うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

小説

「変な家」「変な絵」で有名な雨穴のミステリー「謎解きモキュメンタリー動画」の感想まとめ。

変な家 作者:雨穴 飛鳥新社 Amazon 「変な家」で有名な雨穴のYouTube動画を何本か見たので、感想のまとめ。 ★【奇妙なブログ】消えていくカナの日記(17:54) 見た中では一番面白かった。 内容はシンプルで雨穴の話にしてはオチに捻りないが、むしろそこが…

映画「容疑者Xの献身」を通算五回は観ている人間の、超個人的物語解釈&泣きポイント。

※本記事には映画「容疑者Xの献身」のネタバレがあります。ご注意下さい。 容疑者Xの献身 福山雅治 Amazon 映画「容疑者Xの献身」*1を見るのは、通算五回目くらいだ。 この話の個人的な解釈を以前noteに書いたが、今回観て少し考えが変わった部分もあるので…

学生運動の背景を知ることが出来る本の紹介をしながら、適当に雑談をしたい。

少し前にネットで学生運動の話をよく見かけたので、自分が今まで読んだり聞いたりした話と合わせて雑談したい。 この時代の学生運動周囲の話を見ていくと、そのセクトや大学によってだいぶ雰囲気が違う。(考え方が違うので当たり前だが) 例えば立花隆の「…

【小説感想】「硝子の塔の殺人」が自分に合わなかった理由を細かく考えてみた。

*記事の性質上、内容の核心的なネタバレが含まれます。本編未読の人は、まず本編を読まれることを強くおすすめします。 硝子の塔の殺人 作者:知念 実希人 実業之日本社 Amazon 公平に考えて、面白いと思う人もそうとういると思う。 出来不出来、是非の話で…

【漫画感想】「十角館の殺人」全5巻 原作ファンも驚く衝撃の展開と感動の結末に大満足した。

*本記事には原作及び漫画版「十角館の殺人」の重大なネタバレが含まれます。未読のかたはご注意下さい。 *原作未読の人はもちろん、原作ファンにもぜひ読んで欲しい。全五巻。 十角館の殺人(1) (アフタヌーンコミックス) 作者:綾辻行人 講談社 Amazon …

「綾辻行人になりたかった」という言葉は、わからないからこそ心に残った。

実家の兄ちゃんが貸してくれた知念実希人の「硝子の塔の殺人」を読んでいる。 硝子の塔の殺人 作者:知念 実希人 実業之日本社 Amazon 物語が始まってすぐに、投薬方法の特許を持ち、莫大な資産を築いた登場人物が「私は綾辻行人になりたかったんだ」(P38)…

古本の人の書き込みを見た妄想。「興味を惹かれて手に取ったけれど、難しくて挫折しそうな本」も、人と一緒なら読めるかもしれない。

読売新聞の書評欄に金石範の「火山島」が紹介されていて、面白そうだなと興味を持った。 韓国では今も余り語られない、「済州島四・三事件」を題材にした小説だ。 早速Amazonで調べてみたが、電書も文庫も出ていない。出ているのは中古の単行本とペーパーバ…

「労働組合運動」というと、「沈まぬ太陽」を思い出す。

労働者版のフェミニズムみたいなのってないかな? 完全にマジカルバナナ*1だが、「労働者の組合運動」を描いた「沈まぬ太陽」一巻二巻のことを思い出したので、話したい。 読んだのが大昔なので、かなりうろ覚えな記憶の感想だ。 「沈まぬ太陽」の第一巻第二…

「『自分を受け入れ愛してくれるが、他人に対しては受け入れがたい振る舞いをする相手』をどう考えるか。という恋愛モノの鬼門のテーマばかりを描いていた作家が確かいたような」→あの作家でした。

www.saiusaruzzz.com 「私だけに優しい、私だけを愛してくれる人」という、恋愛モノの相手役の究極の形である「自分を受け入れ愛してくれるが、他人に対しては受け入れがたい振る舞いをする相手」をどう考えるか。 恋愛モノにおいて、これは鬼門のテーマだ。…

「ドストエフスキーって難しいの?」→「難しいけれど、難しさに着目しなくてOK」

ブログ記事をいくつも書いているも通り、ドストエフスキーが好きだ。 他の古典小説は(探せばあるのだろうけれど)余り感想を見かけないのに対して、ドストエフスキーは特に探さなくても言及している人をちらほら見かけるので人気があるのだろうなと思う。 …

【小説感想】「騎士団長殺し」 どうした? 村上春樹。

*ネタバレがあります。未読の人はご注意下さい。 「騎士団長殺し」(上)(下)を読み終わった。 騎士団長殺し(第1部~第2部)合本版(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 下巻の途中から「えっ?」と声が出っぱなしだった。 元々「騎士団長殺し」…

【ドストエフスキー「悪霊」人物語り】自分が自由であることを証明するために死んだ男・キリーロフが好きだった。

ドストエフスキーの「悪霊」の中で、自分が自由であることを証明するために拳銃自殺をする男がいたと記憶しているんだけど (引用元:「騎士団長殺し」村上春樹 新潮社 P249) したな、自分の前でキリーロフの話を! と鼻息荒くキリーロフのことを思い出した…

村上春樹「騎士団長殺し」の雨宮継彦のエピソードを読んで、アニメ「平家物語」の平維盛がなぜ死を選んだかがようやくわかった。

www.saiusaruzzz.com 「アニメ平家物語」の時に書いたが、「向いていない、出来ないとわかっていることを人が無理やりやらされる描写」がかなり苦手だ。 その「やらされる人」が、その場にどうあっても適合できない、しかし文句も言えないような人柄の場合、…

「ハイコンテクストだからこそ意味を考えたくなるコンテンツ」について。

「ハイコンテクストすぎて意味がわからん」と途中で投げ出すものもあれば、「ハイコンテクストだからこそ意味を考えたくなる」ので、何度も通読して寝食も忘れて文章ひとつ、語ひとつの意味まで考えたくなる作品もある。 今回は後者の「ハイコンテクストだか…

「村上春樹の作品はここで好みが分かれる」という超個人的な作品の分類

※この記事には、村上春樹の作品のネタバレを含まれています。未読の人はご注意下さい。 前回書いた「騎士団長殺し」の記事で、 www.saiusaruzzz.com 自分の感じた限りだと、村上春樹の小説はこの「自己の領域を広げる『仮説』の可能性」について書いているこ…

【小説感想】村上春樹「騎士団長殺し」の上巻に出てきた、凄く印象的な会話を読んで考えたこと。

村上春樹の「騎士団長殺し」の第一部「顕れるイデア編」を読み終わった。 騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編(上)―(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 最初のほうは「つまらなくはないけれど」と思っていたが、第一部の途中からじわじわ面白くなっ…

【ドラマ感想】アガサ・クリスティ「青ざめた馬」 怪奇色強めのホラーミステリーの秀作。

NHKで放送されたアガサ・クリスティ原作のドラマ「蒼ざめた馬」の感想。 「蒼ざめた馬」か。随分、渋い選択だな。 ノン・シリーズものだし、クリスティの作品の中では知名度は余りないけれど、怪奇色の雰囲気が楽しめつつ、謎解きもしっかりしている。 何故…

【映画感想】映画「ドライブ・マイ・カー」は原作の謎解きだったが、解釈違いが辛かった。

*タイトル通り、基本的に否定的な内容です。 *ネタバレあり感想です。未視聴のかたはご注意下さい。 ドライブ・マイ・カー インターナショナル版 西島秀俊 Amazon *記事内の青字は、映画・原作からの引用。 映画「ドライブ・マイ・カー」は原作の謎解きを…

【小説感想】「作家は、社会から不当な扱いを受けることを覚悟しなければならない」迫害されたノーベル文学賞作家が描く収容所生活「イワン・デニーソヴィチの一日」

ソ連時代にノーベル文学賞を受賞したソルジェニーツィンの「イワン・デニーソヴィチの一日」を読み終わった。 イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫) 作者:ソルジェニーツィン 新潮社 Amazon 「文化革命時代の中国でこっそり読まれていた」と知って読み出…

世界に対する呪詛と怨嗟に満ちたルサンチマン文学&キャラについての雑談。

「世界に復讐してやる」というルサンチマン文学が好きである。 具体的な被害を伴わない、漠然とした呪詛や憎悪、怨嗟は、現実で言動に表すのは咎められるべきだと思うが、創作では長く書き続けてこられたテーマだ。歴史に残る傑作もいくつもある。 そんなル…

【小説感想】村上春樹「ドライブ・マイ・カー」を読み直して気付いた文章の凄さ。

ゴールデン・グローブ賞を受賞した記念に、「女のいない男たち」に収録されている「ドライブ・マイ・カー」をもう一度読み直した。 女のいない男たち (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon 監督の濱口竜介は、原作に強く惹きつけられて映像化したくなっ…

読売新聞の書評欄「よみうり堂・読書委員が選ぶ2021年の三冊」を読んで読みたくなった本10冊&自分が2021年に読んだ本の中で、おススメの三冊

先日、「書評」が話題になっていたので、「書評を読んで読みたくなった本」を上げてみようかと思いたった。 読売新聞の「書評欄の読書委員が選ぶ『2021年の三冊』」を読んで読みたくなったもの、その中で「特に読みたくなったベスト3」を選んでみた。(青字…

「弱いくらいなら悪であるほうがマシ」という価値観は悪役の華だが、これも「男らしさ」の一種なのかもしれない。

相変わらず「グイン・サーガ」を読んでいる。 43巻でダリウス大公が最期にブチかます「開き直った悪党の下衆な恨み節」を読んで、「そうそう、こいつ、最期の最期で滅茶苦茶面白いキャラになったんだよなあ」と思い出した。 読んだことがない人のために説明…

栗本薫「グイン・サーガ」41巻まで。天才ヨナの登場、アリの大活躍、シルヴィアがさらわれた、など。

「グイン・サーガ」41巻「獅子の星座」までの感想。 前回36巻まで。 www.saiusaruzzz.com 天才ヨナ登場 記憶だとナリスとリンダの二人は、婚約~新婚期間も落ち着いているというイメージだったが、まったくそんなことはなかった。 今回読んだら、マリウスと…

したな、自分の前で。「ガウェインの結婚」の話を!

タイトルは一度言ってみたかっただけの出落ちです。すみません。 最初の授業 はてブのホッテントリで「ガウェインの結婚」の話が上がっていた。 「すべての女性は自分の意志を持つことを望んでいる」ここが、基本ですよ。 まあ、少なくとも、ガールフレンド…

栗本薫「グイン・サーガ」36巻まで。モンゴールの復活するも大丈夫か? アリ、カメロン、イシュトの三角関係など。

前回、30巻まで。 www.saiusaruzzz.com モンゴールが復活するも……大丈夫か? 27巻でアムネリスを奪還したあとから、モンゴールの復活までが思ったより早かった。 ヤヌスの戦い一戦だけで復活したが、意外と国の存亡は一戦だけで決まってしまうものなのかもし…

栗本薫「グイン・サーガ」30巻まで。ユラニア遠征はサウル皇帝と三公女に尽きる。グラチウスとの対決は意外と核心を話していた、など。

前回、27巻まで。 www.saiusaruzzz.com サウル皇帝が大好きだった 思い出した、サウル皇帝が大好きだった。 世間知らずで子供っぽい部分と、人生を悟ったような哲学者のような部分の融合具合が絶妙だった。 グインが恭しく接したら滅茶苦茶嬉しそうにすると…

「ゲーム・オブ・スローンズ(GOT)」をシーズン8まで完走した感想。主にデナーリスについて。

*この記事には、「ゲーム・オブ・スローンズ」の最終章までのネタバレが含まれます。未視聴のかたはご注意ください。 「ゲーム・オブ・スローンズ」の最終章をやっと見れた。 ウィンターフェル Amazon オープニングのギミックに感動 オープニングのギミック…

栗本薫「グイン・サーガ」27巻まで。パロくねくね編、イシュトの国盗り始まり&グインのユラニア遠征の始まり。

前回、23巻まで。ケイロニア編。 www.saiusaruzzz.com 「天華」に夢中になっていて、すっかりご無沙汰していたグイン・サーガ。 いよいよ、イシュトの国盗り&ユラニア遠征か、と思っていたが、その前にパロのナリス対スカールのくねくね編があった、と思い…

「私説三国志 天の華・地の風」全10巻の感想。「物語のアイデンティティが失われる」とはどういうことか。

江森備「私説三国志 天の華・地の風」を読み終わった。 「三国志」の流れをしっかり辿っているのはもちろん、政治や戦だけではなく、この時代の習俗や文化が詳しく描かれている。 諸葛喬が死んだときの葬式の様子など、どの立場の人間がどのような服装をして…