うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

【漫画感想】東元俊哉「テセウスの船」10巻完結。家族愛をテーマにしたヒューマンドラマとしてよかった。

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「テセウスの船」が全10巻で完結した。

テセウスの船(10) (モーニング KC)

テセウスの船(10) (モーニング KC)

  • 作者:東元 俊哉
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/12/23
  • メディア: コミック
 

 

これも「モンキーピーク」と同じだった。

期待値の高さと期待の方向性が、ちょっと食い違ってしまった。

ただまとめる気がたぶんなくなっていた「モンキーピーク」とは違い、「テセウスの船」はこじんまりとだが、一応綺麗にまとまっている。

ミステリーとして見てしまうと推理要素が薄く、なんちゃっての域を出ない。

鈴のキーホルダーを置いた理由とか、がっくりした。伏線に見えて情緒的な方向に回収してしまうのは、なっちゃってミスあるあるだ。

 

親子愛、家族愛で締められたラストが良かったので、もう少しヒューマンドラマ寄りの話にしても良かったと思う。

もしくは鈴や佐野一家の影響を受けて、善悪のはざまで揺れ動く加藤視点の話のほうが面白かった気がする。

最初のうち加藤に注目が集まらないようにしたことが仇になって、加藤の鈴に対する執着が唐突に感じる。背景の描きこみが少なすぎる割には、悲惨な生い立ちや翼から性的被害を受けいていたなどのインパクトのある設定が盛られているため、どういう人間なのか、何が何なのかわからないまま事件が終わってしまった感じだ。

登場人物もそんなに多くないから犯人はだいたいわかってしまうので、思いきってミステリー要素は捨てたほうがまとまりがよかったかもしれない。

あちらを立てればこちらが立たずで、ミステリーとしてもサスペンスとしても家族愛ドラマとしても人間ドラマとしても中途半端に感じてしまった。

 

ただずっと感想に書いてきたように、「平凡な普通の家庭」である佐野一家が理不尽な運命に善良さを手放さず立ち向かうという構図がすごく好きだった。「テセウスの船」はその一点だけで自分の中ではかなり好評価だ。

加藤のような狂気の人物に立ち向かうときも決して自分たちは真っ当さを手放さない、佐野や心の善良な普通の人の強さを感じる人物造形がよかった。「天才」とか「狂気」とか「特別」とかそういうものが力を持ちがちな若年層向けのフィクションで、こういった「真っ当さ」を貫く物語は貴重に感じる。

そういう「普通の平凡な人の心の強さが、『特別な(悪い)もの』に負けない話」が単純に好きだ。

 

普通の話だと「結局なぜ、心は過去に戻れたのだろう」「他の世界線はどうなっているのか。そのまま存在するのか、改変されるのか」など色々と気になるが、「テセウスの船」はややご都合主義的な大団円も「佐野一家が幸せになってよかった」という気持ちが先に立つ。

心と由紀も再び出会って、未来も生まれそうだしめでたしめでたしでよかった。

 

ドラマのキャストは、うーん、ファンの人には申し訳ないが佐野は別の人が良かった。ちょっとイメージと違う…。まあ見始めたらハマっていると思うかもしれないが。

ユースケ・サンタマリアと安藤政信をドラマで見るのが久しぶりなので楽しみだ。

 

全体的な感想は「色々ちょっと惜しい」となってしまったけれど、なんだかんだ最後まで読んで面白かった。ドラマも楽しみにしている。

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