昭和初期、東北の貧しい農家から室蘭の遊郭に売られて、女郎になった少女たちの物語。
全女性必読の書だと思います。
女性として生まれて感じる悲しみ、強さ、幸福が凝縮されたような本。
女郎という職業は、今まで精神的にはもちろん苛酷な職業だと思っていましたが、
肉体的にも、これほど苛酷だとは思っていませんでした。
この話のすごいところは、ここまで苛酷な境遇でも、
希望を持って生きられる女性の強さだと思います。
男性諸氏からは怒りを買うかもしれませんが、
男なら間違いなく死ぬと思う、これ。
武子が梅から託された手記を燃やしながら、
言うこのセリフが、この漫画の主題だと思います。
「生きると決めたからには、これからのお前の生きざまで人間に問え。
おなごの強さを、深さを見せつけてやれ」
いつ読んでも、格好いいな。
悲惨な境遇を生き抜くことで、梅や道子をはじめとするこの物語に出てくる女性たちは、
女性の強さや深さとは何なのか、
人間にとって、本当の幸福とは何なのかを、
人生を賭けて問いかけてきます。
第二部でばっちゃんが道生に言う、
「決して、母を不幸だとは思うな。お前を産んだんだ…。
世界一、幸せな母親よ」
という言葉が、その答えなのだと思います。
わたしはこの言葉を読んだとき、梅のことを一番理解していたのは、
ばっちゃんだったんじゃないかなと思いました。
立場は違くても、価値観は違くても、
同じ母というだけで相手のことを理解できるんだなあと。
損得ぬきでその人の幸福を願える相手がいる、
その相手が生きることで、自分も生きているような思いがする、
自分の中にある尊いものを手渡せた相手がいる、
他人から見て、どんなに不幸で悲惨な境遇だったとしても、
梅は幸せだったとわたしも思います。
逆に、他人から見て、どんなに恵まれているように見えても、
人生でそういう人に出会えなかった人は不幸だと思います。
そういう意味では、いろいろな人を受け入れて死んだ道子も、
最後は愛憎半ばした女将と生きていくことを決めた武子も、
幸せなんだろうなと思います。
女性の女性による女性のための物語なので、
男は今いち頼りない聡一さんと重世さん、
あとはげひげひ言っている奴しか出てきません。
直吉は格好いい。
ぜひ読んでください。