うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

仲間由紀恵・阿部寛主演ドラマ「トリック」エピソードごとの感想

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第1話

第1話

 

 Amazonプライムビデオで、ドラマ「トリック」を見て、今さらハマっている。

劇場版を見て余り面白いと思わなかったので、長年「自分には合わないドラマだ」と思っていたが、ドラマ版を見たら滅茶苦茶面白かった…。

以下エピソードごとの感想と総評。「★5」が満点。

 

「トリック 第一シリーズ」

第一シリーズは、トリック自体はそれこそ「ただのトリックじゃないか」と言いたくなるものが多い。

その馬鹿馬鹿しさを続けたところに、「人が不思議だと思うことの正体は、ごくありきたりで単純なこと」というこのシリーズの根幹を支える発想が隠されているように思えてすごく良かった。

 

「母之泉」★★★☆

展開が色々なところに飛んで面白かった。

ライトなようで死人が出る重さがある、死人が出るような重さがあるのに、その重さを引きずらない(主人公陣でさえ)不気味さにハマった。

今後のトリックの各話のモデルケースとして、上手くできているなあと思う。

 

「まるごと消えた村」★★★★

とてもよくできたエピソードだと思う。

どのトリックも考えればすぐに分かるのだけれど、話の構図が反転している(犠牲者だと思った村人が、実は首謀者)など「目に見えるものに騙されてはならない」という「トリック」らしさが出ている。

前回の「母」や三井のように自分の「力」に殉じる能力者たちと、そのトリックを見破れば相手が死ぬとしても、トリックを見破らずにはおれない奈緒子という「トリック」全体の構図がはっきりした。

 

「パントマイムで人を殺す女」★★★★★

現時点で「トリック」のエピソードの中で一番好き。

真相の単純さと、ストーリー全体の血生臭さと陰惨さの落差にやられた。トリックの肝が「双子だった」という馬鹿馬鹿しさすら、視聴者を油断させるための仕掛けだった、という点には恐れ入った。

美幸の底が知れない不気味さと非情さに恐怖し痺れた。こういう話をもっと見たい。

 

「千里眼の男」★★★☆

前回の「パントマイムで殺す女」と同じ作りだな、と思ったら脚本家が同じ人だった。

これも桂木の最後のひと言がいい味を出している。

 

「黒門島」★★

第一シリーズを通して伏線を張ってきた割には、出来が今いちだった。

伏線自体もそれほど巧く張れていたわけではなく、奈緒子の父の死の謎、黒門島の謎、奈緒子の母親の謎などすべてが中途半端な印象。これだったら奈緒子の両親の秘密に絡めなくても良かったのでは、と思う。

ここまで謎を引っ張ってきたが、上手くまとめきれなかったなという感想だ。

偽結婚式のときに流れた「月光」が良かった。

 

「トリック 第二シリーズ」

第一シリーズに比べると、トリックの内容はかなりひねってある。

ミステリーに寄せてきたが、「トリック」らしさは失われておらず、人気が出てもこのドラマの何が受けているのか強みなのかを見失わない姿勢がいいなと思う。

 

「六つ墓村」★★★

第二シリーズの導入としては、可もなく不可もなくという印象。細かいところは相変わらず面白いのだけれど、メインのストーリーがやや平凡で余り興味を惹かれなかった。

面白いんだけれどね。

 

「100%当たる占い師」★★★

これも面白いんだけれど……というイメージ。「六つ墓村」と同じで、謎に満ちた不気味な導入が、平凡で現実的な話にまとまってしまう、というのが恐らく自分の好みに合わないのだろうなと思う。

「面白いのだけれど、予測以上のものが見られない」というもどかしさを感じる。

 

「サイ・トレーラー」★★★★☆

こういうのがもっと見たい、と思った話。

どう見てもうさん臭そうな悪役、という風貌の深見が実は、という話。

娘の復讐のために何年も機を熟すのを待ち、奈緒子のような人物と出会う運命を待ち、そして機が熟したら復讐のために他の人間が快楽殺人鬼に殺されるのを見過ごし、計画を冷静に進める。快楽殺人鬼である小早川よりも、ヤバい奴な気がする。

こういうヤバい奴の壮大な計画に、主人公がほんの少し関わっただけ、という構図が好き。物語の大枠が予測から大きく外れたり、構図が逆転したりする話が好きなんだろう。

 

「天罰を下す子」★★☆

話がだいぶとっ散らかっていた感がある。「笑顔がこぼれる会」が唐突に出てきたので、本筋とのつながりが分かりにくかった。

あと上田が恵美に騙されていることを奈緒子がはっきり(言葉は直接的ではないが)指摘するなど、予定調和感が強い。こういうのは言葉で説明してはダメなのでは。

光太の祖母が、殺人にまで行動を飛躍させた動機も納得しづらい。もう少し、心の弱さなり、光太との関係性なりを掘り下げたほうが良かったのでは、と色々と不満が多い。

 

「妖術使いの森」★★★☆

ミステリーの古典的なトリックが満載のエピソードで、逆に楽しめた。「喧嘩している二人を見たら、実は組んでいると思え」はミステリーの王道だ。

ただ黒門島関連はそんなに深く取り上げる気もないのに、雰囲気作りのためだけに絡ませるので常に余計に見えてしまう。次回への引きなのか。

 

「トリック 第三シリーズ」

「言霊で人を操る男」★★★

悪くはないんだけれど、平凡な出来。蒔田光治の脚本は、「トリック」という題名に反して色々なものが「見たまま」という印象がある。

玄奘の設定はもうひとひねりあるのかと思ったが、ただ心の隙を突かれて、踊らされ利用された人で逆にびっくりした。

 

「瞬間移動の女」★☆

初めのほうで「芥川が共犯だと思うけれど、それだと『言霊で人を操る男』と同じ構図だからさすがにないよな」と思ったら、そのまさかまさかだった。

さすがにこれはない。

トリックがある程度被るのは仕方ないけれど、直前の話と同じネタを使い回すというのはいくら何でもひどすぎる。少なくとも見せ方を工夫して欲しい。鏡のネタは「まるごと消えた村」で使っているものだしなあ。ネタ切れか?

ただ「スリット美香子」のキャラが良かったのと話のまとまりが良かったので、「言霊で人を操る男」と順番が逆だったら、こちらの評価は高かったと思う。

放送順が逆だったら本作が★4で「言霊で人を操る男」が★1かな。

 

「絶対に死なない老人ホームの謎」★★★★

面白かった。事件が解明しても、最後まで本音がどこにあるのか分からない赤地の不気味さ、得体の知れなさが一番のトリックだった。

 

「死を呼ぶ駄洒落歌」★★★★☆

「3」の中では一番面白かった。構図としては「1」の「天罰を下す子」と同じなのだけれど、こちらのほうがずっといい。

三姉妹が全員哲也を好きになる、という不自然さも、亀山家の閉鎖性の不気味さを表していていい。親族内の殺人、というのは何だかんだ言って話が綺麗にまとまりやすいのかもしれない。

 

「最終章 念で物を生み出す女・解かれた封印 霊能力の真実」★★★★☆

黒門島関連なのであまり期待していなかったが、いい意味で期待を裏切ってくれた。シーズンの最後を締めるのにふさわしい、面白さだった。

親子愛に見えて実は、という意外さも良かったし、黒門島の話に収束していく流れも自然だった。霊能力と物理学という相容れない分野で生きていながら、協力し合ってきた奈緒子と上田の今までの関係の総決算という感じも良かった。

特に文句のつけようがないエピソードだったけれど、岸本の人柄をもう少し掘り下げても良かったかな。

母親への慕情を隠していると見せかけて、母親だと悟った瞬間に瞬時に利用する黒さを見たかった。

前回と今回で蒔田脚本を見直した。

 

ドラマ版1~3までのエピソード個人的ベスト5

5位「まるごと消えた村」(1)

「トリック」らしさがよく出ているエピソード。このあとも多様される、「物語の構図が反転する」感じがすごく好き。

 

4位「最終章 念で物を生み出す女 解かれた封印」(3)

エピソード単体としても面白かったけれど、何より今まで続いていた「霊能力はあるのか」という奈緒子の個人的な葛藤や奈緒子と上田の関係、黒門島関連の話をすべて綺麗に収束させた手際に恐れ入った。

 

3位「死を呼ぶ駄洒落歌」(3)

単純にすごく面白かった。関係性クローズド・サークルはそれだけでワクワクする。

 

2位「サイ・トレーラー」(2)

筋が二転三転して目が離せなかった。深見の狂気とも呼べる愛情が印象的。

 

1位「パントマイムで人を殺す女」(1)

映像的インパクトや内容の非情さの衝撃が強く良かった。

「トリック」のエピソード、という枠から逸脱した出来だと思う。

実際は妹に手を汚させているという徹底ぶり。恐ろしい。

 

総評

とても面白く楽しめたのだが、受け入れがたかった点が二点ある。

ひとつは奈緒子、上田、矢部に対する身体的な特徴のいじり。

この当時の深夜放送だった点も考えれば仕方がない部分もあるが、自分はそういうものが好きではないのでしつこくそのネタが用いられるのにはうんざりした。矢部に対するイジリも現在の状況だとちょっと厳しいものがある。

人の身体的な特徴や属性で笑いを取るのはもう古く、むしろ不快感を招くという考えがここ数年で急速に広まったんだなあと思った。

ふたつめは奈緒子が不美人設定である不自然さ。

ルッキズムに支配されていない世界観ならともかく、むしろその傾向が強いのに、いるだけで拝みたくなるほど美人な仲間由紀恵が美人の扱いをされないのは、いくら何でも無理がある。

もちろん「作品内のルール」はあるので、メタで見てどれだけ美人でも「作品内では美人ではない」というのはアリだ。

ただ漫画などでは受け入れられても、ドラマでは仲間由紀恵がアップになるたびに見惚れてしまうので、そのルールを自分の中で維持するのが難しい。

それが維持できないと物語世界と自分の感覚の乖離が生まれ、その中にすんなりと入れなくなってしまう。(物語世界全体を不自然に感じてしまう。)

「ごくせん」のように「美人ではないアイコン(あくまでアイコン)」として、眼鏡やジャージなど小道具を用いても良かったのでは。

今となってはやっぱり「山田は仲間由紀恵」となるが、それでも山田が「不美人扱い」されるたびに「えっ?」となり、そこで思考が一瞬止まってしまう。

 

それ以外は、好みや出来不出来があるものの、つまらない、見ていて退屈と思えるエピソードはひとつもなかった。シリーズ全体の登場人物の設定や背景がしっかりして、細かいネタが楽しめるからだろう。

世界観が確立しているシリーズは強いな、と改めて思った。

トリック新作スペシャル3

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