヴァイに若干似ている。
 

ちょっと話が駆け足すぎるような。

手軽に読めそうな点が気に入って購入したのでこんなことを言うのは何なのだが、描いている要素に比べて話が駆け足すぎる。
 
物語のコアな部分はしっかり描かれているのだが、遊びがほとんどない。
キャラ同士の人間関係も、かなりあっさりしている。
最後の真実の動機についてはミステリーの解決としてはうなったものの、感情面では今いちピンとこなかった。
もう少ししっかり描きこんだほうが、読んでいるほうもキャラに対して愛着が湧くので感動が深まるし、事件についても納得しやすいのではと思った。
 
終わり方も、かなりあっさりだ。
最後の締め方は、新しく生まれた「わたし」に通底するので上手いなと思ったものの、「必要なことだけ描きました」という感が否めない。
余りに手際が良すぎて、プロットだけを見せられているような気持ちになる。
それでも十分面白いのだけれど、もう少しじっくり描いても良かったと思う。
 
ベースがきっちり考えられている物語だけに、「よくできているなあ」という思いよりも、もったいないという気持ちが先行する。
 

まとめ

設定がすごく凝っていてよく考えているだけに、そこにのっける物語をこんなに手早くあっさり終わらせるのかともったいなく感じる漫画だった。

 

もうちょっとじっくり描いても良かったのに、というもったいなさは感じるものの、だからと言ってつまらないということはまったくない。

「話が面白そうだし、小池ノクトだし読んでみようかな」くらいの気持ちだったが、読み出したら止まらなくなり、一気に読んでしまった。

 民俗学的要素が好き、概念的な話が好き、ミステリーが好き、サスペンスが好き、このうちのどれかが当てはまるならば、読んで損はしないと思う。
 

全4卷で非常にきれいにまとまっている話なので、面白い漫画を探しているかたはぜひ読んでみて欲しい。

 
「蛍火の灯るころに」も面白い。まだまだ導入部分という感じだけれど。