自分が二十歳までに読んでおけばよかったと思う本を、勝手におススメします。
二十歳のころにこれを読んでいたら、その後の考え方が大きく変わったと思う本、二十歳のころの自分がこの本を読んだら、今の自分とはまったく違う感想を持つだろう本を中心に選びました。
「二十歳のころ」立花隆+東京大学教養学部立花隆ゼミ
「有名無名問わず、自分が体験談を聞きたいと思った人の二十歳だったころのことをインタビューしてきなさい」
という東京大学の立花隆ゼミの課題をまとめたもの。
有名な人、無名な人、年配の人から年若い人、様々な人の二十歳のころが並列に並べられた体験談で単純に読んでいてすごく面白い。
非常に苦労している人、しっかりしている人、目標に燃えていた人、何となく生きていた人、どうしようもない人、同じ二十歳でもこんなにも違うものかと思う。
「二十歳」というキーワード以外、何も共通するものがないので、単純に自分のこともその並列の線上におきやすい。自分が二十歳のころ読んだら、「面白い」以上に色々なことを感じたのではないだろうかと思った。
他には、何人もの宇宙飛行士のその後の人生を追い、インタビューを行った「宇宙からの帰還」もすごくおススメ。
「いまを生きる階級論」佐藤優
佐藤優はたくさんの知識もあり、本も読んでいて面白いんだけれど、
「うん?? その話はその主張の根拠にならないのでは??」
と思うことが読んでいてけっこうある。
知識の量がすごいので、何となくそれで押し切られてしまいそうになるのだけれど、立ち止まっていっぺん自分の頭で考えてみたほうがいいよ、ということを身をもって教えてくれる、たぶん(笑)
「なるほど」と思う部分もあるので、そういうことをきちんと自分で見分けられるようにしたい。
社会に出るとこういうタイプの人がいるし、悪質な人だと相手に聞くことを面倒臭がらせることによって、自分の望む方向に物事を持っていこうとするので、そういう人と相対したときの訓練になると思っている。
読んでいる分にはとても面白い。
真似してみたけれど、ぜんぜん続かなかった。方法論としては面白いけど。
「イエスの生涯」遠藤周作
欧米の本は、哲学にせよ文学にせよ心理学などにせよ、キリスト教との関わりがはずせないと思う。キリスト教の考え方や成り立ちを理解しないと、欧米の歴史や思想は、本当の意味では理解できないと個人的には考えている。
そのキリスト教の創始者であるイエスの生涯を、物語風に分かりやすく学べる。続編の「キリストの誕生」ともどもおススメ。
二十歳のころの自分は、典型的な現代日本に育った人間らしく宗教など鼻で笑っていた。大人になるにつれて、宗教というものが日常的な考え方に深く結びついている人間のほうが世界には遥かに多く、むしろこれほど宗教観を軽視している国のほうがレアなのだということが分かった。
自分が信じるか信じないかということはまったく別として、今の時代は、宗教を信じる人の考え方も理解していかないといけないなあと思う。
「自分を知るための哲学入門」竹田青嗣
すごくとっつきにくそうな哲学を、すごく分かりやすく親しみやすく教えてくれる。
この本は、哲学が決して現実が離れた小難しいただの知識ゲームなどではなく、実際に生きている現実に活かせる実用的な学問であることを教えてくれる。「哲学とは知識を学ぶものではなく、体感し実用的に使うものなのだ」ということが分かることが、自分が一番いいなと思った点だ。
哲学は今風に言えば「厨二的なもの」なので、現実的で社会的な物事に向き合うまでの時間的な余裕のある二十歳のころが、一番読むのに適していると思う。
「カラマーゾフの兄弟」ドストエフスキー
「善とは何か悪とは何か」
「罪とは何なのか、赦しとは何なのか」
「人は、本当に自由なほうが幸せなのか」
現代にも通ずる様々な命題を含んだ物語なので、二十歳くらいのころにこの辺りのことを一回、ごちゃごちゃ悩んだほうがいいかもしれない、と思う。
キリスト教の倫理観が根底にあるの社会の中で、その倫理観に対する疑問という形で書かれているので、前提となる「キリスト教的倫理観」が何なのか理解していないと、読んでも意味が分からないと思う。
その辺りの知識を、ある程度仕入れたうえで読むのがおススメ。
あらすじや登場人物をまとめた記事はコチラ↓
「殺人者はいかに誕生したか」長谷川博一
実際に起こった十件の凶悪犯罪の動機を、犯人の生い立ちという観点から探った本。「秋葉原無差別殺人」「神戸児童殺傷事件」など、世間を騒然とさせた事件を取り扱っている。
これを読むと、いかに人間というものが「他人との関係性」から構成されているのかということが分かる。
彼らが起こした罪は絶対に許されないものだが、自分が同じ生い立ちで育ったときに、果たしてこういう罪を絶対に犯さなかったかと言えるかと言うと、正直、自信がない。
「自らの境遇や生い立ちに対する怒りからの無差別殺人」を書いた本は他にも、カポーティの「冷血」やマイケル・ギルモアの「心臓を貫かれて」などもあるが、どれを読んでも考えさせられる。
「遭難フリーター」岩淵弘樹
23歳で工場の派遣労働者として働く、若者の手記。
この本以外にも、派遣労働や日雇い労働の実態やカラクリなどを書いた本が色々と出ているので、読んでおいたほうがいいと思う。
「月収27万以上可能、寮完備」と募集要項には書いてあったのに、
「寮に入ったら、布団のリース代まで取られるし、夜勤も含めて一日8時間以上働かないと月収27万なんていかない。嘘ばかりだ」
なんて採用されて、どこにも行き場がなくなってから言わないように、色々と学んでおいたほうがいいと思う。寮費や道具のリース代という名目で搾取されるぶん、むかしのタコ部屋よりもひどいんじゃないか、なんていう話もあるくらいだ。
そういう実態を知らずに、甘い言葉につられて入ってしまう人が多いことに驚いた。自分も二十歳のころはそんなことは知らなかったので、人のことはいえないのだが…。
一度こういう環境に入ってしまうと、そこから抜け出すのはものすごく大変だし、多くの場合、状況はどんどん悪化していく。
知れば知るほど「そんなこともあるのか」と唖然とするので、できるだけ知識を身に着けて自衛して欲しいなと思う。
「ノモンハンの夏」半藤一利
ノモンハン事変の実際の経緯や経過を描いた本。
この本の一番衝撃な点は、「何万人という人間の命がかかった事案で、組織というものがこれほど無責任で適当になれるものなのか」というところ。
誰も責任を取りたがらず、責任の所在は不明確。
指揮系統はめちゃくちゃで、自分の面子のためにスタンドプレーをしたり、一度出した方針をひっこめたり、言うべきことを言わなかったりする。
会社あるあるなので、日常的な仕事ならば腹は立っても「そういうものか」と思うしかないのだが、命がかかった軍隊という場所でも、組織というものはこういうものなのか、と開いた口が塞がらなくなる。
陸軍の首脳部は余りに無責任だけれど、こういう立場のときに自分もこういう行動をしてしまうかもしれないという人は、案外多いのではないかと考えている。
組織というものの欠陥を考えるには、最適の一冊。
「荒野へ」ジョン・クラカワー
過去記事でも紹介した、映画「イントゥ・ザ・ワイルド」の原作本。
「恵まれた環境を捨てて、アラスカの荒野で一人で生きようとした青年が餓死する話」
実際に起こった事件に感銘を受けたジョン・クラカワーが本を書き、その本に感銘を受けたショーン・ペンが映画化した。
結末は悲惨だが、この映画のキャッチフレーズ「人生は誰のものなんだ?」「まだ見ぬ自分に出会うために旅をする」という厨二精神に全力で共感している。
「自分自身を見つけるために、今までの自分を捨ててアメリカ大陸をヒッチハイクで旅をする」
自分も二十歳のとき、こういうことをやればよかったと激しく後悔している。
年をとって社会から引退したら、クリスみたいにアラスカの荒野を目指そうかな、と思う。
これらの本を二十歳のころの自分が読んだら何と言うか、ちょっと聞いてみたい気がします。面白い本ばかりなので、二十歳でない方にもおすすめです。