うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

いしたにまさき「ネットで成功しているのは『やめない人たち』である」の感想。

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何を以って「ネットで成功した」と思うかはかなり曖昧だし、人によっても違う。

自分の名前が知られたい、という人もいるだろうし、自分と同じ趣味や考え方の人とつながって安定したコミュニティを作りたい人もいるだろうし、自分の考えを広めたいという人もいるだろうし、稼ぎたいという人もいるだろう。

「各々が思い描くこうなりたい状況」を「成功」という言葉で表して、多くの人にアプローチできるようにしたのだと思う。

 

このタイトルを自分なりに脳内変換すると「『ネットで成功するしない』という土俵にのるためには、活動を続けることが最低限必要だ」(売れなさそうなタイトル)となる。

三年くらい続けてようやく何かしらの手ごたえがあるかないかだと思っていたので、一年も続けていないのに「結果が出ない」という人の気持ちがよく分からなかった。

短期間ではっきりとした結果を継続的に出せるような力を持っているならば、これまでの人生で既にそれなりの結果、その結果から導き出した自分なりの戦略を持っているだろう。

自分なりの方法論を試したが結果が出なかった、という話なら分かるのだけれど、「他の人が、毎日更新を続けろと言っていたからやったのに結果が出ない」とかだとけっこうびっくりする。

 

「続ける」ということは、とても大変なことだ。

だが今までの人生で特に他人から注目されることもなく、社会的に大成功しているわけでもなく、高額な金銭を稼げるわけもなく、際立った才能も能力もないということが証明されている自分のような人間にとっては、「続けるという大変なこと」が最も楽で現実的な方法だ。

どんなジャンルのどんな才能が溢れている人でも「続けている」。

この「続ける」も自分なりの「続ける」でいいのではと思う。

大変な時期は誰にでもある。そういうとき、Twitterだったら一日1ツイートだけする、などでもいいと思う。

三年くらいは「大変だから、結果が出ないからやめる」と言わずに続けてみないと、有効なフィードバックも得られないのでは、と個人的には思っている。

 

ということを「やめない人たち」は、何となく肌身で感じているのではと思うのだ。

「成功する」などはまるで考えておらず、楽しいからやっている、暇つぶしにやっているという人でも、何となく自分の生活のインフラになってきたなとか、自分の知らない人で自分を認知している人が出てきたとか、ネットでの友人知人が増えてきたとか、月々の収入は増減があるけれどトータルで見るとそれなりに入ってくるようになってきたとか、そういう「ただ漫然とやっている」というだけではなく、反応や結果みたいなのが「それなりに継続して返ってくる」と思うようになる、「成功」とまでは言わないまでも「手ごたえ」みたいなものが出てくるのが三年くらいなのではないか。

 

三年コンスタントに続けていて、そういう「手ごたえ」みたいなものすら得られない、という人はむしろ少ないのでは、と自分は思う。

 

色々な人が「続けろ、続けろ」というのは、恐らくそういうことだ。

続けないと、ネットでの活動は他人の評価の俎上にすらのらない。

しかし三年続けていれば、成功の爪先の手ごたえくらいは誰もが感じるようになる。(もちろん、そのあと成功するとは限らない。)

抜きんでた能力や才能を持っているという自負がなければ、大変だろうが何だろうが続けるくらいしかできることはない。

凡人が取りうる唯一の方法である「続けること」すらできないのであれば、ネットで何かを望むことは難しいのでは、というのが自分の意見だ。

もちろん特に何も望まず、好きなように活動するのもいい。成果や反応を気にせず自分の好きなことを自分のペースで追求できるところが、ネットの一番いいところだと思っている。

 

この本はそういう観測範囲内でのことや自分の体感で考えていたことを、データや実際にネットでそれなりの成果を上げている人へのインタビューを元にして書かれている。

「一年目は種まき期間、二年目が熟成期間、三年目が刈り取りの期間」などはよく見るブログ論だけれど、それを実際にやってきた人たちの言葉やデータを基にして、改めて結論付けているところがこの本の最大の読みどころだ。

「なぜ、三年なのか」ということも、アンケートをもとにして導きだしている。

 

こういう方法論や物事の考え方は、ネットとかリアルとか何かとかは余り関係なく、すべてに通じる部分がある。

以前読んだ「YouTubeで食べていく」もそうだった。「動画投稿やYouTuberの世界云々」の話ではなく、最終的に行きつくのはもっと普遍的な、考え方の問題だ。

www.saiusaruzzz.com

自分はこの辺りを勘違いしていて、「ネットの世界は変化が早いから、初版から年月がたったものは読んでも仕方がない」と思っていた。

 

本書も初版は2010年ともう十年近く前なのだけれど、読んでいて「なるほど」と思う部分はたくさんある。

これを読んで、自分が何でTwitterでの情報発信が苦手なのか分かった。(情報収集には、重宝しているけれど。)

そういう「こういうことをネットで求めている自分」がどういう方法で、どういう方向性でネットで活動していくのか、ということを考えるにはとてもいい本だと思う。

そういうことを考えていなくとも、単純にネットの世界に興味がある人には面白く読める本だと思った。