SKE48松井珠理奈主演「死幣」最終回です。
前回のあらすじ&ネタバレ感想はコチラ↓
最終回あらすじ
若本は小寺に殺害されるところを、間一髪で伊織に助けられる。伊織は刑務所内で盗聴器を発見したことから、高山を疑っていた。
若本が由夏に連絡をとると、由夏はすでに死幣を使い、小夢に新薬の投与を依頼していた。
若本は由夏の下に駆けつけ、死幣の呪いにおびえる由夏を励ます。
死幣の呪いが発動し、由夏に死の危機が迫る。若本が由夏をかばい、命を落とす。
死幣の呪いから逃れる唯一の方法は、誰かが死幣を代わりに使い、身代わりになることだった。
若本は由夏が銀行に預けた死幣を一回ひきとり、自分が小夢に新薬を投与するために使用したのだ。
三年後、小夢は元気になり、由夏は若本の面影を胸に警察官になっていた。
最終回ネタバレ感想
予想から一ミリもはみ出ない展開だったのですが、予想の範囲内で考えられる伏線や謎はすべて綺麗に、塵ひとつ残さず回収していきました。
伊織がなぜ、小寺を疑ってその居場所をつきとめられたかというのも、きちんとラジオという伏線を張ってあり回収していく心地よさ。
柚希さん、発声も美しいし、佇まいも美しいですね。
宝塚出身の他の人でも、ここまで「姿勢からして違うな」ということを感じたことがないのですが。出てくるだけで、目の保養になります。
由夏に対するピタゴラスイッチは、第一話の三浦先輩のときのようななつかしさを感じました。笑いをとりにいっているのか、と突っ込みたくなりました。これはいい原点回帰。
死幣の呪いから逃れるには、誰かが身代わりに死ぬしかない。
若本が死んで、小夢と由夏が生き残る。
由夏が警察官になる。
最後は、新たな死幣の呪いが生まれることを予感させて、締め。
何なんでしょうね、この「お約束」を一歩も踏み外さず、丹念にたどるような脚本は。
これを凡庸さととるか、様式美ととるかで評価が分かれそうです。
他の点は、例えステレオタイプという批判が出ようと、自分としてはこれで十分だと思います。十分どころか、細かい点はきちんと神経が行き届いた素晴らしいドラマだと思います。
ただ「呪い」の部分、ここだけは「死幣」ならではの、他のホラーにはない何かが欲しかったです。
呪いの因果も、呪いから逃れる方法も、ここだけは突き抜けた独創性が欲しかったです。
「見ている人が見ている期間だけ楽しめれば、見終わったあとは凡百のホラーだったという評価を下されて構わない」
そういう職人的なストイックさを感じる、とてもいいドラマだったと思います。
でも、これだけ丁寧に細部まで神経が行き届いて作られたドラマが、「面白かったけれど、どこかで見たことがあるホラー」という評価で終わってしまうのが、とても残念です。
基礎がここまでしっかりできているんだから、あと何かひとつでも独創的な要素が加わっていたら、とても印象深いドラマになっていただろうなあと思います。
うーーーん、なんで、そんなに欲がないんだよ。
夏子に呪われないためにか。そんなメタ構造、いらないって。
ざんざん、呪いは人間の思惑を超越したものなのだから、いい話にまとめる必要はないと言っていましたが、
「何が一番大切か、死幣がなければ気づきもしなかった」
この若本さんのポジティブな解釈はいいですね。
物事にいいも悪いもない、自分の解釈しだい。
「世の中に絶対的な物事などなく、あるのは混沌に対する主観的な解釈のみである」
とニーチェも言っております。
事実が起こる前ならばともかく、起きてしまったあとは、事実は変えられないのだから、どうせだったらいい解釈をしたほうがいいと思います。
死幣があったらから、由夏に会えて、苦しみや罪悪感を昇華できたわけですからね。(死んじゃったけど。)
ところで、若本が由夏が閉じ込められた部屋の扉を破ろうとしたときの「くそおっ」って発音、面白くありませんでした?
聞いた瞬間、笑っちゃいました。戸次さんもお疲れだったのかな。
総評
見始めてたときは、こんなに面白いドラマになるとは思いもしませんでした。
サスペンスやホラーの、教科書のようなドラマでした。
物語の土台がしっかりしているというだけではなく、キャラクターの描き方も、物語の緩急の付け方も、本当にうまかったです。
こういう風に丁寧に作ってもらえると、どこかで見たことあるような、予想通りに進むステレオタイプの物語でも十分楽しく見れるのだということを教えてもらいました。
サスペンスやホラーの物語とつくる人に、百回くらい見て欲しい。
サスペンスやホラーというのは、物語にたくさんの謎が埋まっていて、うまく作ってさえもらえれば、本当に見ていて面白いです。
それだけに作るほうは大変だと思うのですが。
楽しいドラマをありがとうございました。
同じ製作チームで、また面白いホラードラマを作って欲しいです。そのときは、ぜひ、どこかで勝負に出てみて欲しいです。