うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

夏休みの読書感想文にもおすすめ。海外児童文学10選。【小学生向け】

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子供のころ、延々とループして読み続けた海外児童文学の中で面白くてお気に入りだったものをご紹介したい。

大人向けのものを子供向けに改変したものも多いので、そういうものは大人向けとの違いなどにも触れている。

 

 

少年・少女の成長譚

「トム・ソーヤーの冒険」  マーク・トウェイン

「ハックルベリー・フィン」と二派に分かれると思うが、自分はトム・ソーヤー派。子供のころに読んでいたシリーズには、トム・ソーヤーしか入っていなかったから。

「トム・ソーヤーの冒険」で一番面白かったエピソードは、お祖母ちゃんに言われてイヤイヤやっていたペンキ塗りをさも楽しくてたまらなそうにやることで、他の子供にペンキ塗りを押し付けたあげく、色々な貢物までもらったという話。頭いいよ、トム。

あとはベッキーと洞窟の中で迷子になったエピソード。同じ洞窟に迷い込んだインジャン・ジョーが、抜け出せなくなったシーンが怖かった。

トム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫)

トム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫)

 

 「翻訳夜話」の柴田元幸の訳。

 

 

「秘密の花園」  フランシス・ホジソン・バーネット

「小公女セーラ」や「小公子セディ」でおなじみのバーネットの作品。

コレラで家族を失った孤独な女の子が、従兄弟の家に引き取られ、様々な人と触れあって心身ともに成長していく話。

 

「小公女」や「小公子」と違って、主人公の二人、メアリーとコリンが最初のころ、我儘で自己中心的な嫌な奴なところが好きだった。親に放置されていた、など色々と事情はあるのだけれど。

始まり方がメアリーの家族がコレラにかかってみんな死んでしまったり、突然連れてこられた家が余りに広大すぎて、誰にも出会えなかったり、不安感を煽るようになっている。

メアリーがコリンに最初に会うきっかけも、「余り屋敷内をうろつくな」と言われていたのに、うろつきまわって部屋に帰れなくなったあげくにコリンの部屋に迷い込む。

今聞いても「そんなダンジョンみたいな屋敷があるのか」と思うけれど、そういう子供目線で見ると怖かったり、謎めいた雰囲気が好きだった。

メアリーはコリンをはじめ色々な人と知り合ったり、庭の自然や植物に触れたりしながらどんどん明るく健康的な性格になっていく。

子供目線で読むと未知の世界へ飛び込んでいくワクワク感が味わえ、大人目線で見ると子供の素直で驚異的な成長が心地いい物語。

NHKでアニメ化もされた。

 

「家なき娘」  エクトル・マロー

アニメ「ペリーヌ物語」の原作。

「家なき子」とどちらも好きなんだけれど、僅差でこちらを推す。

「貧しい母親と結婚した父親に激怒した、絶縁状態の祖父に会いに行く話」

この形式自体は似た話(「小公子」など)はある。

「家なき娘」のペリーヌのいい点は、最初、身元を隠して「祖父に認められる人間になろう」と頑張るところだ。

父親の形見があるから「孫」と認められること自体は簡単だけれど、それでは「孫である」と認めてもらうだけで、自分という人間を認められたことにはならない。今の自分を認めてもらうことが、自分を育ててくれた母親を認めてもらうことにつながる、とペリーヌは考える。

母親が死んだあとは祖父の経営する工場で働きながら、一人暮らしを始める。貧しいけれど、草を編んで靴を作ったり(←子供のころ真似したよ)アイディアとバイタリティがすごい。

外国語が話せることが認められて、身元を隠したまま祖父の個人秘書に抜擢される。

聡明で優しく無欲で控えめなペリーヌの人柄を、気難しい祖父もすっかり気に入り「養女になって欲しい」と言われたところで、ペリーヌは初めて自分が実の孫であることを明かす。

よくあるサクセスストーリーなんだけれど、そこに至るまでの努力と根性が入念に描きこまれているところ、それでいながら「小公女」のように「耐えるだけ」という暗さがないところが「家なき娘」のおススメポイントだ。

実際、「家なき娘」で自分が一番好きな箇所は、工場で働きながら森の中での一人暮らしをしているときの描写だ。すっごく楽しそうで、むしろ祖父に認められてからのほうが若干退屈に感じるくらいだ。

 

「オリバー・ツイスト」  チャールズ・ディケンズ

孤児のオリバーが劣悪な環境の孤児院から逃げ出したり、強引に窃盗団の手伝いをさせられたりしながらも最後は幸せをつかむ話。

最初にいた孤児院の描写がえげつなくて、子供心にショックを受けた。「デイビット・コパフィールド」のモラハラ描写などもそうだが、ディケンズの話は基本は明るくても細部の描写がやたら生々しいことが多い。

善玉も悪玉も生き生きしていて、窃盗団の描写なども興味深いし、展開も面白い。

「クリスマス・キャロル」のようなファンタジーも書ける、「二都物語」のような壮大な恋愛小説も書けるし、「大いなる遺産」のようなサスペンス調の物語も書けるし、本作や「デイビット・コパフィールド」のような少年の成長譚も書ける。多才な人だなという印象。 

オリバー・ツイスト (光文社古典新訳文庫)

オリバー・ツイスト (光文社古典新訳文庫)

 

 

 

手に汗握る冒険活劇

「宝島」  ロバート・スティーブンソン

子供向けということで読まないことがもったいないくらい、滅茶苦茶面白い冒険活劇。

母親と二人で暮らす少年が海賊から宝の地図を渡され、大人たちと共に宝探しの冒険に旅立つ。

悪党に命を狙われる、というスリリングさ、自分たちの船で地図を頼りに宝を探しに行くというワクワク感、銃撃戦の緊迫感、自分一人で悪党を出し抜くヒーロー願望の満たされ具合、海や見知らぬ無人島の怖さ、とこの短い物語によくこれだけのものを詰め込んだな、というくらい少年時代の夢と希望と憧れがぎっしり詰め込まれている。

これだけでも大満足なんだけれど、「宝島」で最も秀逸なのは、悪役である海賊シルヴァーの造形だ。

恐ろしいほど残酷で狡猾、油断がならない人間なのに、どこかユーモアがあって、分かっていてもその魅力に引き込まれてしまう。滅多にお目にかかれない不思議な人物像だ。

日常から離れた戦いと冒険を思う存分、堪能できる。

 

 

「三銃士」  アレクサンドル・デュマ

「戦い、友情、酒、女」という男のロマンだけでできている物語。

田舎から銃士を目指して出てきた若者が、三人の腕の立つ銃士と友情を結び、王妃を巡る陰謀の解決のために奔走する。

原作の「ダルタニャン物語」だと、主人公ダルタニャンは狡猾と言えるくらい頭が切れて、営利的な発想もあり、割と破天荒な人物だ。前述した「宝島」の悪役シルヴァーの系譜にむしろ連なる。

悪女ミレディーを騙して関係を持ったり、内心は自分が使える王妃やマザランに対して文句たらたらだったり、従者のブランシュに対して横暴だったり、クロムウェルを誘拐したり、人のいいポルトスをそそのかして自分に協力させたり、主役とは思えないことも色々とやる。

そういう行動も「さっぱりとした気質なら許される」「とにかく友として気持ちいい男ということが第一」という現代とはかけ離れた雰囲気を味わえるところが、「ダルタニャン物語」の一番の魅力だ。

少年漫画のヒーローのようなダルタニャンよりも、原作のずる賢く自己中心的な、それでいながらいざというときは己の身も顧みず友のために動けるダルタニャンのほうが何倍も魅力がある。

「三銃士」は原作の一、二巻の部分だが、そのあと四十、六十になってもダルタニャンは活躍し続ける。フロンドの乱や清教徒革命、ルイ十四世の治世にも絡むので、読みながら楽しく歴史も学べる。

三銃士 (10歳までに読みたい世界名作)

三銃士 (10歳までに読みたい世界名作)

 

 

三銃士 上中下合本版 (角川文庫)
 

 

 

少し暗めな陰謀劇

「鉄仮面」  ボアゴベイ

ルイ十四世の時代に、実際にバスチーユにいた仮面をかぶった謎の囚人をモチーフにした小説。

「ダルタニヤン物語」の中でも、正体はルイ十四世の双子の弟という設定でエピソードが作られていたけれど、個人的にはこちらの「鉄仮面」のほうが好き。

反乱軍の主謀者として捕らえられ鉄仮面をかぶせられて囚人となった夫を、美貌の妻が三十年くらいあの手この手で救い出そうとする物語。

洗濯女に成りすまして、牢の事情を探ろうとしたり、貴婦人として成り上がって、監獄長に近づいたり、小道具を作って囚人に渡そうとしたり、鉄仮面を救い出すためにありとあらゆる手を駆使する。

ずっと鉄仮面を救い出そうとしているだけの話だけれど、牢屋の事情や脱獄方法や、失敗のパターンも様々なバリエーションがあるため、読んでいてまったく飽きない。

子供向けの本ではぼかしてあったが、妻のバンダが元々は地主か何かの奥さんだったのに、主役のモーリスに一目ぼれして彼に着いてきた、という設定を聞いてびっくりした覚えがある。

自分が読んでいた本の挿絵も、モーリスがやたら男前だった。

「よくこんなにずっと探し続けるな」と思っていたけれど、そこまで惚れこんだのであれば、何十年も探し続けるのも無理ないのかもしれない。

鉄仮面(上) (講談社文芸文庫)
 

 

「巌窟王」  アレクサンドル・デュマ

原作は「モンテ・クリスト伯」。無実の罪で陥れられた男の復讐劇。

アニメ化もしているし、ドラマ化もした。

赤ん坊を生き埋めにするエピソードがあったり、閉じ込めてどんどん金を巻き上げたり、復讐相手も最後発狂したり自殺したりと、元が大人向けであることを差し引いても、子供が読むにしては陰鬱な展開だった。

ずっと暗くて不吉な雰囲気だったのが、逆に印象的だった。

自分が読んでいたシリーズでは、死体のふりをして入っていた袋を海に投げ入れるシーンのカラーイラストがあって、それが怖かったことを覚えている。

ファリア神父との交流で、若くて無知だったダンテスがどんどん知識を吸収していく様子を神父が喜ぶ描写とか、大人になった今思い出すといいなあと思う。

アニメは一話だけ視聴したのだけれど、プライム特典になったら続きも視聴しようと思っている。(せこい)

岩くつ王 (10歳までに読みたい世界名作)

岩くつ王 (10歳までに読みたい世界名作)

 

 

「15歳の春。僕がはじめて憧れた人は、復讐鬼だった」 

アルベールを主人公にしたのは、上手いなあと思う。

 

 

個人的なベスト2

「にんじん」  ジュール・ルナール

現代でいうところの毒親案件、家庭内カーストの物語。

「にんじん」は前に、感想記事を書いた。

www.saiusaruzzz.com

そういう境遇の中で「いかに強かに立ち回って生きるか」という点に、自分は共感した。

読書感想文の課題としては薦めづらい部分もあるけれど、似た読み味の小説がない名作なので読んだことがない人には読んで欲しい。

 

 

「飛ぶ教室」  エーリッヒ・ケストナー

 貧しいが優等生で熱い正義漢のマルチン、腕っぷしが強く弱い者に優しいマチアス、小柄で弱虫、女の子のような容貌のウーリー、大人びた物静かな文学少年ヨーニー、皮肉屋でひねくれているが繊細なセバスチアンの五人の少年の寄宿学校での生活を描いた群像劇。

当時読んでいた児童文学の中で一番好きだ。

ウーリーの奮起やマルチンの家の貧しさの問題、禁煙先生と正義先生の友情など、順番をつけるのが難しいほどどのエピソードも面白い。

アニメ化や漫画化したら絶対に受けると思うんだけれどな。

学校同士の小競り合いによる暴行、拉致監禁の描写や、寄宿学校における上級生から下級生への洗礼、ウーリーに対するイジメ描写などがあるから厳しいのかもしれない。

角川つばさ文庫のイラスト、すごく好みだ。セバスチアンがまさかの眼鏡キャラ。   

www.saiusaruzzz.com