消息不明になった船の乗員乗客60名の身元と生死を調査し、船に何が起こったのかを推理する「Return of the Obra Dinn」をクリアした。
面白かった。
個人的には脳トレのイメージがある。ほどよい頭の体操がやりたい、と思う人にオススメ。
これで2200円は安い。
ヒントのみ見たい場合は、下記のネタバレ反転を参照。
・「服装」に注目。同じ服装、似た服装をしている人は、同職業である。甲板員、檣楼員は国籍に即した服装をしていることが多い。
・「ハンモック」に注目。ハンモックは基本的には、同じ国籍の人間で固まっている。またハンモックにつけられている番号は、乗員番号と対応している。
・「死んだ人間以外のその場にいた人間は、必ず確認する」そこに人間関係や職種、性格がヒントとなって隠されている。例えば「〇〇手」は「〇〇長」と行動を共にして、仕事を手伝っていることが多い。
以下断片的に語られたストーリーをつなぎ合わせて考察&感想を述べるので、ネタバレ注意。
一章 崩れた積み荷
出航前に積み荷が崩れる事故が起き、ピーターズ兄弟の兄・サミュエルと密航者が死亡。
兄弟のうち名簿の上位にいるのが兄だろうと思い、ずっとネイサンをサミュエル、サミュエルをネイサンだと勘違いしていた。先入観は怖い。
*残った謎
①一章②で死んだ密航者の正体は、結局わからなかった。何かストーリーに関係していたのだろうか?
二章 死の病
インド人の休憩所で結核が蔓延。原因と推測された、牛が食肉として処分される。
このシーンでハンモックの番号が乗員番号に対応していることに気づいてから、甲板員と檣楼員がスムーズに判明した。
ハンモックが人種ごとに分かれていて、それぞれに文化があるのが面白い。
「結核が広まったら、なぜ牛を処分するんだろう?」と疑問に思い調べたら、結核菌は牛を媒介にするタイプがあると知った。勉強になる。
この時代の英国は階級社会で、船内の序列もきっちりしているのに、幹部候補の士官候補生が家畜を殺害する手伝いをさせられるのが意外だった。度胸をつける訓練の一環だろうか?
牛を処分したことで、結核による犠牲者が二名で済んだ。
三章 殺人
乗客・ヌーツィオ・パスクアを殺害した容疑で、フォルモサ人ラウ・ホクセンが処刑される。
パスクア殺害の真犯人である二等航海士のエドワード・ニコルズが宝を強奪し、フォルモサ人のリム・ブンランとシア・イトベンを誘拐する。
*残った謎
①ラウ・ホクセンはなぜ嘘の自白をしたのか?
ニコルズの仲間であるホン・リが、嘘の通訳をした可能性がある。というより、それ以外に思いつかない。
ラウ・ホクセンも殴られた傷があるのに、そこは詳しく調べなかったのか、などと疑問が多い。
二等航海士であるニコルズの言い分をとらざる得なかった、など船内の人間関係事情も絡んでいるのかもしれない。
②ニコルズは元々、盗み目的で乗船したのか? それとも魔が差したのか?
魔が差した割には、仲間を引き込む速度が速すぎので、元々そういう目論見を持った一党だったと考えるほうが自然な気がする。
少なくとも二等航海士付司厨手サミュエル・ギャリガンとは、悪行を働く仲間だったのだろう。処刑のときも話し合っていた。
人魚が出たときの会話から考えると、貝殻の謎については何も知らず、ただ厳重に管理しているから金目のものだろうと考えていたようだ。
ニコルズは盗みの現場に居合わせたパスクアを容赦なく殺し、濡れ衣を着せたホクセンの処刑を平然と見物し、リムとイトベンをさらい、怪物に襲われたときは一人だけ隠れ、仲間が全滅すると臆面もなく船に戻っている。
掌砲手オーラス・ヴィアテルと並ぶ、なかなかのクズっぷりだ。
四章 出現
船から離れ東に向かうニコルズたちは、海から出てきた三体の怪物に突然襲われる。
ニコルズの仲間であるロシア人二人は、身元確認で最後まで残った。二人の名前を入れ替えても確定しないので、しまいにはオヘーガンを交えてシャッフルしだした。
四等航海士付司厨手のデービー・ジェームズを「ズンギ・サーティ」だと思い込んでいたから確定しなかったんだけどね…。
①フォルマサ人たちは、貝殻をどうしようとしていたのか?
人魚?たちに貝殻を返そうとして、この船に乗ったというのが一番妥当に思える。
貝殻に直接触れたイトベンとフィリップ・ダールは両方感電死した。調べたら「雷酸水銀」というものが出てきたが、何か関係があるのか? 水銀中毒の症状も調べてみたがイマイチよくわからなかった。
人間はこの貝殻に直接手を触れられない設定、ということでいいのか。
五章 呪われた獲物
五章①でフォルマサ人のタン・チョウが「貝殻を守らねば、みんな死ぬ」と言っているので、貝殻を人魚?に返したいのか守りたいのか判断に迷う。
金目当ての人間に盗まれて人魚に返すことができなくなれば、大変なことが起こるということが言いたいのではと考えた。
盗難誘拐騒動が起き人が大量に死んでいるのに、「魚のフライか」「綺麗な貝殻だな」という能天気さで命を落とした料理人トーマス・セプトン。厨房にこもっていて何が起こっているのかわからなかったのかもしれない。(ということにしておこう)
セプトンが死んだ場面でフィリップ・ダールが、一人で船尾側の階段に向かっている。
ダール視点だと、四章⑥でニコルズが人魚?と帰ってきたのを目撃、まずいものを連れ帰ったと思う。人魚を逃がそうと思い、先回りしてジョン・ネーブルズを襲った、でいいのかな。
①ただネーブルズ一人を襲っても、人魚は逃がせない。人魚を生け簀に入れようとしたネーブルズと口論になって殺してしまった、と言っても時間がタイトすぎる。
恐怖にかられて発作的に殺してしまった、というのが妥当かな。
六章 海の兵たち
乗員たちの奮闘ぶりが胸を打つ、本作屈指の熱い章。
この章の戦いぶりや行動で、各乗員の性格や関係がわかる。細かい作りこみから発見できるものが多く、プレイしていて楽しい。
船匠ウィンストン・スミスのように自分を犠牲にして仲間を守る人間がいる一方で、掌砲手オーラス・ヴィアテルのように一人だけ逃げる奴もいる。
事務長ダンカン・マッケイがなかなか見つからないと思ったら、事務長室に隠れていた。この人は非戦闘員だから仕方ないかもしれない。
この章の一番の見所は、士官候補生たちの奮闘ぶりだ。
及び腰になりながらも怪物に正面から立ち向かう勇気や、極限でも仲間を思いやる様子には胸を打たれる。
仲間のようには振る舞えない臆病なトーマス、火に巻き込まれたチャールズに必死に水をかけるピーターと一人一人個性も出ている。
蟹乗りは人魚と貝殻を奪い返しにきたのだろうけれど、海の住民なのだろうか?
七章 破滅
どうにか蟹乗りを倒したが、すぐにクラーケンが襲来。
地上戦ではまったく歯が立たず、船は半壊され、逃げた船員たちも海にたたき落とされ、頼みの綱の大砲には押し潰され、あげくに船内で暴発するなど阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
圧倒的な力を持つ存在による一方的な殺戮で、逃げ場のない船となれば乗員たちの恐怖と絶望はすさまじいだろう。
乗員たちは逃げるもの隠れるもの、戦うものに分かれるけど、巨大な力の前には、人間の一人一人の個性など何ひとつ関係なく、ただ無惨に死んでいく。
死にかたも悲惨な人が多い。
動画で見たらキツそうだ。
八章取引の船長の言葉によると、捕らえた人魚がクラーケンを呼んだらしい。
あの貝を持つ人魚たちが、海の支配者なのだろうか?
八章 取引
乗員のメモをすべて埋めると開放される章。
五章で船尾倉庫に閉じ込められたフィリップ・ダールと三等航海士マーティン・ペロットの安否がわかる。
マーティンが人魚を逃したことにより、クラーケンが去ったことが分かる。
*残った謎
①ヘンリー・エバンズが、猿を倉庫内に放って撃った理由がわからない。アフリカへは連れていけないからか?とも思ったが、動機を「探求心」と言っているのがわからない。
九章 脱出
ヒントを出したいのは分かるが、「フランス野郎」はちょっとどうなんだろう。ラーズ・リンデの「デンマーク野郎」は、ネイサン・ピーターズが逆恨みしていたからわかるが。
そこはおいておいて、破滅の最後で甲板長アルフレッド・クリスティルを捨て身で助けようとする助手チャールズ・マイナーの姿、自分が瀕死の重傷の中で助手の安否を心配するクリスティルの姿にはジーンとする。
どの職種でも長と助手は、上司と部下という以上に「仲間」という強い絆があることを感じさせる。(掌砲手以外)
どんなときも恐怖を知らないかのようにいの一番で戦いに赴く、マバの死にざまにはゾッとさせられた。絵面的にはこの人か、大砲の暴発で死んだ掌砲長クリスチャン・ウォルフが一番悲惨な気がする。
この章は甲板上と甲板下で同時に物事が進行している。
(甲板上)
八章取引で人魚を逃した、一等航海士付き司厨手ポール・モス、四等航海士付き司厨手デービー・ジェームズ、船医ヘンリー・エバンズ、エミリー・ジャクソン、ジェーン・バードの五人が最後の救命ボートで逃げ出す。
ここで驚いたのはエミリー・ジャクソンの銃の腕前だ。この状況下、揺れるボードの上で瞬時に正確に射撃を行っている。普通の中年女性にしか見えないが、銃器の腕前が一流というのは萌える。出番(思念)は少ないが、破滅のときもジェーン・バードを後ろに庇って絶望的な状況をしっかりと観察しているところを見ても、只者ではない。何か隠し設定があるのかもしれない。
*残った謎
①脱出した五人の組み合わせは何か意味があるのだろうか? 人魚を逃して事情を知っているモス、ジェームズ、エバンズ、そこに乗客のうちで残ったエミリーとジェーンが加わったのかな。
ジェームズを最後までズンギ・サーティだと思い込んでいた。ズンギ・サーティはこれに加えて、死因を確定するのが最後にして最大の難所だった。
(甲板下)
掌砲手オーラス・ヴィアテルが立ち聞きをしていたトーマス・ランケを殺そうとする、止めようとした四等航海士ジョン・デービスがヴィアテルを殺す、そこにきたブレナンがデービスが反乱を起こしたと勘違いし、デービスを殴り殺す。
多少流されそうになっていたとはいえ、誤解されたまま殺されたデービスが気の毒だ。
十章 終幕
船内に残った一等航海士ホスカット、甲板員ヘンリー・ブレナン、檣楼員ルイス・ウォーカーが船長室へ向かう。
船長から貝を奪おうとして、返り討ちに会う。
このとき船長が半裸だったのは、自殺することを決意していたからかと思う。
ブレナンは活躍ぶりが半端なかった。お疲れさま。
まとめ
謎のうち
①密航者の正体
②ヘンリー・エバンズが猿を殺した理由
③貝と海の住民の関係
が引っかかる。
ミステリーかと思いきやパニックホラーだった。
ストーリー的には動画で見てみたいと思わせるが、ゲームの面白さとしては十分だった。白黒線画、最低限の操作性でもここまで面白いゲームができるんだ、ということに感心した。
このシリーズで、ミステリーものを作って欲しい。