うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

【漫画感想】「All You Need Is Kill  ーオール・ユー・ニード・イズ・キルー」 恋愛と人類滅亡の危機の食い合わせの悪さ。

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*漫画版のみの感想です。

*ネタバレあります。

 

「マヴラブかな?」と思うと「マヴラブ」に見えてしまう。

被っている設定が多いのでつい比べてしまうが、「ループを繰り返して学習し、強くなって敵に挑む」というパターンは、ジャンルとして確立しているので、「被っている」という指摘は野暮だ。

その中で、個々の作品の面白さを見つけたほうがいい。

意外とその作品固有の面白さがあるので、「どこかで見たことがある」で感想を終えるのはもったいない。

ミステリーに例えると、叙述トリックを読んで「トリックが他の作品と被っている」と言わないようなものだ。

一ジャンルを築くくらい面白い設定だから、パターンを変えて何回でも楽しめる。

 

ただこの話の場合、「ループを繰り返して強くなり、ギタイを倒す」のは目的ではなく、「リタと主人公・ケイジの恋愛」を描くための手段だ。

だから最後はギタイとの戦争の結末がどうなったかではなく、リタが死んだところで話が終わる。

ギタイについても、さほど深堀りされていない。

ギタイがどういう生物で、どんな習性を持っていて、何のために生まれたのかということはよくわからない。

謎の未知の生物のままだ。

多種多様な性質や外観を持ったBETAと比べると、だいぶ物足りない。

戦術的な作戦の説明などもない。

こういう話は集団戦闘の展開部分に力を入れている話が多い印象だけれど、珍しく?描写がドッグファイト一辺倒だ。

「リタと主人公の関係性」と最後のオチが目的で、他の要素は入れる必要を余り感じなかったのだろう。

 

恋愛ものと捉えると、二人の関係にどれだけ萌えられるかが主眼になるが、この点がイマイチだった。

「関係性に萌えるか」以前に、リタにもケイジにも魅力を感じなかった。

ループものと恋愛は食い合わせはむしろいいと思うのだけれど、(「YU-NO」や「バタフライ・エフェクト」を見れば分かる通り)「ストーリーは恋愛を目的としているのに、ストーリー内のキャラクターは恋愛を目的としていない」場合、見せ方が意外と難しいんだな、と読んでいて思った。

 

恋愛が主要素となるループもの場合、二人の情報量の差から生じる切なさが萌え要素だと思う。(相手のために多くの犠牲を払っていたり、時間を費やしているのに、相手にはその認識がない、など)

この漫画でも切なさ要素は入っているのだけれど、「人類の滅亡がかかっている」背景があるとそれどころじゃないだろうと、つい思ってしまう。

「シュタインズ・ゲート」のように、この辺りの天秤のかけ方が上手い話もあるので、見せ方や演出の差なのか。

 

二人の関係性に話が収斂する恋愛と世界の滅亡は食い合わせが悪い。

世界系は、設定がぼんやりしているから成り立つ亜種みたいなものだと思うし。

 

と、色々言ったけれど、全体的な感想は「普通に面白かった」

小畑健の作画が圧巻で、これを見るためだけでも買って良かったと思えた。

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 (引用元:「All You Need Is Kill 」二巻 桜坂洋/竹内良輔/阿倍吉俊/小畑健 集英社)

戦闘シーンが凄かった。(小並感)