この記事の続き。
相変わらず主語デカい系の話なので、苦手なかたはブラウザバック推奨です。
前回少し書いた「まどマギ」と「ベルセルク(黄金時代)」はすごく似ているという話。
「まどマギ」と「ベルセルク(黄金時代)」が似ていると思う点
自分は何の役にも立たないという認識が基点(他者評価関係なし)→自分はこれで生きていくと決める→同じ志を持つ仲間に出会う→主人公の存在を自分の存在基盤におく人が出てくる(グリフィス・ほむら)
「ガッツは元々、他者評価も役立たずだった」などの細かい違いはあるけれど、基本的な物語の構造は似ている。
「自分が執着するものが足かせになる」という点では、使徒と魔女はよく似ている。(執着によって魔(法少)女化する、執着を捧げないと使徒にはなれない。)
あくまで自分の考えだけど、
「他者評価に左右されない自己完結した世界で、惑わせる執着(味方であれ、敵であれ)を乗り越えて、自分の道を貫き、自分が理想とする自分になる」という発想が、究極の男の美学なのかなと思った。
「ベルセルク」と「まどマギ」は、この世界観を体現した物語だなと思う。
「強くなくてはいけない」という呪いからの解放
その世界観をあえて「少女」という本来、男性から見たら「弱い存在」に背負わせたことが、かなり画期的なことなのではないかと思う。
「ベルセルク」では弱さをキャスカという女性キャラに背負わせて、「自分=男」から切り離しているけれど、「まどマギ」では強さも弱さも同一の存在(少女)に表現させている。
これは昨今よく話に出る「男は強くなくてはならない」という呪いからの解放の過程では、と思う。
マミさんみたいに、「強くて優しくて頼りになる先輩」に見えて、内面は寂しさや孤独などの弱さを抱えている。それで当たり前だし、そういう面を見せることは別に悪いことではない。
むしろそういう誰にでもある当たり前の弱さを受け入れたほうが、もっと強くなれるんじゃないのか?
物語の構造は従来の少年漫画的精神を踏襲しているけれど、あえて登場人物を少女にすることで「強さのみを良しとしない」ところがいい。
心折れてもいいんだよ。
瞳をうるうるさせて上目遣いで手を握って「本当に一緒に戦ってくれるの?」って言ってもいいんだよ。
男だって(女でも)そういう自分の弱い面をダメなものと思わなくていいんだよ。
その後、マミったり病みさんになったりするのも、まあそれでいいんじゃないかと。(たぶん)
ほむらとグリフィスは似ている。
一番初めに「まどマギ」と「ベルセルク」は似ているなと感じたのは、ほむらを見ていて唐突にグリフィスを思い出したからだ。
「自分」という存在の基盤のすべてが、たった一人の他人に依存している点でこの二人はよく似ている。
「グリフィスがなぜ使徒になったのか?」については意見が分かれると思うけど、ある同人誌で見た「ガッツと対等でいたかったから」という意見が自分には一番しっくりきた。
あの時点でグリフィスは、それまでの人生の全てを賭けてきた夢を、ガッツのために忘れてしまっている。
「幼いころからの夢以上に、ガッツと対等でいることが大事。守られるだけの無力な存在であることに耐えられない」
この辺りも「まどかに守られる私じゃなくて、守る私になりたい」というほむらと通ずるものがある。
無力感や無能感に対する耐性の低さ、「無力であることは悪である」という考えは男性特有のもののような気がする。グリフィスのように「無力な存在でい続けるくらいなら、仲間を全部捧げる」という発想は極端だけど、「分からないこともない」という人もいるのでは、と予想している。
逆にこういう「運命に対して受け身で無力になったときの耐性」みたいなものが、よく言われる「男性にはない女性の強さ」につながっているのではないかと思う。(「運命に対して受け身で無力になったときの、女性特有の強さ」が主題の代表的なものが「親なるもの断崖」)
女性の中には、グリフィスのガッツに対する感情が恋愛感情に見える人がいるようだ。ほむらのまどかに対する感情も、恋愛のように見えないこともない。
この辺りの男性と女性の恋愛感情の違いから、グリフィスのガッツに対する感情を読み解くという試みを「ベルセルクフリークス」という同人誌でやっていた。
「男性は友人が迷惑をかけていい存在だが、女性にとって迷惑をかけていいのは恋人や配偶者で、友人は迷惑をかけてはいけない存在」
「男性にとっては相手に迷惑をかけるのが信頼で、女性にとっては迷惑をかけないのが礼儀」
「信頼と迷惑というキーワードで関係性を解釈すると、グリフィスの態度を恋愛感情と誤認する女性もいるのではないか」
このあたりは当時なるほどなと思った。
同人誌なのに作者との対談なども載っていて、すごい豪華な本だったのですが、もう手に入らないのかな。
*この考察の内容の紹介。現物が見つからなかったので、記憶している限りになっています。面白い考察だったので、現物の内容を確認しながら紹介したかった…。
男性にとっての「強く生きるという美学」の中に「弱さや脆さ」を否定することなく混ぜ込んだ「まどマギ」は、現代的な物語だと思う。
社会的に「弱さを見せてはいけない」という抑圧を受けやすいけれど、同時に強さのみで生きることが難しい今の時代で、「ベルセルク」から「まどマギ」に、「自分の弱さや脆さを受け入れて生きていく」「男も自分の弱さを良しとしていい」という風に前進したのかな、だといいな、と思った。
続き~。
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