うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

社会問題

【映画感想】芦田愛菜主演「星の子」 社会と教団に共通する構造を、新興宗教信者二世の少女の視点を通して暴く傑作

*映画「星の子」のネタバレがあります。未視聴のかたはご注意下さい。 星の子 芦田愛菜 Amazon 現在、元首相殺害事件に関連して「宗教二世問題」が注目されている。 自分が見たところでは、「星の子」は「宗教二世問題」ではなく、*1それをモチーフにしてま…

学生運動当事者「n=1」のうちのオカンのフェミニズム精神。

小説で「台風だしピザでも頼む?」と攻めが言い出した…倫理観の違いで読めなくなることあるよね「鬼畜攻めかよ」 - Togetter 先日、うちのオカンと話していたら*1 「あさま山荘」籠城―無期懲役囚・吉野雅邦ノート (祥伝社文庫) 作者:大泉 康雄 祥伝社 Amazon…

学生運動の背景を知ることが出来る本の紹介をしながら、適当に雑談をしたい。

少し前にネットで学生運動の話をよく見かけたので、自分が今まで読んだり聞いたりした話と合わせて雑談したい。 この時代の学生運動周囲の話を見ていくと、そのセクトや大学によってだいぶ雰囲気が違う。(考え方が違うので当たり前だが) 例えば立花隆の「…

鈴木エイトが、旧統一教会の問題の要点、政治家とのつながりがどう生まれたのかを語った「9月2日大竹メインディッシュ 」が面白かった。

podcastqr.joqr.co.jp 大竹まことと金曜日担当の青木理が鈴木エイトをゲストに招いて、旧統一教会問題について話を聞いている。 「問題がある団体の政治への影響への批判」と単純に訴えるだけではなく、「なぜ、そういうつながりが出来たのか?」という流れ…

「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」感想 「事実」や「現実」に迫るために必要なのは、「解釈しないこと」に耐えることではないか。

*批判的な内容です。 デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場 (集英社学芸単行本) 作者:河野啓 集英社 Amazon 「事実に迫る」うえで必要な要件。 自分が考える「事実に迫るノンフィクション」に必要なことは、第三者が検証が可能なこと、それが難しいのであ…

「この本を立ち読みしたことで、オウムを脱会できた」というレビューが、滅茶苦茶興味深かった。

Amazonで 狂信―ブランチ・ダビディアンの悲劇 人はなぜ“メシア”を求めるのか 作者:ティム マディガン 徳間書店 Amazon という本を見つけた。 1934年にプロテスタント系の異端セクトとして誕生した宗教団体「ブランチ・ダビディアン」の話だ。 「ブランチ・ダ…

「フェミニズム系批評」から学んだフェミニズムの歴史まとめ

「現代批評理論のすべて」の「フェミニズム系批評」の歴史は、フェミニズムそのものの歴史とも大きく重なっている、またフェミニズム以外の思想から大きな影響を受けたり考え方を援用しているので、流れをまとめてみた。 *自分が理解した限りのことを書いて…

人は惰性で、人を殺し続けることが出来る。

www.saiusaruzzz.com 前回書いたこの記事で、「日本軍の指導者に共通していたもの」について考えたが、書き終えたあとどうもしっくりこない。 そんなときに黄金頭さんの記事のこの箇所を読んで「おおっ」と声が出た。 アイヒマンが定年まで仕事をして、「退…

「ビルマ 絶望の戦場」感想 日本軍の指導者の欠陥は「道徳的勇気の欠如」ではなく、「興味のない現実は無視すること」ではないか。

NHKスペシャル「ビルマ 絶望の戦場」を見た。 有名なインパール作戦が失敗に終わった後、ビルマで一年間続いた撤退戦の詳細を追っている。 太平洋戦争は「絶望の戦場」ばかりだが、ビルマ撤退戦も悲惨なものだった。 当時の日本軍指導者に欠けていたのは、「…

「スピノザ 人間の自由の哲学」 スピノザの人生、思想、哲学とは何なのかを分かりやすく教えてくれる。「入門書」の銘に偽りなし。

スピノザ 人間の自由の哲学 (講談社現代新書) 作者:吉田量彦 講談社 Amazon ちゃんと「入門」書だった。 スピノザについて、前から知りたいと思っていたので読んでみた。 哲学の入門書は「入門」と銘を打っていても、とても「入門」レベルではないことも多い…

今までに読んだ、見た、カルトについて描かれたコンテンツまとめ。

カルト(というより、人を取り込む思想全般)について、自分が理解を深められたコンテンツを紹介したい。 オウム真理教関連 オウムと私 (文春文庫) 作者:林 郁夫 文藝春秋 Amazon 地下鉄サリン事件の実行犯の中で、唯一無期懲役となった林郁夫が書いた本。 …

【映画感想】「アメリカが最も恐れた男・プーチン」 プーチンの経歴とロシアの時事を追うには便利だが、視点の偏りが難点。

アメリカが最も恐れた男 "プーチン" Evgeniya Albats Amazon ウクライナ侵攻よりも前の2018年の作品。 時間が1時間25分と短めなので、手軽に見れる。 いいところとしては、プーチンの経歴とロシアの時事との関係が非常にわかりやすい。 KGBに入隊して、旧東…

「労働組合運動」というと、「沈まぬ太陽」を思い出す。

労働者版のフェミニズムみたいなのってないかな? 完全にマジカルバナナ*1だが、「労働者の組合運動」を描いた「沈まぬ太陽」一巻二巻のことを思い出したので、話したい。 読んだのが大昔なので、かなりうろ覚えな記憶の感想だ。 「沈まぬ太陽」の第一巻第二…

【書評】立花隆「中核VS革マル」上下巻  思想集団の対立は、どのようにしてエスカレーションし続けるのか。

立花隆の「中核VS革マル」上下巻を読み終わった。 中核VS革マル(上) (講談社文庫) 作者:立花隆 講談社 Amazon 有名な連合赤軍事件を始め、学生運動の話を見ていると多数の党派と思想が飛び交う。 「ブントって何?」「革共同って何?」ということが整理…

日経ビジネスの「ウクライナ危機に関するエマニュエル・トッドのインタビュー」が一読では理解しづらかったので、詳しく考えてみた。

business.nikkei.com business.nikkei.com 日経ビジネスに掲載されたエマニュエル・トッドの、ウクライナ危機に関するインタビュー記事前後編を読んだ。 ザっと読んだだけだと言いたいことがわかりづらかったので、前後編を通してもう一度詳しく読んでみた。…

【ドストエフスキー「悪霊」人物語り】自分が自由であることを証明するために死んだ男・キリーロフが好きだった。

ドストエフスキーの「悪霊」の中で、自分が自由であることを証明するために拳銃自殺をする男がいたと記憶しているんだけど (引用元:「騎士団長殺し」村上春樹 新潮社 P249) したな、自分の前でキリーロフの話を! と鼻息荒くキリーロフのことを思い出した…

村上春樹「騎士団長殺し」の雨宮継彦のエピソードを読んで、アニメ「平家物語」の平維盛がなぜ死を選んだかがようやくわかった。

www.saiusaruzzz.com 「アニメ平家物語」の時に書いたが、「向いていない、出来ないとわかっていることを人が無理やりやらされる描写」がかなり苦手だ。 その「やらされる人」が、その場にどうあっても適合できない、しかし文句も言えないような人柄の場合、…

「アフリカの白い呪術師」 自分が生きている現代社会とはまったく違う認識・思考パターンがあることを教えてくれる。

読んでいる間は凄く面白い、というわけでもないのに、時間があるとふと読んでしまう。そんな本のひとつだ。 通して読むのは四回めくらい。読めば読むほど面白い。 アフリカの白い呪術師 (河出文庫) 作者:ライアル ワトソン 河出書房新社 Amazon てんかんとい…

木村汎「プーチンとロシア人」を読んでわかったことは、「自分がいかに日本人か」ということだった。

*二章までの感想。 www.saiusaruzzz.com 木村汎の「プーチンとロシア人」を読み終えた。 「国民性」という曖昧なものについて述べるに際して、著者は「おわりに」でこのような注意書きを寄せている。 また「国民的性格」という概念はきわめてとらえどころな…

木村汎「プーチンとロシア人」の読み始めの感想。「政治学は究極において人間学である」

プーチンとロシア人 作者:木村汎 産経新聞出版 Amazon 4月2日の読売新聞で、同じ著者の「プーチン人間的考察」が紹介されていたのをきっかけに読んでみようと思った。 著者である木村汎は2019年に亡くなっている。この本が書かれたのは2017年だ。 「はじめ…

「哲学の名著の50冊が1冊でざっと学べる本」は、哲学・思想の流れを知るのにとても便利だった。

哲学の名著50冊が1冊でざっと学べる 作者:岡本 裕一朗 KADOKAWA Amazon 思想や哲学は、それ以前の世代の考えや議論を前提として、それに対する主張や批判を行っていることが多いので、全体の流れを理解しないと個々の思想も理解することは難しいと感じる。 …

「陰謀論」と「世界観なきエリート」の相性の良さ&どう見分けていくか。

www.saiusaruzzz.com www.saiusaruzzz.com 「陰謀論」について考えたことの続き。 「陰謀論」について考えているうちに、「世界観なきエリート」と陰謀論は相性がいい(?)なとふと思いついた。 「世界観なきエリート・辻政信」のような人間と、その人が招…

「陰謀論」について考えたこと続き。「知りたい情報をすぐに調べられる」という言葉の矛盾。

www.saiusaruzzz.com 前回の記事に関連しての補足。 「ネットは、知りたい情報をすぐに調べられて便利」だ。 日常でも何気なく使う表現だが、「陰謀論」について考えるときは、少し警戒したほうがいいかものかもしれない。 「『知りたい』情報」という言葉を…

「陰謀論」とは、その人の内部でのみ働く固有のストーリーにハマってしまっている状態だと思うので、ハマらないために気をつけたいこと。

・2022年3月16日(水)読売新聞の朝刊の「虚実のはざま」(東京工業大学准教授・西田亮介氏)の記事と下記の記事を読んで、「陰謀論」について考えた。 smart-flash.jp 「陰謀論とは何なのか」「なぜ、それに囚われる人がいるのか」ということに、以前から…

ザ・ノンフィクション「マタギ修行の若者たち」感想 「生きる実感」は今の時代は贅沢品なのかもしれない。

2022年3月13日(日)に放送された「ザ・ノンフィクション 都会を離れ山で生きる。マタギ修行の若者たち」を見た感想。 秋田の阿仁でマタギとして生きてきた74歳の鈴木英雄さんのところへ弟子入りした、二十代の若者たちの話だ。 阿仁という不便な土地でマタ…

【小説感想】「作家は、社会から不当な扱いを受けることを覚悟しなければならない」迫害されたノーベル文学賞作家が描く収容所生活「イワン・デニーソヴィチの一日」

ソ連時代にノーベル文学賞を受賞したソルジェニーツィンの「イワン・デニーソヴィチの一日」を読み終わった。 イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫) 作者:ソルジェニーツィン 新潮社 Amazon 「文化革命時代の中国でこっそり読まれていた」と知って読み出…

「信じ込んだ神の手(旧石器捏造事件)」の記事を読んで考えたこと。

あったなあ、こんなこと。 2022年2月13日の読売新聞朝刊「あれからVol20 信じ込んだ神の手」を読んでそう思った。 2000年11月に起こった「旧石器捏造事件」。 当時さほど興味があったわけでもなく、「功名心にかられた民間の研究者が旧石器時代の遺物を捏造…

【書評】「中国共産党、その百年」 中国の考え方、成り立ち、仕組みが「党」の視点からよくわかる本。

www.saiusaruzzz.com 「文化大革命 人民の歴史 1926‐1976」は膨大な資料から事実を浮かび上がらせている。 その浮かび上がった「文化大革命」という歴史的な事象を見て解釈する視点は、中国とは違う国のものであり、外側の目で見た中国の歴史だ。 外側の目か…

【漫画感想】「AKB49~恋愛禁止条例~」関係性によって性差を超える反ハーレムもの。ぜひ先入観なしで読んで欲しい。

マガジン連載当初から好きだった「AKB49~恋愛禁止条例~」全29巻を読んだ。 AKB49~恋愛禁止条例~(1) (週刊少年マガジンコミックス) 作者:元麻布ファクトリー,宮島礼吏,高橋ヒサシ 講談社 Amazon 「好きな女の子を見守るために、女装してAKBのオー…

「文化大革命 人民の歴史 1926‐1976」は、これ一冊で、この時代の権力闘争から庶民の生活や心情までひと通り把握できる。

「文化大革命 人民の歴史 1926-1976」を読み終わった。 文化大革命 上巻 作者:フランク・ディケーター 人文書院 Amazon 文化大革命 下巻: 人民の歴史 1962-1976 作者:フランク・ディケーター 人文書院 Amazon この本の特徴は、参考文献の膨大さだ。 引用箇…