*ネタバレあります。
「葬送のフリーレン」を4巻まで読んだ。
※「漫画大賞2021」受賞めでたい。
3巻、4巻と相変わらず演出が淡々としていて、淡々としたエピソードの連続だ。
フェルンとシュタルクとの冒険は、ヒンメルたちとの「くだらなくて楽しい旅」を想起させるものであると同時に、まったく別の同じくらい楽しいものでなくてはならない。
(「葬送のフリーレン」感想・裏面 美しすぎる過去が超えられないハードルになるかもしれない。 - うさるの厨二病な読書日記)
2巻までの感想でこう書いたんだけれど、3巻4巻を読んでやっとわかった。
逆なんだ。
ヒンメルたちとの冒険も、その当時はこういう何ていうことのない淡々としたものだったのだ。
ヒンメルたちとの冒険は、今は「振り返っているから」美しく感じられるけれど、当時は、いまフェルンやシュタルクと過ごしているようなどうでもいいような物事が積み重なった日常の連続だったのだろう。
でもそれが振り返る思い出になると、とてつもなく美しくかけがえのないものに感じられる。
フェルンやシュタルクと過ごしているいまの出来事が、ヒンメルたちとの思い出を超えられないのは当然だ。「超えられないところ」にむしろこの話の真価があるのだ。
ヒンメルたちとの思い出のその当時は「さほどとは思わなかったこと」に、フェルンやシュタルクたちと過ごすことで悟った意味合いが加わって、さらに美しく想起される。
ヒンメルたちと一緒にいたときは、手を握られる側だったのに、フェルンたちと一緒に冒険するときは手を握る側になる。
そうすると握る側がそのときどんなに自分を思ってくれていたのか分かるとか、ベタだが上手いよな~と思ってしまう。
フェルンとシュタルクとの冒険も、ただ過去を美しく思い出させるためのものではなく、以前の何て言うことのないエピソードを繰り返しフラッシュバックさせることで、これもまたフリーレンにとって「思い出」になったときに、美しいものになっていくのだろうと思わせる。
フリーレンがフェルンに何かしてあげるたびに、アイゼンの「そいつはいい師匠だ」が脳内にエコーする。
そうか、確かに思い出ってこういう作りだな、と思わせる話だ。
4巻でヒンメルがフリーレンを本気で好きだった、とわかってけっこうびっくりした。
ヒンメルとフリーレンの関係は、多少そういう意識はあってもいいけれど、基本、仲間同士のほうがいいなあと思っていたけれど、4巻の描写を読んだら「ガチ恋愛で全然いいです」となった。
花言葉が「久遠の愛情」で
この表情で
(引用元:「葬送のフリーレン」4巻 山田鐘人/アベツカサ 小学館)
これだろう。
(引用元:「葬送のフリーレン」4巻 山田鐘人/アベツカサ 小学館)
そこからの
「でも、僕達は君が凄い魔法使いであることを知っている。それでいいじゃないか」
「でもすぐ死んじゃうじゃん」
うわあ……。
それでこの表情か…。
(引用元:「葬送のフリーレン」4巻 山田鐘人/アベツカサ 小学館)
ヒンメル、何も言わないで死んだのか…。
「すぐ死んじゃう」から。
でも「久遠の愛情」を捧げていたのか。
「未来で君が独りぼっちにならないように」銅像を残し続けたのか。
この片思いの構造は面白い作りだけれど、萌える以前にひたすら辛いな。
フリーレンが気付いて良かったよ。
それにしてもヒンメルは、身も心もイケメンだ。
5巻の予告を見ると、いっきに新キャラが増えそうなのでまた楽しみだ。
ザインも戻ってくるかな?