うさるの厨二病な読書日記

生涯中二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好きも嫌いも全力で語るブログ。

follow us in feedly

岡田麿里初監督作品「さよならの朝に約束の花をかざろう」ネタバレ感想

【スポンサーリンク】

 

2018年2月24日(土)に公開された、岡田麿里初監督作品「さよならの朝に約束の花をかざろう」を映画館で見てきた。

映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』公式サイト

 

「イオルフという不老長寿の伝説の種族がいる。彼らの不老長寿の血を狙って、大国メサーテが侵略してくる。壊滅した故郷から逃げ出したイオルフの少女マキアは、両親を殺された人間の子供エリアルを拾い、二人で生きていく」

というのが、ざっくりとしたあらすじ。

 

主人公マキアのポストカードが、来場特典だった。

f:id:saiusaruzzz:20180226171752p:plain

(©P.A.WORKS)

 

 

メインターゲットに、どんな層を想定しているのか疑問だった

公式のホームぺージを見たときに思ったのは、「これはどの層をターゲットしているのだろう?」ということだ。

「愛して、よかった」というキャッチコピーから、設定だけを読むと「純愛ストーリー」を想像すると思う。だとすると20代~30代の女性がメインターゲットになりそうだけれど、コンテンツがアニメだと興味を持つ人はかなり絞られるんじゃないか。「君の名は。」が大ヒットしたけれど、あれはプロット自体は割と単純で分かりやすいものだった。

 

「さよならの朝に約束の花を飾ろう」はファンタジー、しかも和製ファンタジーだ。漫画やラノベでファンタジーに親しんでいる人じゃないと興味を持ちにくいんじゃないか。

「ベルセルク」や「ゲーム・オブ・スローンズ」のようなシビアな世界観で行われる壮大なドラマなら男性も興味を持ちそうだけれど、ゲームのような世界観のファンタジーで、アニメで年齢差、種族差のある純愛ものとなると、どの層が観に行くんだろう?? とちょっと不思議だった。

小学生以下の子供だと理解するにはやや難しい設定だと思うし…。

 

自分が考えたこの映画を観に行く人は

①岡田麿里が監督・脚本をやるので興味がわいた人

②10代後半以上で、叙情的なアニメが好きな人

だ。たぶん①が大半じゃないかと思う。

 

見たあとの感想を言うと、この話は「ニッチな設定を用いて、普遍的なことを語っている」物語だった。

個人的には子育てが終わったあとの世代が一番心にくるものがあるのじゃないかと思うけれど、ある程度年がいっていれば何かしら感じることがあることを取り上げている。

キャラや設定は若干クセがあるけれど、多くの世代に見て欲しいなと思った。

 

平日の昼に観に行って、観客は20名強くらいだった。

平日のお昼に観に行った。

定員100名に欠けるスクリーンに、観客は20名強くらい。

カップルが二組、友達同士とおぼしき若い男性二人組、他はすべて一人客で女性が五名ほど、他10名くらいが男性。

アニメが好きで岡田麿里のネームバリューで観にきた人が多いのかな、という印象だ。直接聞いたわけじゃないから分からないけれど。

 

開始五分で物語に引き込まれる

平和に暮らすイオルフの里の描写から物語は始まる。

序盤からメザーテ軍によって里が壊滅させられるまで、二十分くらいだ。

その短い時間で、イオルフという種族の神秘性、人間とどう違うのか、ヒビオルとは何なのか、マキア、レイリア、クリムそれぞれの個性と関係、お互いに抱いている思い、後の展開のフラグとなるような言葉、全てが過不足なく説明される。

余計なものはひとつも入れられていないので、展開が早い。

見ているほうがこれらを理解したタイミングで、すぐにメザーテ軍がやってきて、あっという間にイオルフの里は滅びる。

そしてマキアは赤ん坊のエリアルを拾い、彼を育てる決心をする。

 

この映画ですごいと思ったところ

この物語で一番すごいと思ったところは、「物語に絶対に必要なものと必要でないもの」の見極めが上手い点だ。

必要なことは全て説明され、物語にいらないものは一切入れられていない。

 

例えばレイリアがメザーテの王宮でどんな扱いを受けていたか、王子とはどんな関係だったかはほとんど描かれていない。妊娠に至る経緯も、すべて省略されている。言葉の端々からひどい扱いを受けてきたのは分かるが、物語ではレイリアが王子に直接接触するシーンは一切ない。

イオルフの里が滅亡してからクリムがどれほど苦しんだか、苦労したかも描かれていないし、イゾルについても、詳細はまったく描かれていない。

エリアルとディダの再会となれそめ、結婚に至るまでの経緯はバッサリ省かれており、いきなりエリアルが父親になっている。

 

この物語はエリアルとマキアの「関係の意味」、「必ず別れる者を愛することに何の意味があるのか」ということを描く物語なので、それに関係のない事柄は極限まで削られている。

それにしてもよくここまで削ったな、と思うくらい思いきった削り方をしている。

それでいながら「ディダの出産」ような絶対に必要だと思われるシーンは、細部まで時間を割いて描く。

必要なことを必要なぶんだけしっかり描いているから、展開が早く、物語がだれることもない。

「描かれていないことは、観ている人に好きに想像してもらっても構わない。そうしてもらってもコアは壊れない」という自信を感じる。

 面白い物語は引き算が上手いけれど、その見本のような作品だ。

 

「人は、他人との関係性の中で生きている」

てっきり大人になったエリアルとマキアの恋愛物になると思っていたけれど、いい意味で期待を裏切られた。

 

マキアはエリアルを拾い育てる決心をしてから、「お母さんって何だろう?」と悩む。自分が「ちゃんと母親をやっているのかどうか」をずっと悩んでいる。

イオルフだから一か所にとどまれなかったり、仕事が見つからない、生活の不安をエリアルにぶつけてしまったり、成長していくエリアルの態度の変化に戸惑ったり、二人の関係は決して綺麗ごとだけではすまない。「シンママ」のマキアに向けられる世間の風辺りの強さや冷たさも描写されている。

エリアルが成長していくに従って、二人の関係はさらに変化していく。

エリアルはマキアを女性として見るようになり、そんなエリアルの気持ちに気づかず一生懸命母親をやろうとしているのに拒絶されてマキアが傷つく。そのマキアを見てエリアルがさらに傷つく。

二人の関係はどんどん複雑になり、お互いを思いやっているのに上手くいかなくなっていく。

 

エリアルは大人になり、自分の意思でマキアから離れていく。

最初はマキアからの逃避だったとしても、その逃避先がエリアルにとって「自分自身で見つけた自分の居場所」になっていく。

そしてマキアに大切に育てられたのが「今の自分だ」と認めて、ディダに対して「あの人が育ててくれた俺が、お前を愛していく」と伝える。

エリアルが「あなたが全てを教えてくれた」「母さん」と呼んだとき、ずっと「母親になるにはどうすればいいのか」ということを悩んでいたマキアは気づく。

 

「あなたがお母さんと呼んでくれたから、私はお母さんになった」

 

「絶対的に正しい母親像」があるのではなく、「血がつながっているかどうか」ということで「ちゃんとした母親かどうか」は決まるのではなく、「他人との関係性の中で、自分が何者かは決まっていく」

 

マキアはエリアルに「行かないで」と言われても、彼から離れることを選んだ。

エリアルは「マキアがいない自分自身の居場所」を作り、そこで生きていく決心をしたからだ。

「必要なときは、相手の手を手放すこと」は、すごく難しい。

難しいけれど、相手を「自分と違う人間」と認めているならば、「相手が自分のいない世界で生きると決めた」意思を尊重して別れなければならないときもある。

エリアルの意思を尊重して手を離して遠くから彼を見守り、最期のときは駆けつけたマキアは、本当の意味でエリアルの母親だった。

 

エリアルを愛し、育て、守ったからではない。

エリアルとの関係性の中で、エリアルが「マキアを母さんと認め、呼んだから」マキアはエリアルの母親なのだ。

 

「自分がどういう人間なのか」「自分はどう生きるのか」

そういうことは他人と関わる中で、ヒビオルが織られていくように日々織られ紡がれていく。

例え相手がいつかはいなくなってしまうとしても、死んでしまうとしても、自分とその人が関わった意味は決して消えることはない。そしてその「他人との関係の中で生まれた意味の集積」こそが、「自分」という存在そのものなんだ。

だから自分に関わった人がいなくなったとしても、その人との関係がもたらしてくれた意味は、「自分」として残り続ける。

 

「さよならの朝に約束の花をかざろう」は、本来は当たり前のことだけれど、日々の生活の中ではつい忘れがちなことを描いている。

「人との関係性を生きることが、自分が自分として存在する」ということなんだよなあ、と改めて思った。

 

キャラクターについて

クリムみたいに「自分が不幸でかわいそうということを言い訳にして、他人を思い通りにしようとするキャラ」ってすごい苦手だ。「ひどい目に遭ったことは同情するけれど、それでもそういうことはやったらいかんよな」と指摘すると、「自分がどれだけひどい目にあったか。どれだけ被害者か」ということを力説して相手を悪者扱いするし。

境遇には同情するけれど、マキアにああいう八つ当たりをするのは理解できない。最後にレイリアと心中しようとするとは…、恐れ入るよ。(褒めていない)

 

ラングがいい男すぎる。マキアにプロポーズを断られたときの反応は、ちょっと笑ったけど。あんなにあっさり断られるとは思わなかったんだろうな。

 

イゾルは、自業自得の部分もあるとはいえ気の毒だ。

レイリアのことが好き、って気づいたときには、レイリアはメドメルを産んでいて、罪悪感もあるから「助ける」なんてこともおこがましくてできない。レイリアに「助け」を受け入れてもらえる自信もない。レイリアの精神的サンドバックのようになるのが唯一受け入れてもらえ、相手とつながれる方法みたいな共依存関係。

こんなことを20年近くも続けたんだろうか…。ある意味、クリム以上にヤバい奴だ。

レイリアには、自分に惚れた男の時を止める何かがあるのかもしれん。

この二人の関係は、もう少し見たかった。

 

 

 関連記事

www.saiusaruzzz.com