歴史に「もしも」はないと作品中でも書かれているけれど、これを考えてみたくなった。既に考えている人がいると思うけれど、他の人の考えを読む前に、まずは自分の考えをまとめてみたい。
バーミリオン星域会戦時の状況
バーミリオン星域で、ラインハルトの艦隊とヤンの艦隊が交戦中。
途中でミュラーが六割の兵力を以って参戦するも、再びヤンの艦隊がラインハルトを追いつめており、ラインハルトは旗艦を捨てて逃亡することを拒否。このままいけばラインハルトは、確実に戦死するという状況。
一方、自由惑星同盟の首都ハイネセンは、ミッターマイヤーとロイエンタールの軍によって占領され、最高評議会議長トリューニヒトと停戦を合意。トリューニヒトがヤンに停戦命令を出した。
作品中ではヤンは停戦命令に従ったけれど、ヤンが命令を無視する、もしくは作品内でその可能性が語られていたように、命令を受け取ったオペレーターが独断で握りつぶしていたらどうなっていただろう。
ラインハルト戦死直後の動き
同盟側はハイネセンを占拠されているため、帝国側の動き次第の対応になる。
まずは帝国側から考える。
政治的な決断をできる状況ではないので、ミッターマイヤーとロイエンタールはとりあえずハイネセンの住民の安全を保障する代わりに一時停戦を申し入れる。
その後、急ぎ他の提督たちに連絡を取り、イゼルローン経由でオーディンに帰還する。
他の提督が従うか? というと、ビッテンフェルト辺りは敵討ちと言ってバーミリオンにいるヤンと戦おうとするかもしれない。(そこまで考えなしではないとは思うが)
ヤンにとっては戦略上無意味な戦いなので、適当にいなしつつハイネセンに帰還。ビッテンフェルトがヤンを討てば局面は変わるが不可能だろう。逆にビッテンフェルトが戦死する可能性のほうが高い。
ラインハルト戦死の時点で
・ラインハルト
・オーベルシュタイン
・ミュラー
が死亡していると考える。
イゼルローンにはルッツをそのまま残し、フェザーンは一時放棄。
オーディンに残っているメックリンガーとケスラーと合流。
オーディン帰還後の動向
当面は、皇帝の座についているカザリンに表向きは忠誠を誓う。ただ、ゴールデンバウム王朝の皇帝はローエングラム一派(仮)の精神的主柱、真の忠誠の対象にはなりえない。
ミッターマイヤー、ロイエンタール、マリーンドルフ親子の四人で話し合って、ローエングラム一派(仮)の象徴はアンネローゼにお願いする。
組織がまとまるには説得力と吸引力のある何かが必要で(カリスマというのは、これを無条件で発揮できる人だと思っている。)どれほど能力があってもミッターマイヤーやロイエンタールには務まらないし、他の人間がついてこない。
「ローエングラム公が死んで、彼に妻子、とくに後継者となる男子がいた場合、部下たちはその子をもりたててローエングラム王朝をつづけていくことが可能です。(略)彼が死ねばローエングラム体制は終わりです。部下たちの忠誠心と団結は、求心力を失って空中分解せざえるえません」
(引用元:「銀河英雄伝説」5巻 田中芳樹/徳間書店)
「ローエングラム公がお倒れになれば、我々は指導者を失い、忠誠の対象を失う。これ以上、誰のために戦うのかということになる」
(引用元:「銀河英雄伝説」5巻 田中芳樹/徳間書店)
血縁による継承というのは組織がしっかりした能力主義の社会においては馬鹿馬鹿しいけれど、混沌として確かなものがないときには唯一の説得力になりうる。
ラインハルトが死んだ後のローエングラム一派には「求心力となるもの=血縁」がないからこそ、ヤンはラインハルトを倒せば良いと思っていた。これは敵味方にどちらにとっても、自明のことだった。
アンネローゼの性格からして固辞するだろうが、他に方法がないので、表には一切出てこなくて構わないという条件で押し切るしかない。
ラインハルトがアンネローゼのことを崇拝していたことはみんな知っているから、将兵も忠誠の対象として受け入れやすいと思う。
この辺りはヤンの死後、フレデリカがイゼルローン共和政府の代表になったことと似ている。
アンネローゼが結婚して子供を産んでくれれば、カザリンからその子に皇帝位を禅譲してもらう。アンネローゼは結婚は受け入れないだろうから、遠縁の子を探し出して、アンネローゼの養子にする、というほうが現実的かもしれない。
帝国国内には有力な対立勢力がいないので、ここまでくれば国内は安定すると思う。
オーベルシュタインが生きていれば、血で血を洗う闘争になっただろう。オーベルシュタインは自分の直接指揮下の兵力を持っていなかったけれど、謀略でミッターマイヤーや他の提督なら陥れられそうだ。ロイエンタールやヒルダは、オーベルシュタインほど露骨な手は使えなさそうだから、案外互角の政争になるのではと思う。
ヤン帰還後のハイネセンの動向
同盟側は、帝国よりももっとすんなり収まりそうだ。
ヤンはハイネセンに帰還後、しばらくは軍隊にとどまる。退役すると、嫌でも選挙に担ぎ出されるからだ。
トリューニヒトは停戦命令を出す前に、アイランズとビュコックと明確に対立し、しかも地球教徒と手を結んで二人を拘束している。
トリューニヒトが想像した通り、市民の憤激と憎悪は、ラインハルトよりも、このように屈辱的な和約をうけいれたトリューニヒトへと鉾先を転じつつあった。
(引用元:「銀河英雄伝説」5巻 田中芳樹/徳間書店)
これは正規ルートの和約後の状況だが、雲隠れをした時点で既に市民の支持を失っていると考えてよいと思う。公職を辞任どころか、ハイネセンにもいられないだろう。
ハイネセンを脱出して再起を図ることになる。色々な情報を持っていると思うので、しばらくは地球教徒が匿ってくれるだろう。
既に元帥になっているヤンの功績に報いるためには上のポストを空けるしかないので、名ばかりトップだったドーソンが辞職する。
ビュコックが統合作戦本部長になり、ヤンが宇宙艦隊総司令官、アイランズが暫定的に最高評議会議長代行の座につく。次の選挙で、恐らくアイランズが当選。軍部の支持もあるので当選するだろう。
レベロ、ホアン・ルイが入閣、シトレも政界入りするかな? 理想的な布陣だ。
レベロの未来も大幅に変わっていたと思う。切ない。
フェザーンは帝国軍の撤退後、ルビンスキーが返り咲くんじゃないだろうか。ポルテックでは対抗しきれない。
まとめ
銀河帝国
皇帝カザリン統治下だが、実質ローエングラム一派による支配。
禅譲によりアンネローゼの養子が皇帝になり、グリューネワルト王朝が開かれる。
国務尚書・マリーンドルフ伯
軍務尚書・ロイエンタール
宇宙艦隊総司令官・ミッターマイヤー
この辺りは、ローエングラム王朝とほとんど変わらなそう。
この状態で、ロイエンタールが反乱を起こすか? と言われると、個人的にはアンネローゼの子供だか養子だかが皇帝位につき、国内が安定したところで起こすような気がする。
自分はロイエンタールは野心家ではなくロマンチストだと思っているので、相手が弱っているときに皇帝位を簒奪するという「美しくない」ことはやらないと思う。ラインハルトとロイエンタールはこういうところも似ている。(結果と同じくらい方法にこだわる)
ロイエンタールに対しての自分の考えはコチラで書いています。よかったらどうぞ。
自由惑星同盟
最高評議会議長・アイランズ
統合作戦本部長・ビュコック
宇宙艦隊総司令官・ヤン
お互いにしばらくは国内を安定することに忙しく、外征どころではない。
皮肉にも、ヤンが民主主義の精神を無視すれば、ヤンがイゼルローン攻略後に望んだ「一時の平和」が来たのではないかと思う。
こういうアンビバレンツの中に生きているからこそヤンなんだけれど。
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