うさるの厨二病な読書日記

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狂気のゲーム「ムーンライトシンドローム」にみる、謎ときコンテンツの面白さ

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狂気のゲーム「ムーンライトシンドローム」の面白さ

このブログで何度か紹介している「ムーンライトシンドローム」というゲームがある 。

ムーンライトシンドローム

ムーンライトシンドローム

 

 このゲームは、非常に癖のあるゲームだ。

まず第一に、ゲームなのにゲームの態をなしていない。

 

ジャンルとしてはノベルゲームで選択肢が用意されているのだが、この選択肢に意味はない。どの選択を選んでも、物語の進行は変わらない。

たまに歩き回れるシーンになって無駄に広いマップを探索させられたりするのだが、この探索にも意味はない。

モブたちと会話しても、その情報がゲームの進行に影響を与えることはほとんどない。

 

登場人物たちは、意味不明なことばかりを話す。

例えば冬葉スミオという人物は、出てきたと思ったら、突然こんなことを話し出す。

 

「人は誰しも詩人たれ。言霊を尊く思うよ。野人だね、きみは。もっとチャーミングな男だと思っていたけれど」

 「ただオレは、きみに執着しようと思っている。精神において、きみのどこかに滞在するよ。特に意味はない。これはオレ独特のメタファーだよ。深い意味はない。簡単なことなんだよ」

 

控えめに言って、ちょっと言っている意味がよく分からない。

このスミオという男だけではなく、「ムーンライトシンドローム」の登場人物たちは、こんな会話ばかりする。

物語も、突然焼身自殺をしたり、気持ちの悪い変質者に追い回されたり、友達が実は神様の下僕??だったり、プレイしているこちらのほうがおかしくなりそうになる。

 

恐らくプレイした人間が10人いたら全員、まぎれもないクソゲーだと認めると思う。自分もゲームとしてはクソだと思っている。

 

意味不明な会話をする狂気じみた登場人物たちが、ぶっ飛んだ鬱展開の物語を繰り広げる。やっていても楽しい気分にならないし、ストレス発散にもならない。(むしろ、操作性が悪さと話の訳の分からなさにイライラする。)そんなゲームだ。

それにも関わらず、一部でカルト的な人気がある。

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このゲームの最大の魅力は、「事実」「真実」と思われるものが一切語られていない点にある。

あの登場人物のあの言葉は、本当はどんな意味があるのか?

あの登場人物は、あのときどうしてあんな行動をとったのか?

あのシーンは、何のためのものだったのか?

結局、このムーンライトシンドロームという物語は、何を言いたかったのか?

そういうことが、いっさい明確には語られていない。

 

「ムーンライトシンドローム」の中でも、比較的分かりやすい「浮誘」という話がある。

巨大な集合住宅で、そこに住む中学生たちが飛び降り自殺を繰り返すという物語だ。

この話は比較的多くのことが語られているので、何となく「真実は、こういうことではないか」ということは分かる。

 

でもひとつひとつの言葉の意味や、行動の意味、結局、中学生たちに飛び降り自殺を強いたものは何だったのか? 本当の目的は何だったのか? ということは何ひとつ説明されずに終わる。

だから表に出た情報から、「本当はこういう話だったのではないか?」ということを考えたくなる。

 

ちなみに自分なりの考察はコチラ↓

www.saiusaruzzz.com

もちろん、これが合っているとは限らない。

真相は分からないけれど、人によって分析や考察が違い、多種多様な解釈ができる、それが「ムーンライトシンドローム」の、他のゲームにはない面白さだと思う。

 

出題編だけのコンテンツが好きだ。

「ムーンライトシンドローム」のように「出題編だけでできている物語」が好きだ。考える楽しみがある。

 

自分が考える出題編だけで、できている物語はコチラ。

「うみねこのなく頃に」

「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」

「ブレア・ウイッチ・プロジェクト」

「新世紀エヴァンゲリオン」(テレビ版・旧劇場版)

 

最もシンプルで優れていると思ったのは、この話だ。

元ネタは読んだことがないのだけれど。

www.saiusaruzzz.com

 

しかし、この出題編だけでできている物語というのは、作る側からすると相当大変だと思う。

まず根底となる物語を、しっかり作りこまなければならない。

そして表に出せる情報だけで、読み手の興味を引き、なおかつ面白い物語を作らなければならない。

 

物語に明確な答えがないので当然、「は?? 結局、何が言いたかったの?」と思い、そこでつまらない物語だと断じて去ってしまう読者も大勢いると思う。

魅力のない出題ならば、読者はそこで考えることを放棄するので、考えてもらうところまで持っていくのも難しい。

 

どこまで情報を出し、どの情報を隠すか。

 この兼ね合いが非常に難しいと思う。

 

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は、自分は最初、これが出題編の物語だと気づかなかった。

ぼんやりと寝ぼけたスッキリしない話だな、と思っていた。

ネットでたまたま、この本の考察をしたブログを読んで飛び上がるほどびっくりした。

自分も今は、村上春樹はこれを「出題編」として書いたのだろうと思っているが、ほとんどそういう感想を見たことがない。

今までの作品が暗喩で書かれた物語であり、「村上春樹の書く作品は、明確な答えがないことに読者が慣れている」ことを完全に逆手にとっている。

「題名がラノベっぽい、よくわからない話」くらいの扱いをされているが、そのことに対していっさい何も言わないところが、なんだかんだ言われててもやはりすごい人だなと思う。

 

逆にそういう上手い仕掛けをしているのに、その仕掛けに対して弁明、というか「それが分からないのは読者が悪い」という言い方をして、評判を地にまで落としたのが竜騎士07だ。

「うみねこのなく頃に」自体は、今までにない仕掛けをほどこした面白い物語だと思っているだけに、作者の言動を非常に残念に思う。

村上春樹との言動と比べて、これがプロとアマの差か、と思っている。

 

出題編だけのコンテンツで、もっと謎解きがしたい。

「ムーンライトシンドローム」も最初にプレイしたときは、「登場人物がみんな頭がおかしい、訳の分からないゲーム」としか思わなかった。

しかしいざ、謎解きをしてみると、「こんな風にも考えられる」「もしかしたら、この人のこの言葉には、こんな意味があったのでは?」と様々なことを思いついて考えることが楽しくて仕方がなかった。

 

こんな風に謎だらけで、読み手に解き明かす楽しみを与えてくれるコンテンツをもっと生み出してほしい。

少なくとも自分は、明確な解答がないことに文句も言わず、自分だけの解答を考えることを楽しみ続けると思う。

 

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