何だかんだ言って面白かった。
対談で「歌舞伎を意識している」と言っていたので、話を極力わかりやすくして、舞台映えを重視しているのかなと思う。「2」ではこの傾向が「1」以上だった。
すべての物事が怒鳴り合いで締められるのも、お約束化している。あれだけの声量で滑舌よく話せる俳優はすごい。
でも怒鳴り合いは聞いていて疲れるので、もう少し控え目だと嬉しかった。
この話がとことんツボを外さないと思う点のひとつは、敵役に魅力的な俳優陣をズラリとそろえてくるところだ。敵役俳優と堺雅人の演技合戦も、この話の楽しみのひとつだ。
中でも柄本明は別格だった。
「底が見えない怪異のような怖さ」を演じさせたら、この人の右に出る人はいないんじゃないかと思う。
白井大臣を演じた江口のりこも良かった。「債権放棄を拒否します」のときのあの表情は良かった。最後の「実はいい人」はちょっとずっこけたが。
筒井道隆が演じる悪役は初めて見たが、どんな場面でもほぼタメ口掛け値なしに憎たらしいクソ野郎にボソボソした話し方がマッチしていた。乃原は半沢と背景が被っていて面白そうなキャラだったが、それが余り生かされず残念だった。
「2」で一番好きだったのは、伊佐山部長だ。「1」で大好きだった黒崎が出番が少なく最後は味方になってしまったので、伊佐山がいてくれてよかった。
伊佐山は不思議なほど可愛い。
「悪役なのに可愛くて憎めない」ではなく、「すげえ憎たらしくはっ倒したくなるんだけど、そこも含めて可愛い」
こっちの癇に触ることを面白がって言う小学校低学年の男子みたいな雰囲気がある。
それでいながら公の場でかしこまっているときも違和感がない。特徴を箇条書きすると無茶苦茶矛盾しているんだけれど、実物を見るとひとりの人物として統合されている。「ン十年生きてきた一人の人間」がその場に突然出現するんだから、演技はすごいなと思う。
家で赤ちゃんプレイをしていそうだ、という妙な確信がある。
大和田もそうだが、この人たち家庭はどうなっているんだろう? 大和田は指輪をしていたので結婚しているとは思うけど、「仕事が終わったら家に帰る」イメージがない。
銀行でずっと暮らしている(生息している)と言われても違和感がない。
大和田さんも可愛い。いい意味で子供っぽい。
伊佐山と大和田に「嫌い嫌い」言われる(そして黒崎に滅茶苦茶好かれている)半沢がちょっと羨ましくなる。「可愛い成分を持つおっさん」は凶器だ。
「半沢直樹」で一番好きなところは、敵味方関係なく、出てくる登場人物がすごい楽しそうに仕事(陰謀?)をしているところだ。
中身の善悪是非はドラマなのでおいておいて、生き生きと楽しそうに何かをやっている人を見ているのは単純に楽しい。
アイドルにまったく興味がないのに、ファンのブログを熱心に読んでいたことがある。「何かがすごく好きで夢中になっている人が好き」なんだろうと思う。
「半沢直樹」に出てくる悪役が妙に憎めない(むしろ好き)なのは、そういう点もあるのかもしれない。