これについて。
「〇〇と▲▲仲いいじゃ~~ん。もうお前ら、付き合っちゃえよ。つーか付き合ってんじゃねーの?」
ということが「ネタとして扱われる」のは、異性間でもよくあるので、自分は「同性」「異性」の差については特に何かを感じなかった。
この件が差別か否かについての自分の意見はここで終わる。
ここからが本題。
自分がこの件で気になったのは同性か異性かは関係なく、
「恋愛や性的な指向など、選手の私的な部分を『公的な組織』がネタにし、Twitterという誰でも見る可能性がある場所に公表した」
ということだ。
信頼関係がある個人同士で、私的な空間で行われたことならば問題ないと思う。
またファン限定のサービス、ファンイベントの一コマなどならかろうじて分からないこともない。
上記の記事でも「ファンの方に楽しんでもらうために」「ファンの方には楽しんでもらえた」と繰り返し書かれているから、あくまで選手のことがよくわかっているファン向けの企画のつもりだったのかもしれない。
でもそれをTwitterで公表することを選んだのであれば、「ファン向けですから」というのは通じないと思う。
実際にファンでない人が目にして、こういう風に取り上げられているのだから。
これは「レバンガ北海道」の「公式」アカウントが、ファン以外の人もいる多様な考え方がある世の中に向けて発信した情報だ。
「選手本人が了解しているなら問題ない」のは、個人間ならば、だ。
「組織が(しかも会社という雇用主が)、組織内の個人の私事や内面をネタにして世の中に公表する」ということについて、もう少し立ち止まって考えることはできなかったのだろうか。
政治、宗教、性的指向、人種、民族問題など、大人であれば個人間ですら「真剣に扱う、深い信頼関係がある前提でなければ、取り上げるのが難しい話題」は避ける。
その人の根幹に立ち入るような話題は、基本的には避けるのがマナーだからだ。
この件に関してレバンガ北海道は広報を通して「誰かを傷つける意図はなかった」というコメントを出したが、それは大前提だと思う。
誰かを傷つけるために、こういうことをネタにする人間は稀だ。
「誰かを傷つける意図がなくても、誰かを傷つけてしまう可能性が高いテーマは、真剣に話し合いたいとき以外は避ける。ましてや色々な立場の人がいる公共の場で、ネタなど軽い扱いはしない」というのが、通常の発想だと思う。
そういうことをあえてやることを、ネットでは「炎上狙い」と呼ぶ。
さらに公的な組織であれば、そういう危険性のあるものは避けたり、扱うにしても細心の注意を払う。
個人間とは違い、組織と個人というのは、基本的には力関係がある。雇用主、被雇用者ならば力関係はさらに明確だ。
だから普通は、組織というのは個人の権利を慎重に扱う。
「本人も了解済みの『ネタ』だから」で済むのは、ある程度の信頼関係がある個人間で、私的な空間でのみ通用することだと思う。
別に内輪の私的な集団で構わない、世の中にどう受け取られようとどうでもいい、俺たちには俺たちの考えとやり方がある、というのならばそれでもいい。
そういう覚悟をもって、このネタを世に発信したかったんだ、別に通じない人には分かってもらわなくていいというのならば、それはそれでひとつの考え方だと思う。
でもこれは、Bリーグやバスケを知らない人たちに「少しでもBリーグのことを、レバンガというチームを知ってもらおう」「こんなすごい選手がいると知ってもらおう」と思って、やったことだと思うんだよ。
選手のことも、もう少し尊敬をもって扱って欲しい。
選手はバスケのプレイで報酬を得ているプロだ。
外野の人間は「まだ日本では、バスケじゃ飯が食えないだろ。何でもやれよ」というかもしれない。確かに現状はプロといっても、生活できる程度の収入の選手のほうが多いのかもしれない。
でもだからこそ、スタッフは「プロ」という概念をもっと大事にして欲しい。
「もっとBリーグを広めたいから。チームのことを知って欲しいから」
「応援してくれるファンが喜んでくれるから」
そういえば、選手たちはたいていのことは無理をしてでもやってくれると思う。
だからこそ企画を考える方で、「こういうプライバシーに踏み込むようなことはダメだ」「こういう話題だと賛否が割れて、選手もそこに巻き込まれるんじゃないか」など事前に考えて欲しい。
日本ではまだ「バスケのプロ」という概念が、十分認知されていない。
「彼らはプロのバスケ選手なんだ。バスケのプレイこそが彼らの本分だ」ということを、誰よりもスタッフが尊重しないと、その概念はいつまでたっても定着しない。
キャラを立てる、面白いことをしてもらう、というのが悪いわけではない。
バスケ以外の活動をして広告塔の役割をしたり、二次創作的なことを問題視しているのではない。
外部メディアがそういう取り上げかたをしたり、ファンがそういう考えを楽しむことは選手本人が認めているならば悪いとは思わない。
でもそれは、公式が率先してやることではないと思う。
一番腹ただしいのは、少し気をつければ避けられたことだと思うからだ。
ファンの人に喜んで欲しかったのならば、会場やファンイベントでやれば良かったし、少し考えれば、こういう話題はネタとして扱うには危ういのではないか、傷ついたり気にする人もいるのではないか、と分かるはずだ。
「組織が所属する個人のプライバシーをネタにして、ネットで広く公表すること」がどういうことか、何故疑問に思わなかったのか。
ファンの中にはバスケプレイ以外の選手個人のことを知りたい、という人もいるだろう。そういう時はインタビュー形式などで趣味や家族のことなど、ひとつひとつ丁寧に話を聞いて、選手自身が話したいことや話したくないことを選びながら公表すればいい。
今はSNSもあるのだから、選手もそこで自分の話したいこと、ファンに伝えたいことは自分の判断で話すだろうし。
「目にした人100人中100人が傷ついたら良くないと思いますが、今回はファンの方から『面白かった』という声をTwitterや試合会場でもらうことができました」(上記記事より引用)
本当にこう思っているのであれば、既存のファン以外には、別にBリーグを普及する気もない、レバンガのことをどう思ってもらっても構わないということか。
バスケに関係ないことをネタにして、しかもそれが慎重に取り扱わないと燃えやすいことで案の定燃えて、それを公式でやっているというのは、組織として余りに未熟すぎて、失望が大きい。もう少し「公的な組織である」と意識しないと、メジャーになるどころか同じようなことがこれから先も起こる気がする。
今週末はワイルドカードを争う栃木ブレックス戦だ。こんな騒動を起こしている場合じゃないだろう…。
Bリーグは今年二年目を迎えたけれど、世の中の認知度としてはまだまだだ。
日ごろから、運営に携わっているスタッフのほうが自分なんかよりずっと、チームのことや選手のこと、Bリーグのこと、日本のバスケのことを考えているのは分かっている。
ファンを楽しませること、もっと多くの人にバスケをたのしんでもらうことに日々、心を砕いていると思う。
自分も毎週毎週楽しんで観ている。
だからこそ、こういうことでBリーグが話題になることが悔しい。
今回の騒動は、「100人中100人を満足させるなんて無理」と総括できるものだとは思わない。運営側の認識不足であり、余りに不注意だったと思う。
「誰かを傷つける意図がなかった」
それは分かる。
でも結果的に、自分たちが世の中に発信した情報でこういう反応が起こった。そのことを受け止めて欲しい。
「なぜこういうことが起こったのか」「何がいけなかったのか」と考えて欲しい。
それができないのであれば、世の中に広く普及する、多くの人が楽しんでくれるプロスポーツになるなんて夢のまた夢だ……。
これでBリーグを知った人は、これも何かの縁。そろそろCS進出のチームも出そろって今期はクライマックス寸前です。ぜひ見てみてください。
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