うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

「シュヴァルツェスマーケン」を読んで、萌え絵は意外と扱いが難しいと思った。

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マヴラブのスピンオフ「シュヴァルツェスマーケン」を読んでいる。

まだ2卷までしか読んでいないが、面白い。国が滅亡寸前のこんな状況でも、権力争いに終始する愚かさや、そういう上層部の思惑で戦場の兵士が死んでいく構図は現実でもよくある話なので読んでいて辛い。

状況自体は苛酷で絶望的なのだが、メインキャラが強く真っすぐなキャラが多いので意外と読み味は爽やかだ。

まだ話が序盤なので、読み終わったら感想を書きたい。

 

ただこの本、ひとつ問題が。

 

イラストの関係で、外で読みづらい。

絵が可愛いのはいいんだけれど、問題は衛士強化装備のイラストやカラーイラスト。

いわゆる乳袋どころか、乳首のライン(←これだけでもどうにかならなかったのか)もはっきり出ているので外では絶対に開けない。

 

強化装備がどうしてこういう形状なのかは、設定の中で一応理由がある。

ただ個人的には、読み手にエロを提供したいだけなのに「女性の羞恥心をなくすため」という設定を設けたことに違和感を覚える。「苛酷な状況だから仕方ない」という設定を作って、物語外の人間がそういう過酷な設定の物語で生きている女性をエロ目線で見る、という構図が受けつけない。

性的欲望やエロを楽しみたい気持ちは否定はしない。むしろ性的欲求そのものを否定したり、悪であるかのように糾弾する考えのほうが恐い。

ただ「設定でこうなっているんです。だから女性が圧倒的に多いんです。裸に近い恰好をしているのにも、設定で事情があるんです。そういう恰好で羞恥心を感じないのにも、理由があるんです」という言い訳(だよな)はどうかと思う。

それなら何の理由もなくエロい恰好をしていて、「こんな状況下でエロい恰好をしている不自然さの根拠は、単純に読み手がエロいものを見たいからという事実」を、書き手も読み手も引き受けるほうが良かった。

 

その設定がスピンオフ作品にまで波及して、誰かにすすめるどころか、人前で本すら開けないのでさらに苛立ちがつのる。

文脈や中身関係なく、乳袋絵に嫌悪を持つ人がいて、ゾーニングして欲しいという話まで出てくると、自分は何とも思ってなくとも電車や店などでおちおち読めない。

萌え絵に関しては排除を正当化するような論自体は「?」と思うが、見たくない、子供などに見せたくないという気持ちは分かるので、あまりおおっぴらに開きたくない。

「シュヴァルツェスマーケン」のために、持ち運び用のブックカバーも購入した。

持ち運びするとカバーが擦れてきたりするけれど、その対策もできるので重宝している。 

 

「シュヴァルツェスマーケン 」は、内容的には戦場のシーンが多く、性的描写はエロそのものを目的としたものはなく、物語に必要なものに限られている。

国家が滅亡寸前、いやむしろもう滅亡が目に見えている極限の状況で、それでも希望や理想、勇気を捨てない人々がどう戦うかどう生きるかということを書いた物語なのだ。戦記ものとしてもよくできている。

できればもう少し写実的なイラストで、一般書に近い形で出して欲しかった。

 

前に物語おける自分が考えるリアルライン(造語)の話をしたけれど、「シュヴァルツェスマーケン」は物語のリアルラインとイラストのリアルラインが噛み合っていない。

単体で見れば可愛いイラストだし、観ていて楽しい。アイリスディーナなど登場人物たちも「可愛い」「格好いい」「美しい」と思う。

でも申し訳ないけれど、小説の内容と組み合わせてみた場合、物語の重さや緊迫感をむしろ損ねてしまうもののように思えてしまう。

この状況下でそんな長い髪の毛を結ばないのか? 動くとき邪魔じゃないのか? とか余計なことが気になって仕方がない。一人ならばともかく、主要登場人物の多くがそうとなると、話の内容は極限状態のリアルさを書いているのに、イラストは見た目優先という乖離が生まれてしまう。(外見の設定は元からあるものだと思うので、イラスト単体の話ではなく内容とのマッチングの話。)

イングヒルトを介錯するシーンでアイリスディーナのアップのイラストを入れるなど、重いシーンを読んでいるときに、「強化装備姿のアイリスディーナを見よ」と言わんばかりのイラストの挟み方は、物語自体を楽しんでいる読み手のことをないがしろにしているようにすら思える。

作り手側が読み手に、冷や水かけているようなものだ。

 

話の内容よりも萌えを強調している作りをしていると、例えば萌え絵に興味がない人や多少偏見を持っている人に薦めにくい。

「そういう人には読んでもらわなくてもいい」という風にターゲットを絞るのもアリだが、「シュヴァルツェスマーケン」は内容は萌えの要素はほぼなく、むしろそういうものに興味がない層にアプローチしやすい内容になっている。

逆にエロや萌えが好きな層には、イラストは魅力的だが話の内容が物足りない。

イラストは萌えを追求し、内容は萌え要素がほぼない(それどころじゃない)ので、どの層を狙っているのかまったく分からない。

 

萌え絵は決して悪いものではないのだけれど、ネットでも論争が巻き起こったように、好き嫌いがかなりはっきりしている。

マブラヴ本編の感想を読んだ限りは、一番評価されているのはストーリーだと思う。「萌えやエロ要素がないから、スピンオフは読まない」という人は、少ないのではないか。とするとスピンオフ作品に萌えの要素を入れるのは、単純に「萌えに興味がない、受け入れがたい層」を遠ざけるだけでメリットがない気がする。

 

もっともっとマブラヴ世界の作品を読みたい、見たいと思っている身としては、色々な人に読んでもらってファン層を広げて、萌えやエロという枠を超えた様々なジャンルの物語を作って欲しいと思うのだ。(その中で萌えやエロを題材にした作品を作るのも、もちろんアリだと思う。)

ファン層が広がれば、マブラヴの世界観をシェアワールド化して、もっと色々と話が作れるのでは、と思う。

月面戦争やパレオロゴス作戦を題材にした作品が見たい。

できればひとつの世界観が多ジャンルの物語を排出する、というモデルケースになって欲しいし、マブラヴの世界観ならそれが可能なのでは、とも思うのだ。

シュヴァルツェスマーケン 紅血の紋章/殉教者たち ダブルパック

シュヴァルツェスマーケン 紅血の紋章/殉教者たち ダブルパック

 

 アイキャッチ画像にも気を遣いますよ…。

 

 バラライカが好きになった。