うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

≪ドラマ≫ NHKドラマ「夏目漱石の妻」 第一回「夢見る夫婦」あらすじ&ネタバレ感想

【スポンサーリンク】

 

毎週土曜日21時からNHKで放映中のドラマ「夏目漱石の妻」のあらすじ&ネタバレ感想です。

ドラマの公式ホームページはコチラ↓

www.nhk.or.jp

 

「夏目漱石の妻」第一回あらすじ

貴族院書記官長の父を持つ中根鏡子は、裕福な家庭で蝶よ花よと育てられてきた。年頃になった鏡子に、父親が見合い話を持ってくる。

相手は、愛媛で中学校の教師をしている夏目金之助。

占い好きの鏡子は金之助との未来を占い、金之助と結婚することを決める。気難しく神経質な金之助も、天真爛漫で朗らかな鏡子のことを気に入り、二人は結婚する。

 

鏡子の父親は、金之助のために東京で職を探すがうまくいかず、結局、二人は熊本で暮らすことになる。

慣れない熊本暮らし、性格の違いによるすれ違い、鏡子の流産などが重なり、二人の仲は次第にぎくしゃくし、鏡子はついに川に飛び込む自殺未遂を引き起こす。

助かった鏡子に、金之助は家族に恵まれなかった自分の生い立ちを語り、「小説家になりたい」という自分の夢を語った。

 

第一回ネタバレ感想

夏目漱石の本は何作か読んだことあるのですが、本を読んだだけでも「内向的で気難しい人だったんだろうな」と何となく思いました。「こころ」とか、登場人物全員一発殴ったほうが、正気に返るんじゃないだろうか。

 

夏目漱石の妻が、通説では「悪妻」と評されていることもぜんぜん知りませんでした。

このドラマではその通説に対するアンチテーゼとしてか、鏡子側の視点をメインにして夫婦関係が描かれています。

 

その関係ですが、もうね、完全に典型的なこれ。

www.saiusaruzzz.com

 

メンヘラ女子と罪悪感男子の典型例です。

 

この組み合わせのパターン、リアルでもネットでも死ぬほど見たことがあります。

どういう風な思考でそういう行動をとるのか、どういう道筋を辿って破綻に至りやすいかというのが、すごく分かりやすく描かれています。

 

罪悪感男子というのは心のうちを滅多に明かさないので、その生態や心情を知る貴重なチャンスです。

 

「どうして彼は、こんなに冷たいことを言うんだろう?」と思ったり、「そっけなかったリ、避けられたりするのは、私のことを好きじゃないってこと?」という悩みを持っている女子には、ぜひ見て欲しいです。

このドラマを見て研究すると、「いつも重くなって、彼氏に逃げられてしまう」という女性が減るんじゃないかと思うくらいです。

 

「罪悪感男子」とは何なのかというと、一言でいうと「自分の存在が他人の役に立たない、害になるという感覚を持ちやすい人」です。なので少しでも傷ついた様子を見せると、「自分は彼女を不幸にする存在だ」と考えてすぐにフェードアウトしようとします。

罪悪感という感情が男性が女性に対して抱きやすい感情なので、男性のほうが比率的には圧倒的に多いですが、女性にもたまにいます。

 

罪悪感男子はさらに二種類に分かれます。

無価値感受け入れ系(プライド低い系)と無価値感拒絶系(プライド高い系)です。このドラマの夏目金之助は後者です。

夏目金之助は子どものころ、父親から疎んじられて養子に出されており、これが罪悪感の根源になっています。「自分は誰にも必要とされない人間だ」という感覚を持っています。

 

金之助は、自分が忘れたお弁当を走って届けた鏡子を怒るシーンがありました。流産した鏡子の体を労わる気持ちから出た怒りなのですが、「それにしても言い方があるだろう」と思った人が多いと思います。

鏡子が川に飛び込んだあと、金之助はこのときのことを鏡子に謝ります。そして、

「素直にありがとうって言えればよかった」

「それが僕にはできない」

と言います。

 

そう、罪悪感男子の特徴のひとつ「ありがとうが言えない」

 

感謝するよりも先に「自分なんかのために、そんなことをしなくていいのに」と思うんですよね。「自分には、そんなことをしてもらう価値はない」と思っているから。

誰かに何かをしてもらうと、「ありがたい」と思うよりも先に「申し訳ない」と思ってしまうのも罪悪感が強い人の大きな特徴です。

 

このシーンの金之助は、鏡子が流産していることに対して、既に巨大な「申し訳なさ」を抱え込んでいます。(相手に不幸なことが起こると、それが自分のせいのように感じてしまうのも罪悪感男子の特徴のひとつです。)

もう既に鏡子に対して、巨大な「申し訳なさ」を背負って抱えきれずにいます。もうあと1ミリも「申し訳なさ」を感じることができない状態です。そんな状態のときに、自分が弁当を忘れたから、流産後の鏡子を走らせてしまった。

 

「ありがとう」は言えない。「忘れてごめんね」も言えない。

もう一ミリも罪悪感を背負えない。そういう状態のとき、プライド高い系は怒り出します。

自分が罪悪感を感じないために、相手の非を責め立てます。「お前は落ち着きがない」「いつもイライラしている」「何で、まだ体が弱っている状態なのに走ったりするんだ」とぜんぶ、相手のせいにして怒り出します。

何故なら、自分はもう一ミリも「申し訳なさ」を背負えないので相手に押し付けるしかないからです。

 

これだけ書くとかなり最低ですが、そもそもなぜ「申し訳なさ」を感じるのかというと、それは相手を大事に思っているからです。大事にしたいけれど、相手が「イライラしていたり」「流産で弱っていたり」、相手が傷ついていることに対して何もしてあげられない。その無力感を感じたくないがために怒るのです。

 

勝手に自分のせいだと感じて、勝手に無力感を感じて、勝手に怒り出すのですから、そうとう勝手な話です。

勝手な話ですが、金之助は金之助なりに鏡子を愛して大切に思っているんですよね。

 

ちなみにプライド低い系の場合は、「申し訳なさ」のバロメーターが振り切れた場合、何も言わず全力で逃げ出します。

 

罪悪感男子と付き合う場合は、女性のほうがこの罪悪感メーターをどう管理するかが付き合いを安定させるカギになるので、面倒くさいし大変です。

好きなら、がんばるしかありませんが。

 

そしてこの後は、鏡子がメンヘラ女子の本領を発揮します。

「職場に突然、会いに行く」

自分もこれをされたら、金之助と同じように気づかないふりをするか、超そっけなく追い返すと思います。

職場というのは自分にとっては戦場なので、家モードとまったく違う戦闘モードなんですよ。銃弾が飛び交って、相手と殺し合いをしているところに、妻に来られても困るんですよね。

で、そうしたら、川に飛び込んで自殺未遂か……(-_-)

 

まじ、きっついわあああああ( ノД`)

 

で、結局、金之助が「君を失うところだった。僕のせいで」と謝ります。

そう、これがメンヘラの恐ろしいところです。罪悪感を刺激することで、相手に優しくしてもらう、相手の行動をコントロールする。

罪悪感の強い人対しては、この方法は抜群の効果を発揮します。

 

自分が故意に目的を持って何かをしたならばともかく、人間の行動や思考は全てその本人の責任だと思うし、そう考えるのがむしろ大人同士の礼儀だと思っています。

死ぬ生きるは本人の自由で、すべて本人の責任だと思います。

 

「わたしにかまわないと、わたしに優しくしないと、わたしの思いどおりにしないと、死にますよ?? あなたのせいで」

 

こんな卑怯な脅迫にのる必要はないと思いますけれどね。

ドラマなのでいい話風になっていますが、自分はこういう行動は人が人に対して一番やってはいけないことだと思っています。

 

でもまあ、「川になんか入っちゃいけなかった」という鏡子の言葉に対して、金之助が「そうだよ」と答えたので、ぎりぎりヨシとしましょう。(偉そう)

 

金之助はここで鏡子に対して、自分が小さいころから父親に愛されず、家族に強いあこがれがあること、鏡子に家族がいることを羨ましく思っていること、自分は鏡子がいなくなれば独りぼっちで、そのことをとても寂しく思っていることなどを話します。

ドラマは、「金之助を悪者にしないため」「物語を感動的にするため」などの目的があるので普通に話していますが、金之助のようなタイプの男が、自分の弱さをこんなに喋るかはかなり疑問です。

 

もしリアルで、あなたの周りの罪悪感男子(女子でも)がこんなことを話してきたとしたら、その人はあなたのことを相当好きだと思います。

罪悪感男子は「自分には価値がない」と感じているため、自分の価値を一ミリでも減らすような話(具体的には、自分の弱みとなるような話)を他人にはほとんど話しません。自分の価値をこれ以上目減りさせることに、耐えきれないからです。

だから、金之助が鏡子に心を開いた描写とも見ることもできますが、この場合はドラマの演出のためのような気がします。

 

逆にメンヘラ系の人は「自分の弱み」を武器にするので、誰にでも弱みを見せます。弱みを見せることで、相手のふところに入り込むというテクニックをよく使ってきます。(無意識なんだろうけれど。)ナンパの上級者とかでも、「弱みを見せる」をテクニカルに使う奴がいそうだな。その世界のことは、よく知りませんが。

 

出てくるとイライラさせられる「自分が世界一カワイソウと思っているメンヘラ女」の典型のような鏡子ですが、このドラマでは何故か可愛く見えます。

尾野真千子が上手すぎる。

金之助に職場まで会いに行って無視されたときの表情とか、金之助のトラウマ話を聞いているときの表情とか、メンヘラ嫌いの自分でさえ「カワイソウ。抱きしめてあげたい」と思ってしまいました。

「メンヘラ、面倒くさいけどかわいい」っていう人の気持ちが、少し分かりました(*´∀`*)

恐るべし、メンヘラ……じゃなくて、尾野真千子。

 

このドラマは金之助と鏡子が出ずっぱりなので、この二人が下手な俳優だったら目も当てられない惨劇だったと思います。長谷川博己も尾野真千子も、さすがの上手さです。

特に尾野真千子は上手い俳優さんだとは思っていましたが、自分のイメージではない、天真爛漫なメンヘラお嬢様をここまで可愛く演じられるとは思いませんでした。

この二人の不器用な夫婦ぶりだけでも、見る価値のあるドラマだと思います。

 

「あなたの、たくさんの夢の中のひとつだけでもいいんです。ひとつだけ教えてくれませんか?」

という鏡子のめちゃくちゃ萌えるセリフに、金之助が

「作家になりたい」

という、まったく空気を読まない答えを返すのもよかったです。

あの流れだったら、絶対に「お前とずっと一緒にいたい」とかそれ系が模範解答だろう。

鏡子、きょと~~~ん( ゚д゚)としていたしな。まあ、そうなりますわな。

 

次回はイギリス留学、「吾輩は猫である」で小説家デビューするようです。

夏目漱石って、デビューが38歳のときだったんですね。知らなかった。

 

最後はやはり「月が綺麗ですね」で締めるのだろうか。

吾輩は猫である (角川文庫)

吾輩は猫である (角川文庫)