「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」の有名な三角関係について考えてみました。
この漫画が大好きでした。
最後のバーンとの戦闘は、ポップの覚醒やら、(「オレの一番の友達」で号泣)ゴメちゃんとのエピソードやら(「僕の友達になってよ」で号泣)で涙腺が崩壊しっぱなしでした。
アバンの蘇りとバランの親バカには、最後まで納得がいかなかったものの、子供だった自分の一、二を争うお気に入りの漫画でした。
終わり方もジャンプの人気漫画にしては、珍しくすっきり終わりましたし、今でも大好きです。
当時、子供だったわたしは、ポップの告白後に、マァムが返事として伝える「私にチャンスをちょうだい。」から始まる言葉にただただポカーンとしました。
えっ? あなた、ヒュンケルが好きだったんじゃないの?
考えてみれば、この3人の関係を三角関係というのは、疑問がわいてきます。
作中ではっきりと好意の矢印が分かるのは、「ポップ⇒マァム」だけだからです。
本来であれば別に三角関係など成り立ってない関係なのですが、作中で再三再四この三人は三角関係であるように書かれているし、読者も、そのように認識している人が多いように思います。
何故なのでしょう?
自分も子供のころ読んだときは、マァムはヒュンケルのことが好きなんだと思っていました。なので、ポップの告白後の、マァムの返事の意味がよく分かりませんでした。
この関係性の真実を知るために、いくつかヒントがありましたので、それを手掛かりに検証していきたいと思います。
エイミがみんなの前でヒュンケルへの想いを告白したあと、ダイがこう言います。
「第一、マァムが本当は誰が好きかなんて言い出したら、ポップも黙っちゃいないだろうし」
このセリフは3人の関係が外からどう見えるかを考えるとき、非常に重要です。
何故ならこのセリフは、ダイも「マァムはヒュンケルが好き」と考えていることが分かるからです。「恋愛は苦手」と認めているダイですら、です。
そのダイの言葉に対するレオナの反応も、レオナもマァムがヒュンケルに何らかの気持ちがあると考えているようなものでした。
エイミはもっとはっきりしていて、マァムに
「マァム、いいでしょう? わたしが渡しても?」
と聞いてきます。(このときのエイミは、子供心に、めっちゃ怖かった。(´Д`))
ポップは8巻の時点で既に、「あいつ(マァム)にはもう好きな奴がいるんだよ」と言っています。(好きな奴に、クロコダインを想定しているという可能性もありますが)
つまりマァムの周囲にいる人間のほとんどが、「マァムはヒュンケルが好き」と思っているわけです。
にも関わらず、マァム本人は
「ヒュンケルを男性として見ているのか分からない」
と、よくわからないことを言い出します。
何故、このような認識の差異が表れるのでしょう?
周りの人たちの観察が正しくて、マァム本人だけが「自分の気持ちに気づかない鈍感」ということなのでしょうか? 普通であれば、そう考えるのが妥当です。
でも、逆だったら?
周囲の方こそ、マァムの行動を見て「マァムはヒュンケルのことが好き」と勘違いしているにすぎないとしたらどうでしょう。
そう考えると、マァムのその後の行動の意味や、ヒュンケルが、なぜマァムをポップの下に行かせたのかが分かってきます。
マァムの気持ちが誤解された原因は、マァムのヒュンケルに対する態度があげられます。
7巻のヒュンケル対ハドラー戦でも、後に残したヒュンケルのことを過度に心配する描写が見られたり、8巻の祝勝会のあと、クロコダインと鬼岩城を探しに旅立つヒュンケルと意味深に見つめ合ったり(クロコダインも呼び止めてあげてよ~)16巻でミストバーンに落とされたヒュンケルを身を挺して受け止めたりとヒュンケルのことを気にかける描写満載です。
ただこれをよくよくみると、恋愛感情というより別の何かに見えてきませんか?
そう、母親の愛、母性です。
マァムは、これほどヒュンケルを心配しているのにも関わらず、相手に対しては何も求めません。常に一方的な愛情を与え続けるだけです。恋人というよりは、息子に対する母親のようです。
マァムがヒュンケルに注いでいるのは母親としての愛情であるがために、「ヒュンケルに恋愛感情を抱いているのではないか」と問われたときに
「男として見ているのか分からない」(⇒そんなこと思いつきもしなかった)
という返答をしたのです。
作者のコメントで、「マァムはパーティーのお母さんである」という名前の由来に関する言及がありました。
正にその通りで、マァムはポップに対しても「弟みたいで放っておけない」と言っています。
ヒュンケルは、外見は冷静に見えても、「繊細でガラスのような心の持ち主」なので、マァムの庇護欲を一番かきたてるのでしょう。
ヒュンケルはマァムにとって、不器用なゆえに世渡り下手そうで心配な、愛息子なのではないでしょうか。
そして、マァムの自分に対する感情がそういったものであることを、ヒュンケル自身が一番よく分かっているので、「自分自身のための愛を見つけてくれ」と言ってポップの下へ向かわせるのです。
続き。ヒュンケル編。