うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

【MBTIを用いてキャラ語り】創作における内向感情型について INFP(ロイエンタール)対ISFP(尾形)

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MBTIを用いたキャラ語り。

*創作の中の話に限定しています。専門家ではないので、雑談程度に聞いてください。

参考文献は記事末尾に掲載。

 

内向感情を主機能として使うINFPとISFPのキャラについての、個人的な考え。

内向感情型のひとには、「静かな水は深い」という言葉がいちばんぴったりであると、ユングはいう。

外から見ると控え目で、不親切、無感動のようにさえ見えるひとが、深い同情や、細やかな感情を持っていることがわかり、ひとを驚かすときがある。このようなひとは、正しくはあるが、その場面には不適当な判断によって自ら苦しまねばならぬときがある。(略)

この型のひとは、その深い感情に支えられ、歴史に残るほどの自己犠牲的な行為をしたり、高い宗教性や芸術性を示すこともある。客体との関係があまりになくなると、自分の感情判断を押し通すために、わがままとなり、ときに残忍とさえなる。

 (引用元:「ユング心理学入門」 河合隼雄/河合俊雄編 岩波書店 P22-23 太字は引用者)

 

「銀河英雄伝説」のオスカー・フォン・ロイエンタールをINFP、「ゴールデン・カムイ」の尾形百之助をISFPと考えて語っている。なぜ自分がそう考えるかは下の記事を読んでもらうと嬉しい。

 

ロイエンタールについて

www.saiusaruzzz.com

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尾形について

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尾形は知覚機能は外向感覚を使っているのは間違いないと思うので、ESTPかISTPかもしれないとも思った。

だが、あんこう鍋のエピソードひとつをとっても、T型ならああいう考え方や行動はとらないと思う。

外向思考を使っているならば、恐らく花沢と取引をして母親の世話をさせる方向に動く。内向思考を使っているならば、医師に意見を聞く、自分で母親の症状について調べるなどの方向に動くと思う。

「母親の行動をやめさせるために鳥を取る」という行動に注目すると、その発想はF型だ。

また鶴見の方針で「殺さない方向で」と決めたあとに、勇作を殺した動機が今のところ感情的な暴発としか解釈のしようがないところもF型だと思った点だ。

この記事はとりあえずそういった前提に基づいていると考えて欲しい。

 

内向感情型は「静かな水は深い」と言われるように、一見冷静で理性的に見えるが、その奥底に強い価値観と感情を秘めている。キャラとしては「クールで合理的に見えるのに、よく考えると行動が矛盾だらけで訳が分からない」というタイプが多い。

 

ロイエンタールと尾形のふたつの共通点

自分の中ではこの二人は、大きな共通点がふたつある。

ひとつめは物語内でもクローズアップされているように、「親との関係が人格に大きな影響を与えている」ところだ。

ふたつめは「物語の世界観(価値観)に一人だけ合っていない」ところだ。

尾形に関しては17巻を読んで、「こんなに殺人者であふれかえっている(しかも誰もそれを気にしていない)世界で、なぜ尾形だけが『人を殺して罪悪感を感じない人間がいていいはずがない』などという『普通のこと』を言われるのだろう」と不思議で仕方がなかった。

杉元は主人公として「殺人をした業」を背負っているが、尾形ほどではない。

別の言い方をすれば、ロイエンタールと尾形はいい悪いは別にして、その物語内の世界観の中で「キャラの成り立ちが複雑」だ。

 

ロイエンタールと尾形が違う点

この二人の大きな違いは、本人がこだわっている「親との関係」の把握の仕方だ。

ロイエンタールは上記の記事で述べたように、母親と向き合うことができていない。母親と向き合うどころか、「一般化した女性という対象」にすら個人としては向き合えていない。

それに対して、尾形は自分の感情は感情として、花沢や母親を一人の人間としてかなり正確に把握している。

 

あとロイエンタールは、こういう言い方は何だが、ポエムを吐くことが多い。物事を(特に自分のことを)語るときは、常に露悪的な恰好をつけた言い方をする。

それに対して尾形は物言いが直接的で実務的だ。

これが恐らくINFP(外向直観)とISFP(外向感覚)の大きな違いだと思う。

実際の物事に自分の美意識や価値観に合った可能性を見出し、そこに入り込んでしまうのがINFPであり、物事自体は正確に緻密に把握するのがISFPだ。

これは同じINFPの「オルフェンズ」のマクギリスがアグニカをやたら理想化していたり、「うみねこ」のヤスが空想の中に逃げ込んだりすることにも通じる。

 

これだけだとINFPの悪口のように聞こえてしまうが、そこはINFPの最大の強みでもある。

無味乾燥な下らない現実を美しいもの、時にはおぞましいからこそ惹かれるものに変えることができる豊かな(豊かすぎる)想像力と内的世界の強さ、そんなものは一切うかがい知れない表向きのクールさや物静かさとのギャップこそ、INFPが人を引き付ける点だと思う。

 

十六分型の中でENFPがモテる、というのはよく聞くが、自分は一番モテるのはINFPだと思う。 

一見クールに見えて、命を賭ける、人生を賭けるという激情に他人を深く引きずり込むことができるINFPは確かに魅力的だ。

選ばれた場合、生きるか死ぬかの関係になると思うが。

 

「オルフェンズ」のガエリオや「銀河英雄伝説」のベルゲングリューンを見ても、 INFPにハマった人は、命や人生を賭けるところまで思いつめる。

 

内向感情型にとって外向感情型は、鬼門ではないか説

同じ感情型でも、自分の中にその感情を閉じ込め、自分と他人は違う感情や価値観を持つという前提で相手を尊重する内向感情型と、その場にいる全員や自分が関係する人々に共感と調和を与えたいと望む外向感情型とは向いている方向性が(まさに『外向』『内向』とついているように)まったく違う。

自分の感情や価値観をひた隠しにする内向感情型に、外向感情型は「あなたのことを分かりたい。仲良くしたい」と悪気なく迫ってしまう。行きつく先は内向感情型の暴発、というのは、マクギリスとガエリオの関係が典型的だ。

尾形に「兄様とまとわりつく」勇作も外向感情型だと思う。

内向感情型に下手な角度で近づくと、こういうことになってしまう。内向感情型をわかりたいと思ったら、それこそ「殺す殺さない」の価値観にも、自分自身で向き合わなければならない。

自分独自の価値観を最も重んじる内向感情型は、自分の価値観の善悪是非を、社会的、合理的、普遍的な問題として片づけられるのは耐えがたいと思う。一般論でごまかすこと(勇作も、そういうつもりではなかったのだろうが)は一番やってはいけないと思う。

 

そういう意味では正体を隠してもマクギリスの真意を聞きに行ったガエリオや、訳がわからないなりに「なぜ、そんなに自分を悪く見せたがる?」と本人に聞くミッターマイヤーはだいぶ相手のことを考えているんだなと思う。 

「わからないなら本人に聞く」という単純なことだ。(まあ答えないんだけど)

 

このあたりはポエム的なもので煙幕を張るINFPに比べて、「話が通じそう」と思われてしまうISFPが割を食う部分なのかもしれない。

INFPは「意味はよくわからないけれど、何か感情的に引っかかりがありそう」とわかるが、ISFPは「何も言わないから、納得しているんだろう」と思われがちな気がする。

そう考えると内向感情型が内に秘めているものに余り興味を持たなそうなST型、距離をとって分析しそうなNT型のほうが相性がいいのかもしれない。

 

内向感情型はわかりにくく面倒くさいが、そこが魅力。

書いていて思ったのだが、内向感情型は他タイプに比べてわかりにくく面倒くさい。

考えていることを率直に出さない、どころか、本質や内面のうちほんの欠片程度のものしか表には出していないので、誤解されることが多い。

「本当は色々なことを感じているのに、何も感じていないし考えてもいないと思われる」のが通常運転で、多くの場合、本人もそれでいいと思っている。

内向感情型にとって本当の自分をさらけ出してそれが理解してもらえないというのは、恐らく死ぬよりもキツイ状況なのだ。だから本音が漏れ出てそれを理解してもらえないだろうと感じると、相手を殺したり殺しあう方向に向かう。

人と人はわかりあえるし共感できるしそれがいいことだ、と思う外向感情型が不用意に近づいて、その暴発に巻き込まれるケースが多い。

それこそロイエンタールのようにいきなり反乱を起こしたり、尾形のように「殺すところが見てみたい」と迫ってきたりする。(こういうことを言われることは、内向感情型に選ばれた証だとは思うが、選ばれると突然この地点まで来てしまう)本音で関わろうとしたら、そうとうな覚悟で関わらなければならない。

 

自分は初めて銀英伝を読んだ中学生のとき、ロイエンタールのやることなすことの意味が分からなかった。

なぜ女性不信なのに女性と付き合うのか、なぜあんな勝算のない反乱を起こしたのか、なぜ「誤解だ」とひと言言えば済むのに、自分の部下を道連れして最後まで戦ったのか。揚げ句の果てにエルフリーデを強姦したあげく子供ができたら中絶しろ、には唖然とした。

「言っていることとやっていることがまるで違うじゃないか、何なんだ?」とずっと思っていた。

 

自分にとって内向感情型のキャラは、訳が分からない大きな謎のような存在だ。

「なぜ、そんな考え方をする?」

「なぜ、それをそんな風にとらえる?」

「なぜ、そこでそんな行動をとる?」

「自分は冷静です。平気です」という落ち着いた表情で、矛盾した訳がわからない言動ばかり取る彼らに、「いやいや言っていることとやっていることが全然違わないか」と言いたくてたまらなくなる。

だからこんなに何記事も書いているわけだが。

 

自分自身にすら本音を隠し続けて、自分は傷ついていないという平然とした顔で美学を追求したり、現実を受け止め続ける繊強さと強さが、このタイプの大きな魅力なんだろうと思う。

 

参考文献

MBTIタイプ入門(第6版)

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MBTIへのいざない―ユングの「タイプ論」の日常への応用

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ロイエンタールは道原版が一番好きだな。

銀河英雄伝説 英雄たちの肖像(3) (RYU COMICS)

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