うさるの厨二病な読書日記

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スポーツチーム経営やバスケに興味がある人におススメ! 島田慎二「千葉ジェッツの奇跡 Bリーグ集客ナンバー1クラブの秘密」感想

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バスケにまったく縁がないのに、バスケチームの社長に

破たん寸前の弱小チームの経営の立て直しを求められる。

本書の著者である島田慎二は、バスケットボールbjリーグでクラブチーム経営に行き詰っていた千葉ジェッツに、個人的な縁故から経営のアドバイスを求められる。

著者は経営者としては長いキャリアがあるものの、バスケのことはほとんど知らない。スポーツクラブの経営にも携わったこともない。

 

千葉ジェッツを運営していた会社の経営陣やスタッフは、バスケへの愛情や夢はあるものの、会社経営に関してはまったくの素人だった

収益やコスト、営業、組織運営に関する知識はほぼなく、

「バスケへの夢や情熱があれば、ファンがたくさんが来てくれるはず」(読んだ限りでは、本当にこんな感じ。)という思いのみで運営しているため、会社は破たん寸前だった。現実的な話やお金の話をすると、嫌がられたり面倒臭がられたりする。

 

最初はアドバイザーとして気軽な気持ちでアドバイスしていた著者は、オーナーに頼まれて社長に就任し、本格的に経営の立て直しをはかることになる。

 

この本はバスケにほぼ興味がなかった元経営者が、バスケへの夢や愛はたくさんあるけれど経営のノウハウがゼロで破たん寸前のスポーツクラブチームを一から立て直し、Bリーグの人気強豪チームに押し上げるまでの本だ。

 

①スポーツクラブチームの経営に興味がある人 

②プロバスケの統一リーグができるまでの経緯に興味がある人 

③バスケやBリーグに少しでも興味がある人 

④千葉ジェッツが好きな人 

この中のどれか一項目でも当てはまれば、楽しく読める本だと思う。

 

「日本バスケ全体を、どうやって発展させるか」という視点

千葉ジェッツは今年は天皇杯二連覇を達成し、リーグでの観客動員数は一位。

これがNBL出身のアルバルク東京(旧トヨタ)、川崎ブレイブサンダース(旧東芝)、シーホース三河(旧アイシン)なら分かる。NBLの前のJBL時代から人気もあったし、母体も大きいから観客も動員できるし、戦力も揃えられる。

 

ところが千葉ジェッツは、元々は地元のバスケ好きの有力者が寄り集まって、bjリーグが発足と同時に、何のノウハウもなく勢いで作ったチームだ。(←これは知らなかったのでびっくりした。bjリーグは加盟条件がそうとう緩かったらしい。)

二リーグが並列していた時代は、NBLとbjリーグは明確に実力差があった。

bjリーグの試合を直接見た印象でいうと、今のB3くらい。アマのクラブチームの強いところに毛が生えたくらい、という感じだった。

 

そこからわずか6~7年でここまできたのかあ、と思うとプロバスケが日本で普及するのも夢じゃない気がする。

Jリーグが発足した当初だって「日本でサッカーねえ。浸透するのかなあ」と思ったけれど、今や世界に挑戦する選手もたくさんいる。野球も日本人がメジャーリーグに行くなんて、野茂が実際に挑戦するまでは漫画の中の話だった。

 

この本の著者島田さんのいいところは、「Bリーグ全体をどう普及させるか」「日本のバスケをどうするか」という視点を持っているところだ。

今はBリーグの理事もやっているけれど、本書を読むと千葉ジェッツの社長のみをやっていた時代から、「自チームのことだけではなく、Bリーグをどうやって普及させるか」という目線を常に持っていた。

この辺りは、元々はバスケにそれほど興味がなかったことが、余計な思い入れもしがらみもなく良かったのかもしれない。

 

まだまだBリーグというパイが小さいのに、「そのパイをどう分け合うか」で内部抗争をしていても仕方がない。

まずBリーグ(というか日本バスケ)というパイ自体を大きく底の厚いものにしないと、

「面白くない→観客がこない→収益が上がらない→いい選手をとれない→面白くない→子供たちがやりたいと思わない→バスケというスポーツの基盤が薄くなる→いい選手が育たない→面白くない」

の無限ループに陥る。

 

同じスポーツでも、バスケには野球やサッカーにはない良さ、面白さがたくさんある。

バスケの一番の強みは、パッと見の分かりやすさ、華やかさだと思っている。

競技時間も短いし展開が早いから、飽きたり見ているほうが疲れてしまうことも少ない。元々はスポーツには興味がない人や、一般にスポーツには興味がない人が多いと思われる年配の女性層なども十分に取り込めると思う。子連れの人なども来やすいと思う。

 

クラブ経営をするにあたっての方向性や戦略

前から「箱もの経営」にかなり興味があったので、この部分は興味深く読ませてもらった。「箱もの」に限らず、組織運営という観点からもすごく面白いし、個人的には勉強になった。

 

人との信頼関係の構築が一番大変かも。

精神論は余り好きではないのだけれど、「経営者が自分のことしか考えていなければそれは部下にすぐに伝わるし、業績は必ず悪化する」というのは面白いなと思った。

何も言わないし何も考えてなさそうでも、人はけっこう色々なことをよく見ている。人と人をつなぐものは最終的には信頼関係だから、それを失うと取り戻すのは大変だ。

 

「お客さんは移ろいやすいものだし、一度離れられると取り戻すのが大変」というのは、自分も客商売だからよく分かる。

最終的にはどんな小細工よりも「ここにこなくてはできない体験だ」と「自分個人に対する信頼」に依存するのが一番強い気がする。

「他のスポーツや他のチームでは得られない、千葉ジェッツを応援しているからこそ得られるもの」をどれくらい見に来てくれた人に与えられるか。

「来て損した」と思わせるのは無茶苦茶簡単なんだけれど、失った信頼を取り返すのは至難だ。どうしても上手くいかないこともあるから、そういうことをしても一度や二度くらいなら大目に見てもらえる信頼関係をいかに築けるか、ということも大事だよなあ。

 

 収益をどう上げるか。

「箱もの産業」では、収益は①チケット販売数 ②グッズ売上 ③スポンサー支援(広告費)④放映権 くらいかな?

たぶんバスケの場合、知名度がもう少し上がって③と④がとれるようにならない限り、①がメインになると思う。アイドルやアーティストだと②もそうとう占めると思うけれど。

 

チケットの売上による収益は単価×動員数×試合数になると思うけれど、千葉の場合これがそろそろ上限が見えてきている。

ホームの船橋アリーナは、最大収容人数が6000人。

アリーナ建設は今のところ現実的じゃないないのか。そりゃそうか。

そうするとチケット単価を上げるか試合数を増やすかどちらかしかない。

Bリーグは今はレギュラーシーズンが60試合、NBAは82試合らしいけれど、NBAは試合数を削減すべきという批判も出ている。天皇杯や日本代表もあるので、試合数を増やすのは選手の負担が大きすぎるかも。

そうするとチケット単価を上げるしかない。人気を上げてチケット単価をあげて、収益をあげてアリーナを建設する。この方法しかないかもしれない。

 

営業トーク

「上手いなあ」と思ったのは、地元の企業にスポンサー契約や出資をお願いしにいくときに、「船橋の地元企業で、天下のトヨタ(アルバルク東京)を倒しませんか」というアプローチをかけた部分だ。

相手に「こうしてもらいたい」「理解して欲しい」と思ったら「相手が興味を持ったり、分かる言葉で説明したりお願いする」ことがすごく大事だよなあ。

これが自分たちの言語である「船橋をバスケで盛り上げましょう」のような言葉だったら、バスケに興味がない人は聞いてすらくれないかもしれない。

地元企業の経営者、スタッフ、ファンの中でも年齢層、性別などによって、見ている風景や興味があることが違うから、目的や相手の見えている風景や興味に合わせてアプローチを変える(喋る言語を変える)のはものすごく大事なことだと思う。 

 

チーム・選手のこと

本書を読むと、チーム作りの構想における富樫への期待を強く感じる。(現場の方針には口を出さない、とは言っている)

栃木ブレックスの人気が、ある程度田臥の人気と重なっているように、知名度や人気を上げるためにはそのチームの看板になるスターは必要だ。

経営戦略的には富樫をスターに押し上げたほうがいいんだろうし、富樫はただスター性があるだけではなく実力も十分ある。若いしプレイも華やかだから、バスケを全然知らなくても「すごい」ということがひと目で分かるし、とにかく見ていてワクワクする。

千葉ジェッツ全体を「わんぱく小僧の集団」でキャラ立ちさせるなら、シンボルにぴったりだと思う。

 

そういう「実力も人気も見据えた構想」が絵になっていることが分かるから、「富樫を中心としたチーム作り」を否定しづらい。(キャラ立ちも考えているのは、上手いなあと思った。確かに祝勝会や試合終わりのわちゃわちゃは見ていて楽しくなる。)

現在の視点だけではなく未来を見据えていたり、宣伝効果まで考えたチーム作りと考えると、若い選手をスタメンで起用する、という考え方もあるのは分かる。

この辺りは、西村、石井のファンなので複雑…。

 

まとめ

この本で一番良かったのは、「現在のリーグやチームのことだけではなく、日本のバスケ全体や未来のことを考えなくてはいけない」と考えているところだ。

バスケはスポーツとしてはメジャーなのに、プロであるBリーグの認知度はまだまだだ。野球やサッカーの足元にも及ばない。

「世界に通用するレベルに達していないことが原因」という意見は因果が逆……完全に逆とまでは言わないけれど、せいぜい「卵が先か、鶏が先か」の話だと思う。

その競技に人気や魅力、将来性があるから、人材を育てられたり、身体能力に優れた子が「バスケをやろう」と思ってくれる。

 

国内でプロになっても注目もされない、年収で評価もされないところに夢は持てない。

「好きならばできる」のはアマの段階ならそうだろうけれど、「将来、飯の種にする。人生を費やす」ならば、そこである程度「稼げる」「評価される」「上を目指せる」システムが必要だと思う。そういうシステムがあるから人材が集まり切磋琢磨して、その中からスターが出たり、世界に通用するレベルになれる育成や指導ができるようになるのだと思う。

 

今の段階では、チーム・Bリーグ・世界がどうこう以前に、そもそも日本バスケにこのシステムがない。二リーグ並立で争っていたことでもわかるように、そういうシステムを作ることが最優先だ、という意識もなかったんだろうな、と思う。

ずば抜けた逸材の登場をただ待つのではなく、人材が育ち、育った人材が次世代を育てるようなシステムを作り、少しずつでもレベルを底上げしていくことを考えるしかない。

そのシステムが滞りなく回転するところまで磨き上げ、能力のある子に「バスケをやれば夢が見れる。プロになって活躍すれば、どんどん評価され上に行ける。自分の能力を最大限発揮できる」と思ってもらえるステージを用意することが大切だと思う。

 

レベル上げには時間も根気もいる。

「バスケのプロリーグがあることも、まだ知らない人が多い」

「バスケは好きでも、Bリーグには興味がない人も多い」

「プロスポーツとして多くの人に観戦が楽しみ、と思ってもらうにはまだ実力不足かもしれない(特に下位のチームは)」

という現状を認めたうえでどうするか。

自分たちのチームのことだけではなく、そういうことを考えて動いている人がいるというのが心強いし、ファンとして日本バスケの未来に夢が持てた。

 

自分も微力ながらプレイを応援したり、せっせとバスケの魅力とBリーグの布教活動を続けたいと思う。

 

本日19時より、千葉ジェッツの試合があるよ~。

本日1月26日(金)19時からNHKBS1で、川崎ブレイブサンダースVS千葉ジェッツの試合が放映されます。興味のある方はぜひ見てみてください♪♪

川崎の篠山選手と千葉の西村選手のガード対決に注目です!

  

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