うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

「青天を衝け」の栄一と喜作のような五分五分の関係だったら、「鬼滅の刃」の巌勝は黒死牟にならなかったかもしれない、と高良健吾のインタビューを読んで思った。

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昨夜「青天を衝け」の第40回を見て感動した勢いにのって、出演者のインタビューを読んだ。

 

主人公・栄一の幼馴染みで生涯の友だった喜作を演じた、高良健吾のインタビューが面白かった。

Q:栄一と喜作の関係をどのように思いますか?

基本的に喜作は栄一に甘えているんです。そう思って演じています。

血洗島を出て一橋の家臣となるまで、栄一は一人でもできたかもしれないけれど、喜作は絶対に一人ではそこにはたどりつかない人だと思います。

年齢的に喜作が兄貴分、栄一が弟分という印象があるかもしれませんが、僕は五分五分だと思っています。栄一の存在がなかったら、喜作は短命だったかもしれないと感じることが結構あります。

喜作が血洗島時代と幕臣時代では明らかに人が変わっているのに対し、栄一は、変わらない。出会った人に影響されて臨機応変に考えは変えても、人としては全く変わらない。

そこが栄一の最大の魅力だと思います。

だからこそ、喜作は血洗島時代のキラキラ感がなくなっていくほうが、栄一との対比としておもしろいのではないかと思っているんです。

(太字・青字は引用者)

 

元々好きな役者さんだが、これを読んで改めてここまでか考えて演じているのかと思った。

 

栄一は、変わらない。出会った人に影響されて臨機応変に考えは変えても人としては全く変わらない。

そこが栄一の最大の魅力だと思います。

これが、自分も栄一の魅力で原点であり、こういう栄一の人物像が「青天を衝け」という話の基盤だと思う。

 

高良健吾は喜作自身がどういう人間かということと合わせて、話の主柱である「栄一との対比」で喜作を常に考えていた。

自分の演技だけではなく、作品全体から帰納して役作りをしているところが、凄いなと思ったのだ。ベテランの俳優さんなら当たり前のことなのかもしれないが。

 

自分も喜作は甘えん坊なのだろうなと思って見ていたが、脚本自体はそこまで「甘えん坊」な感じではない。

表情や物の言い方、公の時と二人きりの時の栄一への接し方の違いからなど、言葉には現れない挙措による部分が大きい。高良健吾は意識して「甘えん坊・喜作」を作り上げていたのか。

 

高良健吾のインタビューのこの部分を読んで、唐突に「鬼滅の刃」の巌勝と縁壱のことを思い出した。

巌勝と縁壱の関係性を話しているようだなと思ったのだ。

 

自分から見ると巌勝は、縁壱に滅茶苦茶甘えている。

縁壱は(言い方は微妙だが)巌勝のその甘えが可愛くて仕方がなく、全面的に許容してしまったのだろうと思っている。

巌勝は甘えているわりには、縁壱が自分の言動をまともに取り合わない……つまり、自分の理不尽な言動に本気にならないことが理解できず、常に不満を感じていた。

不満が高じすぎて、空回りしたあげく鬼になってしまった。

 

喜作と栄一の関係で良かったのは、「基本的に喜作は栄一に甘えて」おり「年齢的に喜作が兄貴分、栄一が弟分」だが、「五分五分」なところだ。

喜作は栄一に明らかに甘えているけれど、栄一は喜作が全面的に甘えてくると、受け止める余裕がなく、本気で腹を立てて諍いを起こす。

喜作が牢から出てきて喧嘩をした時に、それがはっきり出ている。

基本的には喜作の甘えをなあなあで受け入れているが、全面的に受け入れられるほど栄一も大人ではないので、時々真剣にぶつかるのだ。

 

高良健吾のインタビューを読んで、縁壱があれほど大人で器がデカくなかったら、巌勝は黒死牟にならなかったのではないかと思った。

栄一と喜作のように何だかんだで一生、一緒に居続けただろう。(巌勝が寺に行くことになるので、一時期絶縁するかもしれないが大人になったら和解したと思う。この辺りは、喜作が函館戦争に従軍して牢に入り、戻って来たときと同じ流れになりそう)

逆に栄一が縁壱のように「非の打ちどころのない人格者」だったら、栄一と喜作は人生のどこかの時点で別れて一生会わなくなったのではないか。

 

人間の関係は不思議で、優しくて人格が出来ていて、愛情を注げば注ぐほどうまくいくわけでもない。

もちろん縁壱が悪いわけではなく、ただひたすら相性の問題なのだ。

組み合わせの良さで、何となくずっと一緒にいる場合もある。

 

「色々ありながら栄一と子供のころから一生一緒に居続けた」という地点から、「こういう栄一とずっと一緒にいたということは、こういう人物だったのではないか」と逆算して役を生み出すという発想が、そしてその発想を人格として演じきったところが、やはりプロの役者は凄いなと思った。

 

 

余談

「巌勝は甘えているわりには、縁壱が自分の言動をまともに取り合わない……つまり、自分の理不尽な言動に本気にならないことが理解できず、常に不満を感じていた。

不満が高じすぎて、空回りしたあげく鬼になってしまった」

 

巌勝・縁壱編は、何度読んでも巌勝の視野狭窄ぶりが凄い。

自分が縁壱に甘えていることにも、縁壱がそんな無茶苦茶な甘えを許すくらい自分を慕っていたことも何ひとつ気付かず死んでしまった。

自分もそんな兄上が好き(むしろそこが好き)なので、縁壱の気持ちはわかるけど。

笛を作って持ってきたエピソードを見ても、縁壱に甘えつつも、「兄」でいたかったんだろうな、とか色々考えてしまう。