*(追記)全5卷を読んだうえでの結末のまとめと感想はコチラ
現在、二巻まで発売中!
有田イマリの「はっぴぃヱンド。」を既刊2巻まで読んだ。
「登場人物の誰かがループしていること」「登場人物のうちの誰がタイムリープしているか」という他のループものでは物語の鍵になっていることが多い情報が、この漫画では一巻のあらすじや初期の段階で明らかにされている。
最初にあらすじを読んだときは、「またループものか」と思った。
しかし読んでみて、「初期の段階でタイムリープしていることが分かっている」というのは、「ループもの」というジャンルをまったく別の角度から見せることが可能なんだな、ということに気づかされた。
「はっぴぃヱンド。」あらすじ
中学二年生の相田茜は両親の仕事の都合で、姉が教師をしている生徒数10人の田舎の学校に転校してきた。
転校初日、茜は姉から学級日誌を渡され、「必ず毎日つけるように」言われる。
6月4日に引っ越してきた茜はクラスメイトとも打ち解け、楽しい日々を送る。
しかし一か月余りたった7月10日、姉から突然「東京の両親の下に帰るように」言われれ、急きょ東京に戻ることになる。
すっかり今の暮らしに馴染んでいた茜は突然のことにショックを受け、10日のぶんの日誌を書くことを忘れてしまう。
明くる11日、クラスメイトたちが茜のためにバーベキューを開催してくれる。
そこで茜は姉に「お前、昨日日誌を書かなかっただろう?」と言われる。
(引用元:「はっぴぃヱンド。」1巻 有田イマリ/スクウェア・エニックス)
茜がうなずいた瞬間、姉が突然豹変する。
設定はあの作品に似ている。しかし…。
田舎の学校に転校してきた、周りはほとんど女の子、馴染んで楽しく過ごしていると突然雰囲気が豹変する。実はよそ者の自分には知らない色々な秘密がありそう。そして登場人物のうちの誰かがループしていて(知っていて)、そのループから脱出しようとする。
設定だけを並べると「まんまアレじゃないか!」と言いたくなる。
ところがある一点でこの漫画は、他のループものと一線を画している。
それは「ループしている事実」を、戦略的に利用しているところだ。
他のループものの登場人物たちは「そのループから、常に脱出しようと試みていること」が多い。
もちろん「失敗回」の条件を積み上げて生存ルートを探そうとするのだが、基本的に彼らはどの回においても生存を目指している。
ところが「はっぴぃヱンド。」でループからの脱出を試みているさやかは、「その回ごとにどの情報を知るか」ということを定めて「その回で知ったことを少しずつ積み上げて」自分が閉じ込められた世界の構造を知ろうとしている。
最初から「このループ回は、これを知るために費やそう」と定めて最終的には死亡することを前提に少しずつ真相を探っている。
(引用元:「はっぴぃヱンド。」2巻 有田イマリ/スクウェア・エニックス)
この試みがすごく面白く感じられた。
「失敗ルート」では必ず凄惨な死が待っているからのだから、「失敗を前提にして」行動するのは並大抵の覚悟ではない。また「何度死んでも、次回も必ずループする」という保障はないのだから、「今回は失敗してもいい」などと思えないのも当然だと思う。
仮に「必ずループする」という保障があったとしても、それは気の遠くなるような作業だ。「今回はドアを開けるところまで」「今回はドアを開けて何分後に閉まるかまで」など本当に少しずつしか進まない、その中で何回も何回も殺されるさやかの苦しみと葛藤もちゃんと読者に伝わってくる。
そういうことも描かれているからこそ「少しずつでも情報を探り出し、このループの構造を知る」という発想は面白いと思った。
読み味としては条件が似ている既存の作品よりも「デスノート」を思わせるので、今後もこの方向で話が進むことを期待したい。
好みが分かれる絵だけれど、それで敬遠するのはもったいない。
個人的には絵は余り好みではない。
登場人物の見分けもつきにくい。ただでさえ同い年の女の子が多いのに描き分けもイマイチなので、髪の色や服装で見分けるしかない。
もう少し日常パートを長くして、物語で人物を掘り下げたほうがより感情移入できるんじゃないか、とは思う。ただこの話は展開の速さが魅力のひとつであることも確かなので、この辺は難しい。
こういうのを見ると「こんな奴いるか」と思いつつも、奇抜な服装や口癖でキャラ付けするという方法は有効なんだなあと思う。
ニコニコ静画で一巻の途中まで読める
ニコニコアカウントを持っていれば、現在二話までは無料で読める。
「ミステリーやサスペンスが好き」
「ループものが好き」
「健気な女の子が好き」
「残酷描写は平気」
この辺りが当てはまる人は、十分楽しめるんじゃないかと思う。