Amazonプライムビデオで放映されている、2003年の米ドラマ「カーニバル」シーズン1を観た。
世界恐慌後のアメリカ南部の話
「カーニバル」は、世界恐慌後のアメリカの南中部、中西部が舞台の物語だ。
砂嵐が吹き荒れる不毛の地帯で母親と二人暮らしをしていた主人公ベンが、旅の「カーニバル」一座に拾われるところから物語が始まる。
ドラマ「カーニバル」の世界は過酷だ。
どの街に行っても人々は貧しく、時々吹き荒れる砂嵐に悩まされている。4話「吹き荒れる砂嵐」で起こる砂嵐は、画面外から見ていても恐怖を感じるすさまじさだ。
「カーニバル」一座はそういう貧しい土地で、芸を売り、時には性を売り、何の保障も希望もなく街から街へ渡り歩く生活をしている。
「カーニバル」で生まれ育ったソフィーやリビーの閉塞感と人生への絶望は、見ているだけで息苦しさを感じる。
この砂嵐は大規模な農業開拓が原因であり、もともとは平地だったところを開墾した弊害としてこのような土地になってしまった。また世界恐慌、農業の機械化により、仕事がなくなり、農業難民のような人が増え、カリフォルニアへの移住なども始まっている。
こういう背景を感想欄で説明してくれている人がいて助かった。
こういうことが分からないと、主人公のベンがなぜ病気の母親と二人きりであんな不毛な土地に住んでいたのか、あんな場所に住む二人になぜ銀行が金を貸し、取り立てにくるのかがイマイチ理解できない。
ベンが子供のころは、あのあたり一帯は農業地帯だったのだろう。
苛酷な生活がダークファンタジーを彷彿させる
このドラマは好みがかなり分かれると思う。
シーズン1の物語の展開は「怒涛の展開」というには程遠く、思わせぶりな描写と日常的な生活の描写、カーニバル内の人間関係にほとんど費やされている。
自分の中では「ベルセルク」の断罪編で、ルカ一行の日常とモズグスの日常を交互に見せられる物語というイメージだ。
「カーニバル」は現実が舞台の物語だが、ダークファンタジーのような貧しく苛酷な世界に生きる人たちの日常、彼らが普段どのように過ごして生きているか、という詳細を見ている気持ちになる。
その日常が細部まで作りこまれており、自分もその世界で生きているような錯覚に陥りそうになる。
シーズン1の前半は、登場人物の紹介も兼ねているせいか若干進行が遅い。前半はジャスティンサイドのほうが面白く、相対的にベンサイドのほうは見ていて少し退屈だ。
やや頑固なところはあるが、真っすぐで理想に燃える牧師ジャスティンに対する違和感、理想が狂信に変質していく様子は、正にモズグスを見ているようでワクワクした。
ジャスティンを演じている俳優もいい。大柄で迫力があり、何をしでかすか分からない雰囲気がある。
ドーラ・メイが殺される6話辺りから、ベンサイドも急激に面白くなる。この辺りから観るのがやめられなくなった。
色々な人間がただ好き勝手に寄り集まっているだけのカーニバル一座が、ひとつの世界である、ということが分かるからだと思う。
カーニバルの内部の人間関係も、自分の身近なものとして感じられるようになる。それぞれが好きに生きているように見えても、その世界がいかに狭く、色々なしがらみを持っているかも体感できるようになる。
カーニバルの外からくる客ではなく、中で生きる人間として登場人物たちを眺め、物語展開に接するようになり目が離せなくなる。
ベンやジャスティンの謎も気になるし、二人の邂逅や対決の行方も気になる。
だがそれ以上に、この過酷な環境の中で過ごす日々の日常や登場人物たちの気持ちの揺れのほうが気にかかる。そういうものをずっと側で見ていたい、と思わせるドラマだ。
シーズン2で話が綺麗にまとまるのか
シーズン2は評判がイマイチなんだけれど、二話まで見て話も盛り上がって面白いのに、何でだろう?という気持ちが強い。
欲を言えば、ジャスティンには自分の正義を絶対的に信じる狂信者でいて欲しかった。
アイリスが狂信者ポジションなのか。
最初の頃のいいお姉さんぶりが嘘のように、どんどん怖くなる。子供時代のアイリスをやっている子、メチャクチャ美人だな。
ジャスティンが子供だったころの自分に出会って、自分自身に殺されて生まれ変わる、という発想も面白かった。あれの永劫ループが続くと考えるとかなり怖い。
列車事故で二人しか生き残らなかった、というのもアイリスが起こしたのか。それともジャスティンの力なのか。
この辺りもシーズン2で明らかになるのかな。
シーズン1は登場人物の背景説明と謎のばらまきに終始していたが、シーズン2はそれを基にしてどんどん物語が盛り上がって、進んでいく感じだ。
元々はシーズン6までやる予定だったのが続きが作れなかったと聞いたけれど、なんで人気がでなかったんだろう。尻すぼみな展開だったらどうしようと少し心配だ。
満足がいくような終わり方になっているといいな。
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