うさるの厨二病な読書日記

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東元俊哉「テセウスの船」八巻までの感想。もうすぐ最終回&ドラマ化おめでとう。

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テセウスの船(8) (モーニングコミックス)

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6月21日に「テセウスの船」の第八巻が発売した。

27日発売の本誌で最終回のようだ。

八巻で「加藤信也」という新しい登場人物が出てきたので、もう少し延びるのかなと思ったら終わるようだ。

 

八巻を読み終わった時点での妄想。

この「加藤信也」は、八巻を読み終わった時点では「正義」では、と思った。

「テセウスの船」は未来を変え続けることで、「心」が「正義」になる話なのでは、と予想していた。

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(引用元:「テセウスの船」5巻 東元俊哉 講談社)

 

ある時点で心が「佐野がつかまらず、家族が誰も死なず、由希と結婚できて未来が生まれる」「正義ルート」にたどり着けることに気づく。そのルートに行くために、みきおを洗脳して「みきおが犯人だと特定される過去」に改編しようとしていた。

最終的には「正義」と「心」との存在を賭けた戦いになるのでは、と思った。

 

最初は過去に関わることでどんどん事件そのものが変質していくから「テセウスの船」かと思ったが、一巻の冒頭で「これ(テセウスの船)が人間だったらどうだろう」と言っている。

「テセウスの船」に見立てられているのは事件ではなく人間だ、ということは最初から述べられている。

 

「何の瑕疵もない幸せな状況の正義」と「過去を変えまくって、家族とのつながりをことごとく失っている心」でも、心のルートを選ぶみたいな話だと思った。

「信也」が「シンになる」という名前というのも、そういう示唆だと考えた。

 

違ったみたいだけれど。

 

我慢できず本誌のネタバレを調べたら(すみません)「テセウスの船」はみきおだったのね。

ちょっとストレートすぎないか、もうひとひねりあったほうがとも思うけれど、綺麗にまとってそうだしいいのかもしれない。

確かに「自分対自分」だと救いがなさすぎる。ましてや佐野が本当につけたかった「正義」という名前を裏切る展開になってしまう。

でもこの展開も見たかったな。心がいい奴すぎるので、暗黒面を見たくなる。

 

まとめっぽい感想とドラマ化への期待

「テセウスの船」でいいと思っているところのひとつは、「いい人」が本当に「いい人」なところだ。

例えば佐野や心、鈴はすごく苦労しているし、たくさん嫌な目にも合っている。それでも世間の人間への憎しみや恨み言を、ほとんど(まったく?)言わない。

こういう経験をしたら人間そのものに対する不信や嫌悪を持ちそうだが、佐野は昔と同じようにまっすぐな人、心や鈴は引け目はあっても他人に対するネガティブな感情はほとんど持っていない。

「善良」という言葉がぴったりくる。

「善良な市井の人」は、意外と創作の主要登場人物では余り見ないので、逆に新鮮だった。

 

特にいいなと思うのが佐野の人物像だ。佐野は「いい人」だけれど、その良さが「普通」から一歩もはみ出ない。

身元不明な心を家に招き入れるところも、逆に心の「未来からきた」という告白を受け止めきれずに怒って追い出してしまうところなど、「小さな村で、周りの人や自分の家族を愛してその人たちを守るために生きてきた人」という人物像がしっかりと出来上がっているところがよかった。

 

そういう人が「村に突然やってきた正体不明の男が、実は未来からやってきた自分の息子で、その息子から近い将来大量殺人が起き、その犯人として自分がつかまる」ということを知らされたときにどういう風に考えるか、どういう反応をするか、そのあとどういう行動をとるか、ということに現実味があった。

 

佐野の人物像を通して、つつましい生活の中で運命に翻弄されながらも必死に生きる普通の人へのリスペクトが感じられるところが、「テセウスの船」の一番好きなところかもしれない。

心も稀にみる好青年だ。漫画でこんなにアクがない主人公も珍しい。

 

ストーリーももちろん面白かったけれど、佐野と心の親子関係や心の由希に対する愛情など、それだけで心温まる要素も多かった。

「骨の髄まで刑事」という感じの金丸もよかった。

 

「残酷な」とか「狂気の」とか、創作では強そうな属性のものに、「善良な普通の人」がそういうものに飲み込まれず屈さずに立ち向かうところがいい。

完結して最後まで読んだらまた感想を書きたい。

 

年代が飛ぶ話だからドラマ化はキャスティングが難しそうだけれど、そのぶん楽しみでもある。

まだまったく情報がないけれど、放送されたら見るつもりだ。

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