うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

「スマホ脳」 スティーブ・ジョブズはわが子になぜiPadを触らせなかったのか?の感想

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各国で話題になっている(らしい)スウェーデンの精神科医・ハンセンの「スマホ脳」。

スマホ脳(新潮新書)

スマホ脳(新潮新書)

 

 

以前読んだ「デジタル・ミニマリスト」と内容が似通っており、スマホの機能は人間の脳の機能を利用して「注意」をジャックしており、限られた集中力の容量を摩耗させている、というもの。

「デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する」からデジタル断捨離について学ぶ - うさるの厨二病な読書日記

 

いま現在使われているデジタル機能を開発する側の人間であればあるほど、自分では使用に制限をかけている、子供には触れさせないという話は割とよく聞く。

シリコンバレーの巨人たちも、自社の製品への後悔の念を露わにしている。特にSNS関係ではそれが顕著だ。

フェイスブックの元副社長のチャマス・パリハピティヤはあるインタビューで、「SNSが人々に与えた影響を悔いている」と発言した。

「私たちが作り出したのは、短絡的なドーパミンを原動力とした、永遠に続くフィードバックのループだ。それが既存の社会機能を壊してしまった」

フェイスブックの初代CEOを務めたショーン・パーカーも、同社が人間の心の脆弱性を利用したと明言している。

 (引用元:「スマホ脳」 アンデシュ・ハンセン/久山葉子 新潮社 P161)

 

「デジタル・ミニマリスト」でも言われていた通り、現在のSNSの構造の基本は、

「考えさせないようにする」ことで、滞在時間を長くし利益を生む「注意経済(アテンション・エコノミー)」とどう付き合っていくか、ということが本書の主眼になっている。

これなので「いかに人の注意を惹きつけ続けるか」が主眼になっている。

もちろん有効に活用できれば面白いし何より便利だけれど(だから使っているけれど)、余りに巧妙に出来過ぎていて「使うつもりが使われている」という感覚に陥ることも多い。

スマホが発明される以前に戻ることはできないけれど、かと言って「道具を使う」のではなく「道具に使われる」のでは本末顛倒だ。

「それらを使いこなさなければ、時代についていけなくなる」という言葉は、本当にいまの使用のしかたで「ついていっている」のか、「時代」とは何なのか、その時代は「自分を含む様々な人々の思考や価値観の総意」で形成されたものなのか、もっと一部の「心の脆弱性を利用した」人間が何らかの目的で形成しているのではないか。

「時代についていけなくなる」というひと言で話が終わった風になり、次の物に注意を飛び移らせるように急かすことこそいま起こっていることでは、と個人的には感じる。

 

現在は情報が余りに多いので、「いかに情報を取り入れるか」ではなく「いかに情報を限定するか」が重要では、と思う。

真贋はもちろん大事だが、それほど白黒綺麗に分かれるものではなく、時代の価値観や物の見方でも反転したりする。

個人的にこうしたほうがいいかなと思ったのは、情報の取捨するためのフィルターは、なるべく「自分」から遠いところにあったほうがいいということだ。情報はある程度ランダムに入ってきた方がいい。

新聞がネットニュースよりもマシだなと思うのは、自分が興味がなくネットニュースだとクリックしない情報でも記事ごと目に入ってくるところだ。

 

「自分」というフィルターを完全に取り去ることは不可能だが、(新聞だったらどの新聞を取るかなどでフィルターがかかる)それでも今の仕組みは、意識して取り除かなければ余りに「自分」というフィルターが強くかかりすぎる。

例えば本であれば、自分の好みで手をとっても情報量が膨大だ。自分が退屈だ、興味がないと感じる部分が入っているところがむしろいい。

 

「私たちが作り出したのは、短絡的なドーパミンを原動力とした、永遠に続くフィードバックのループだ」

これに抵抗できる人間は少ない…というより、抵抗できないとわかっているからこういう仕組みにしたと言われている。

自分も最近はなるべくスマホは触らないようにしよう、と意識しているが、意識して努力しても難しいとつくづく感じる。

 

他の人のことは条件が違うので何とも言えないので、自分のことに限定して話すと、本書に書いてあることや「デジタル・ミニマリスト」に書いてあることはしみじみそうだなと感じる。

自分は物事を次から次へ素早く考えるのが得意ではなく、ひとつずつ自分の思考の過程に当てはめて一からゆっくり考えないと物事がうまく理解できないタイプなので、そもそも情報の移り変わりが早いものには向いていない。

賽の河原で一人で石をひとつずつ調べて、それが積めるのか積めないのか、積めるとしたらどこに積めるのかを考えて、一個一個実際に積んでみるのが好きだし性にも合っている。

なのでこれからも自分のペースで本なり記事なりを読んで、自分なりによく考えて、発信するときはなるべく言葉を尽くして語っていこうと思う。

難しいことだけれど、これからの時代はそういうことを意識して行うようにするのが、とても大切になるのでは、とこの本を読んで思った。