1月10日(火)に放映された「マツコの知らない世界」で、小室哲哉がゲストとして登場しました。安室奈美恵やtrf、globe、華原朋美、篠原涼子の話など、裏話が満載で面白かったです。
小室哲哉の曲の良さが、よくわからなかった
小室ミュージックといえば、1990年代後半から2000年代初めまで、音楽界を席巻していました。
出る曲はすべてミリオンヒット、町中が小室ミュージックで溢れかえり、カラオケに行けば必ず誰かが歌いました。周りも、ほとんどの人が聴いていたと思います。
白状すると、このころは小室哲哉の音楽の良さがよくわかりませんでした。
もちろん、好きな曲もあったのですが、
「オシャレな女の子が、おしゃれなだけで特に意味がない(と当時の自分には聞こえた)カラオケで歌うための曲を歌っているだけじゃないか。歌詞に深みもストーリー性もない、ただおしゃれなだけ」
そう思っていました。
そのころ自分は、小室ミュージックと同じくらい流行っていた、ビジュアル系バンドにどっぷりハマっていました。
中でも、厨二的な歌詞を連発していたSOPHIAが大好きでした。
最近また聞くようになったのですが、「ゴキゲン鳥」や「ビューティフル」「黒いブーツ」「進化論」など、バリバリの厨二感がたまりません。
やっぱりSOPHIAはいいなあ、と思いながら聞いています。
華原朋美、篠原涼子、globeなどの裏話
先日の「マツコの知らない世界」では、小室哲哉が当時、どういうことを考えて音楽を作っていたのかを語っていました。
「「I´m proud」は、華原朋美のシンデレラストーリーを作ってあげようとした。キーワードはセレブ感。だから、衣装もハイブランドもので統一した」
言われてから聴くと、すごく納得しました。
言われてみると、「お姫さま感」がほとばしる歌だな、と感じます。
喉がつぶれるほどの高音でシンデレラが猛スピードで階段を駆けあがり、ビルのてっぺんで世界中に自己主張する感じがいいです。
さらにその上の世界を目指すための、ヘリも飛んでいるし。
小室哲哉の曲の中では、一、二を争うくらい好きです。
「篠原涼子は直観で選んだのではなく、慎重に考えた末に選んだ。「何でもやる感」や必死さがよかった」
「恋しさと切なさと心強さと」は、彼女がやってきたこと「私のすべてを見て」という曲だ、という説明も面白かったです。
globeのケイコとマーク・パンサーは、本人同士は普通に仲が良かったけれど、ユニットの存在としては最後までしっくりなじまなかったとか、色々考えていたんだなと思いました。
小室哲哉の話の中でも、宇多田ヒカルが初めて出てきたときの話が非常に印象深かったです。
宇多田ヒカルを見たときに
「自分の時代は終わったと思い、引退も考えた」と語っていました。
小室哲哉が「宇多田ヒカルが出てきたときの衝撃」を語った
一番面白かったのが、
「デビュー曲の「Automatic」のPVって、低い姿勢で歌っているじゃないですか。それがいつ立ち上がるんだろうと思ったら、最後まで低い姿勢のままだった」
と語ったくだりです。(厳密には立ち上がってはいるんだけれど、完全に立ち上がらない(低い姿勢のまま)という意味で使っているのだと思います。)
真っ先に上げたのが「PVが低い姿勢のまま終わる」ことで、「そこに自分には思いつかない宇多田ヒカルの新しさを感じだ」というところに衝撃を受けました。
そこなんだ!!?
一番に上がる要素が、R&Bをネイティブの発音で歌うことでも、その歌詞や音楽の感性ではないんだ。
ていうか、何でそこなんだ????
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考えた末に、歌詞の世界観を展開させるためには、低い姿勢⇒立ち上がるという変化で表現するのが普通なのに、という意味だと勝手に解釈しました。
マツコも「後ろのブラインドも閉まったままなのよね」と言っていました。
言われてみれば、PVにストーリー性を加えるなら「閉じられたブラインドが開くことによって、(たいていは日差しが差し込む)物語が展開する」というのが、普通の発想のような気がします。
なのに、ブラインドは閉じられたまま、宇多田ヒカルも低い姿勢のまま、歌の中の世界が終わる。
そうか、「Automatic」の世界観って、展開も進行もしない静止した物語なんだ。
静止した空間にいる宇多田ヒカルが、自動的に動き出す、そういう意味のプロモなのかもしれません。(違うかもしれません。)
完成したPVや歌詞を見れば、後出しであれこれ解釈はできますが、これをゼロから思い浮かべて形にするということは大変なことなのだと思います。
そういう作業をしたときに、
「このストーリーラインは思いつかなかった。(この発想はなかった)」
小室哲哉の言いたいことは、そういうことかな?と思いました。
宇多田ヒカルの新しさ、衝撃を「PVの世界の中で、終始、低い姿勢のまま終わる」点に見出したところに、小室哲哉の真髄を見たような気がしました。
「「Automatic」も歌詞を何度読んでも、何が自動的なのか分からなかった」
と語っていましたが、
「あなたに関係したものに触れたり、思い浮かべたりすると、自動的に心が動く」
という意味じゃないのか? と思いました。
でも小室哲哉が言いたいことは、そういうことではないのかもしれません。
「自分の成長の速度を、自分が作る曲が遥かに超えてしまった」感覚まで得た小室哲哉が、宇多田ヒカルの中に「自分の中にはまったくないもの。どれだけ歩んでも、自分の世界には見いだせないもの」を見たのではないかと思いました。
マツコの受け答えは「本当に小室哲哉の音楽が好きなんだな」と思えて、非常に好感が持てました。それでもバラエティではなくて、できればもう少し深く語れる番組でやって欲しかったです。
「感性の問題だ」としか言いようがないのかもしれませんが、もっと深く掘り下げて聞いてみたかったです。
一時代を築いた人が、「自分の時代は、もう終わったのかもしれないと感じだ」と言っているのですから、ここは日本の音楽界の歴史が切り替わる、大事な瞬間の話だからです。
宇多田ヒカルの出現に引退するほどの衝撃を受けた、と語る小室哲哉を見て、自分は初めて心の底から「この人は、本当にすごい人なんだ」と思いました。
今までは「大流行して売れたから、すごい人なんだろう」という発想でしたが。
本当にすみませんでした。
宇多田ヒカルのスゴさを語る小室哲哉の言葉を聞いて、あの頃はよくわからなかった小室音楽のスゴさがようやくわかりました。
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