フレッド・ボーゲルスタイン著「アップルVSグーグル どちらが世界を支配するのか」を読んだ感想です。
題名から想像していた内容と、まったく違いました。
いい意味で期待を裏切られました。
Googleとアップル、その二社が歩んできた歴史や、働いていた人たちの考え方、会社としての理念が書かれていて、まるで
個人のアルバムを見ているかのような気持ちになります。
序章の最後で筆者が述べているように、
「しかし、闘い続けるために両陣営がしてきたことを思えば、どちらにも尊敬の念が湧き、一方だけを応援する気にはならないはずだ」
最後まで読んだときに、そういう気持ちになります。
Googleとアップルで働いてきた人たちの息遣いや足音まで聞こえてきそうな本です。
ソフトウェアのシステムというのは永遠に完成されないもの、公開したあとも一般の人たちの手によって進化し続けるものだ、
という考え方で、主に検索連動型の広告で収益を維持していたGoogleと、
自社が開発する製品は、
ソフトウェアからハードウェアのデザインまで細かく管理されているべきだ、と考えて自社ブランドで収益をあげていたアップルは、
本来であれば目指す方向性も考え方も、分野もまったく違うのでライバルになりようがなかったはずです。
それがなぜ、iPhoneとアンドロイドでスマートフォン市場を争うようになったのかも、
事細かに書かれています。
この本を読んでいても、ジョブズという人がいかにすごい人だったかということをつくづく思い知らされます。
仮想キーボードやマルチタッチの発想は、iPhoneが発売されるものからあったのかもしれません。
でも、それがどういったデザインのどんな製品ならば、これほど大勢の人が使うようになるのかということは、ジョブズ以外は誰も思いつかなかったのだと思います。
ジョブズやGoogleの創始者であるペイジやブリンが、本当は何を考えているか、何を目指しているかはもちろん分かりません。
お金も大事だし、会社も大事だけれど、主はこの人たちが一番に考えていたことは、
「自分の発想が、世界に広まるさまを見てみたい。それがどんな世界なのかを、見たい」
「それが素晴らしい世界だと信じている」
というところではないかな、と思います。
ジョブズもお金のことを一番に考えるような人なら、末期がんを患った身体で製品デモの舞台に立ったりはしないと思います。
この本を読んでいても、自伝を読んでも、アップルを追い出されたり、プライベートでは色々とあったり、うまくいかないと激高したり、こだわっていることには相当しつこかったり、決して付き合いやすい人ではなかったようです。
でも周りに何と言われようが、
「コンピュータは、デザインも美しくあるべきだ」
「iPhoneがあっても、iPadは開発するべきだ」
という自分の構想を信じて実行したところが、すごいと思います。
その構想や感覚が当たるから、「天才」と呼ばれたのでしょうが、仮にそれがまったく的外れで、世間的には評価されない人でも、ここまで他人とは違う、自分の感覚を信じ切れるところはすごいなと思います。
ジョブズという人の話を読んで、一番すごいなと思ったのはここです。
自分を信じぬくことができること。自分の周りに実際いたら、大変だとは思いますが。
業界用語が出てくるので、若干混乱しやすい部分がありますが、誰が読んでも楽しめる内容です。
読んだあとは、Googleもアップルも今より少しだけ身近に感じられます。