うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

【漫画感想】残酷歌劇「ライチ☆光クラブ」 暗い世界に閉じ込められた少年たちが辿る残酷な運命。

ライチ☆光クラブ 作者:古屋 兎丸 太田出版 Amazon ぼくらの☆ひかりクラブ 全2巻セット Amazon 既に映画化されていることも知らず表紙買い。 江戸川乱歩に代表される、退廃的で耽美で残酷描写があるインモラルな世界観だ。「グランギニョール」というジャンル…

「実際の物事や人物を元にしたフィクション」は、自分の中で「名作・傑作」であるほうが問題が根深い。

「フィクション」と銘を打っている場合は、まずはフィクションとして読む。 問題があれば指摘すると思うが、自分は自分にとってつまらない作品はすぐに忘れるので「フィクションと、モデルとおぼしき実際の物事や人物との関係性の問題をどう考えるのか」とい…

【小説感想】実際の事件を基にして発刊中止になった「パルチザン伝説」 これを「個人的な物語」と読めないところに分かり合えなさを感じる。

文藝賞の最終候補になり単行本化が決まっていたが、抗議によって急遽発売中止になったいわくつきの作品。 パルチザン伝説 作者:桐山 襲 河出書房新社 Amazon 東アジア反日武装戦線が起こした事件をモデルにしているため、抗議を受けて発売が困難になったらし…

「忌録 document X」の考察をしてみた。

忌録: document X 作者:阿澄思惟 A.SMITHEE Amazon そういえばkindleで購入したなあと思い出し読んでみた。 考察をやってみたが、うまくつながらない部分が多い。細部を詰めるには材料が少なすぎるので、これは細部を詰めると迷路に迷い込むパターンかなと思…

「漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972-2022」感想。左派はなぜ衰退したか。

www.saiusaruzzz.com www.saiusaruzzz.com 戦後の左翼の歴史を追う池上彰と佐藤優対談本の三冊目。 1970年前後を境に学生運動を中心とした新左翼の活動は衰退していき、左翼の活動は労働運動に主戦場を移していく。 三冊目では、左派(の理念)がなぜここま…

【ゲーム感想】「鳥類弁護士の事件簿」逆擬人化×歴史モノ×逆転裁判。重厚なストーリーが面白かった。

鳥類弁護士の事件簿 -Switch レオフル Amazon 「なぜに鳥」と思ったが面白かった。 ルイ=フィリップ治世下で起こったフランス二月革命が背景のストーリーで、その時代の雰囲気や歴史の経緯が十分に楽しめる。 ルイ=フィリップはペンギンでアホの子らしさが…

「ひとり出版社」ってどうなの? 調べてみて感じたこと、考えたことまとめ。

情報が多様化している今は、本に限らず「大勢のターゲットに向かって作る」よりも「必要としている人を絞って、その層に最適化したものを作る(発信する)」方向にさらに進んでいくのでは、と思う。 本を作成・販売するまでの過程を考えるとツールを使えば一…

ブログという世界の面白さは、ひとつの記事を読んだだけではわからない。

note.com 以前、noteで「大勢の人をターゲットにするのではなく、自分と趣味が同じ人が空いた時間に覗きに来てくれるギャラリーを作る」という考え方はいいなと書いた。 SNSが大規模なショッピングモールへの出店なら個人サイトは自宅を改装したカフェのよう…

「自分が所属するコミュニティの価値観に沿う過激さを競い、その忠誠心と引き換えに承認を得る」新左翼が過激化した原因は、現代にも通じるものがある。

前巻の感想。 www.saiusaruzzz.com 激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972 (講談社現代新書) 作者:池上彰,佐藤優 講談社 Amazon 戦前からの左翼の歴史を振り返った「1945-1960」に続いて、「激動 日本の左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」…

文庫本の一ページの文字数は何文字が読みやすいか? 比べてみた。

文庫本を作ってみたいと思ったので、一ページの文字数は何文字くらいが読みやすいか、家にある文庫を元に考えてみた。 出版社によっても違うし、出版年数によっても違うし、シリーズによっても違うので「タイトル・出版年数」を参考に記載しておいた。 各出…

「真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960」感想 わかりにくい左派の歴史がスルスルとわかる。

池上彰と佐藤優の対談形式の本「真説 日本左翼史 戦後左派の源流」の一冊目、1945-1960の歴史を読んだ。 真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960 (講談社現代新書) 作者:池上彰,佐藤優 講談社 Amazon 共産党の除名問題の時に「新左翼が起こした…

はてなポイントが余っていたので13000ポイントでスターを購入してみた&はてブの改善案についての雑感。

五秒で話し終わるいきさつ。 はてなブログプロの更新のために購入したポイント(14400ポイント)を忘れたまま、他の方法で支払った。→はてなポイントは廃止になります。→ガーン。 しょうがないからはてなスターを買うか。 13000ポイント分購入。 結果。 一生…

【漫画感想】「水溜まりに浮かぶ島」全5巻が、打ち切り臭い終わり方でも面白いと思った理由。

*ネタバレが含まれます。未読のかたはご注意下さい。 水溜まりに浮かぶ島(1) (イブニングコミックス) 作者:三部けい 講談社 Amazon 巷で言われているように打ち切り臭い、もしくは飽きて終わらせたのかと疑うような終わり方だったが面白かった。 湊と黒…

【映画感想】「MERU/メルー」 人がなぜ山に登るかはわからないがこの映画は凄い。

MERU/メルー (字幕版) コンラッド・アンカー Amazon 正確には映画ではなくドキュメンタリー。 ヒマラヤ山脈の中で前人未踏だった、「MERU/メルー」に三人の登山家が到達するまでの話だ。 有名なエベレストはネパール側からシェルパなどの協力を得て登るが…

好みの疑似百合について語りたい。

「男の娘な彼氏」が掲載されているということで「学園の王子とゲーム実況者」を購入。 学園の王子とゲーム実況者 1 (角川コミックス・エース) 作者:バラ子 KADOKAWA Amazon *表紙は本編。疑似百合はスピンオフの短編が載っている。 個人的には「疑似百合」…

【小説感想】高山真「エゴイスト」 恋愛小説かと思いきや……。読後にタイトルの意味を考えて深く頷いた。

鈴木亮平主演で映画化された「エゴイスト」の原作を読んだ。(映画は未視聴) 鈴木亮平の寄稿文によると、作者にRと呼ばれる恋人がいたこととその母親と交流があったことは事実らしいが、「小説」と銘を打っているので「小説として」読んだ感想を書きたい。 …

そう言えば、冷戦下の白色テロを描いたコンテンツは「返校」くらいしか知らない。

先日買った「世界」3月号に、「冷戦期の大量殺害をグローバルに考察する」というタイトルで「ジャカルタ・メソッドー反共産主義十字軍と世界を作りかえた虐殺作戦」を紹介している記事があった。 共産主義思想への弾圧は戦前の話は比較的伝わってきている。…

伊藤昌亮「ひろゆき論ーなぜ支持されるのか、なぜ支持されるべきではないのかー」を読んだ感想。

世界 2023年3月号 岩波書店 Amazon 伊藤昌亮「ひろゆき論」を読んだ。 この記事で一番良かったところは、自分自身の感覚や感情はおいておいて、「ひろゆきの言動への支持が広がるのは何故か」という理由を解き明かすことを重視しているところだ。 記事を読も…

「他人から見た評価はわからないが、何故か心惹かれる創作」が、たまにある。

*本記事には「サマータイムレンダ」及び「君が獣になる前に」のネタバレが含まれます。 客観が主観を凌駕するとは限らんぜ。事実が妄想を吹き消すとは限らんぜ。 (引用元:「騎士団長殺し 第一部 顕れるイデア編(上)」村上春樹 新潮社 P256/太字は引用者…

【漫画感想】さの隆「君が獣になる前に」6巻まで。この話の面白さは、「物語が語ることができないもの」にある。

*ネタバレが含まれます。未読のかたはご注意下さい。 君が獣になる前に(1) (ヤングマガジンコミックス) 作者:さの隆 講談社 Amazon 読めば読むほど連載でサスペンスは難しいと思う。 一冊の本ならラスト手前まで伏線を張りつつ緩急をつけて最後にどんで…

【「エネアド(ENNEAD)」シーズン1考察】設定&疑問点からの考察まとめ。

「エネアド(ENNEAD)」のシーズン1を読み返して設定と疑問点のまとめ、そこから考察をしてみた。(*シーズン1のネタバレあり。注意) エジプト神話の死生観を頭に入れると、話が理解しやすい。 シュト(影)と鏡、セクメトとハトホルの関係。 太陽神ラー…

【小説感想】「クイズ」という異世界を描く、小川哲「君のクイズ」の三つの読みかた。

インタビューの答えがそのまま書いてあった。 www.saiusaruzzz.com 小川哲のインタビューを読んで、「君のクイズ」に興味を持ち読んでみた。 自分は創作を読む時には作者という概念が頭から消えるタイプなのだが、これは読み終わったとあとに「インタビュー…

「読者がどんな本を買うかは、僕が決めることではない」直木賞を受賞した小川哲のインタビューが凄く良かった。

"> ">2022年1月24日(火)に読売新聞掲載されていた小川哲のインタビュー「直木賞に決まって」がとても良かったので、特に印象に残ったところを抜粋して紹介したい。 高校生のころから、ずっと心に決めているルールがある。 「自分の力ではどうしようもない…

【映画感想】「THE FIRST SLAM DUNK」は、原作と何が違うのかを熱く語りたい。

*本記事には映画「THE FIRST SLAM DUNK」、漫画「SLAM DUNK」のネタバレが含まれます。ご注意ください。 【映画パンフレット】 THE FIRST SLAM DUNK 監督:井上雄彦 声の出演:仲村宗悟、笠間淳、神尾晋一郎、木村昴、三宅健太 スラムダン…

先日読んだ三角関係の恋愛漫画がすごく引っかかったので、何がそんなに引っかかるのか考えてみた。

とある短編恋愛漫画の三角関係に引っかかるものを感じたので、何がそんなに引っかかるのか考えてみた。 諸事情*1あってタイトルは出さないが、読んだことがある人は設定ですぐに気付くと思う。 そこまで複雑な状況ではないので説明する。 状況説明 クロ、モ…

【ゲーム感想&考察】「夜廻」 ゲームとしては難ありだが、「夜の町を一人で探検する怖さ」が秀逸すぎる。

*ネタバレあり。未プレイのかたはご注意ください。 夜廻と深夜廻 for Nintendo Switch - Switch 日本一ソフトウェア Amazon 感想:「夜」を怖さを「これでもか」と楽しめる。 「夜廻」の二周めをクリアした。 一周めは途中で嫌になるくらい死にまくったが、…

エジプト神話の構造や要点がとってものみ込みやすい。「ゼロからわかるエジプト神話」

「エネアド」にハマった勢いで、「エジプト神話について読んでみよう」と思い購入。 ゼロからわかるエジプト神話 (文庫ぎんが堂) 作者:かみゆ歴史編集部 イースト・プレス Amazon 作内で当たり前のように語られている「死者の魂を集めなければ呪いになる」な…

【漫画感想】モクモクれん「光が死んだ夏」2巻まで。ホラーではなく恋愛ものだった。

「このマンががすごい! 2023」オトコ編で一位になった「光が死んだ夏」を二巻まで読んだので、その感想。(ネタバレ注意) 光が死んだ夏 1 (角川コミックス・エース) 作者:モクモク れん KADOKAWA Amazon 二巻まで読んだ感想は、「ホラーではなく恋愛モノだ…

【映画感想】「罪の声」 前半はスピーディな謎解き展開が面白い。後半は犯人たちの行動に「?」となる。

*ネタバレあり。未視聴のかたは注意。 罪の声 小栗旬 Amazon 未解決のまま時効を迎えた「グリコ・森永事件」をモデルにした話。 前半は、一本の糸を引っ張ると芋づる式に謎が次々と明らかになっていくスピーディーな展開が面白い。 冷静に考えれば、いくら…

「殺人を犯さなければ人間になれなかった」という矛盾をどう考えるのか。永山則夫「無知の涙」

無知の涙 (河出文庫) 作者:永山則夫 河出書房新社 Amazon 「無知の涙」を初めて読んだのは、永山則夫がこの本を書いたのと同じくらいの年齢の時だった。 その時は「何の罪もない人を四人も殺しているのだから、どんな言葉も言い訳でしかない」という気持ちし…