うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

「イチローが嫌いだ」というCMが嫌いだ。

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オリンピックの期間、よく目にした「イチローが嫌いだ。あの人を見ると……」というCM、最初見たときから好きではありませんでした。

あまりCMに不快感を持つことはないのですが……。

 

一体、何がそんな気に食わないのか、考えてみると理由が三つ思い浮かびました。

 

そもそも、このCMの論法、心の流れはこうなっているわけです。

 

イチローみたいに限界がないように努力できることが素晴らしいこと(正しいこと)」⇒「それができない自分はダメだ」⇒ 「だから、イチローが嫌いだ」

 

①「限界まで頑張らなければいけない」「それが正しいこと」という話の前提が、そもそも鼻につく。

全員共通の大前提のように、ここを土台にして話が展開されているわけですが、「それは別に全員に共通した、真理でもなんでもない」と思うわけです。

イチローはすごい人だと思いますが、別に誰もがイチローにならなくてもいいと思います。イチローを目指さなければ、駄目な人間、というわけではない。

人はそれぞれだと思うので、自分なりに頑張れないいいし、努力すればいい。誰かを引き合いに出す必要はまったくないと思います。

限界まで頑張らなくても、そこそこほどほどの力で生きている人も、別にイチローよりも劣っているわけではありません。それは人それぞれの生き方ですから。

 

イチローを目指して、イチローほど頑張れない自分がダメな人間だと思うのは本人の自由ですが、それを「見ている人間全員が当然持っている認識」のように話されても困る……というか、自分個人に限っていえばかなり不愉快です。

 

②「イチローが嫌いだ」⇒「それは実はすごいと思っているから」というあざとさが好きではない。

感覚の問題だとは思うのですが、「結局、そういうことなら、最初からすごいと思っているって言えばいいのに」と思ってしまいます。

日常生活でこういう風に話す人がいたら、そうとう面倒くさいな人だなと思います。

会話の目的が「聞き手に正確に物事を伝えること」ではなく、「話し手である自分を印象づけること」だけではないかと思ってしまいます。それが目的であれば、聞き手としては、うんざりしてしまいます。

CMですから「話し手である自分を印象づけること」が目的であることは分かっていますが、ここまで聞き手(買い手)の心情を無視していることがあからさまでうんざりさせられると、広告効果としてもどうなんだ?と思います。

ちなみに今これを書いているとき、このCMが何のCMかまったく思い出せません。

 

③出演者全員に失礼だと思う。

出演している人たちが、本当にそう思っているなら構わないのですが、CMとして広告会社が作っているのだろうから、出演者にもイチローにも失礼だなと思います。

ましてや、出演者もオリンピックやパラリンピックの選手たちですから、相当な努力を払っているわけです。

個人的な意見ですが、この広告を考えた人って、無神経で配慮に欠けた人なんじゃないだろうかと思います。

出演者の気持ちもイチローの気持ちも聞き手の気持ちも余り考えず、「このCMならインパクトがある」と考えて企画したんだろうなあと思います。

 

NHKの番組「プロフェッショナル」でイチローが、「自分は野球が好きだったら、プロ野球選手を目指せとはとても言えない。子供たちに好きだったら頑張れ、とは言えない」という主旨の発言をしていたのですが、これを聞いたとき、イチローがしてきた努力というのはできるとかできないとか以前に、常人が想像すらできないものなんだと思いました。

その言葉に強烈な印象を受けたから、このCMが癇にさわるのかもしれません。

こういう人(イチローや出演者)が払ってきた努力というのは、「イチローが嫌いだ。あの人を見ていると~」という風に赤の他人が簡単に言語化していいものではない、ましてやその中身を深くのぞきこもうとしないで、利益のためにあざとく取り扱っていいものではないと思うんですよね。

もちろん、イチローや出演者がOKを出したから、こうやって放送されているんでしょうけれど、自分だったら「他の人(イチロー)を引き合いに出して、出演者に自分の限界や努力を語らせる」こんな失礼なCMを作る気はしません。

 

ところで、このCMは何のCMなんでしょう??

 

いま、ググったらトヨタのCMみたいですね。

 

「世界のすべての人の心を動かすような企業に」という思いをこめたCM。

 

……。

……。

……。

 

確かに別の意味で、心は動かされましたが……。 

でも結局、何のCMか調べたから、広告効果はかなりあるのかしれません。

 3000本安打おめでとうございます。