「ハイコンテクストすぎて意味がわからん」と途中で投げ出すものもあれば、「ハイコンテクストだからこそ意味を考えたくなる」ので、何度も通読して寝食も忘れて文章ひとつ、語ひとつの意味まで考えたくなる作品もある。
今回は後者の「ハイコンテクストだからこそ意味を考えたくなるコンテンツ」の話をしたい。
自分の中では、ジャンルを問わずにこういうコンテンツはある。
アニメだと「少女革命ウテナ」。通しで三回観た。
最終的には「ある登場人物の心象や主観的な認識を、他の人間が認識(観測)すると(作内の)現実で事象として具現化するルールが存在する」と考えた。
【最終的な考察】もう一度「少女革命ウテナ」を全力で謎解きする。
ドラマでは「Nのために」も通しで三回観て、「希美と西崎は(深層化で)同一人物説」を取っている。
【ドラマ考察】「Nのために」のねじれまくっているストーリーの構造のすごさについて考えたい。
映画では「ディスタンス」についてかなり考えた。
【映画】是枝裕和監督「DISTANCE」(ディスタンス) 謎解き考察&感想 -
ゲームでは「ダークソウルⅢ」。フレーバーテキストを一生懸命調べた。
【ダークソウル考察】世界観の考え方と「混沌の廃都イザリス」で起こったこと「闇撫でのカアス」関連の復習。
【ダークソウルⅢ考察】「罪の都」で起こったこと、法王サリヴァーン、「深みの聖堂」についてなど。
中には「自分で考えたがどうしてもしっくりこない」作品もある。
例えば村上春樹の「アフターダーク」と「多崎つくる」は一人で考えていたら、一生「よくわからない作品だな」で終わっていたと思う。
色々な人の読み方がわかるネットはとてもありがたい。
奥泉光の「滝」は、かなり色々と考えたが、最後の結末の意味だけがいまいちピンとこない。「周りの悪意に浸食されて勲の神性が喪われたから七の滝が涸れた」(ネタバレ反転)ということでいいのかな。
もし何か意見がある人がいたら、教えてくれると嬉しい。
奥泉光「滝」の自分の感想を読んだらまったくしっくりこないので、もう一度考え直してみた。
「創作における神は、その創作内でのみ機能する独自のルール」だと思っている。
その「独自のルールは何か」を考えることが好きなので、「独自のルール」が一見するとわかりにくい話を好む傾向がある。
「『考察とは何ぞや?』から始まる創作をどう読むか」についての持論
「わかりにくい、謎が多い」と多くの人から言われている話に惹かれるとは限らないし、一見すると「隠された謎も文脈もルールもない、読んだ(明示された)ままの話じゃないか?」という話に強く心惹かれることもある。
後者の話に強く心を惹かれる傾向があるのは、クリスティーの影響が強い。
クリスティーは「なぜ、その殺人が起こったか?」という物語を描く名手であり、そこにポイントをおいた数々の作品を生み出した。
だが、実は逆なのかもしれない。
「人は自分が見たいと思ったことしか見ず、自分が認識したいようにしか物事を理解しない」
その「認知の歪み」がクリスティーの中で最も大きな関心事だった。だから「ミステリー」を書いたのかもしれない。
(【アガサ・クリスティーならこれがおすすめ!】数ある作品の中から、シチュエーションごとのおすすめをピックアップ )
クリスティーは人がAという物事をどう見て、どう解釈するか、そうしてその解釈がいかに「常識」や「一般論」(←現実とは違うルールが機能している創作においては、これらはかなり強固なバイアスになる)によって偏っているか、そのことを以て、人が「常識」だと信じているものはその人固有の経験則から生み出された偏りに過ぎない、ということを知りつくしていたのだと思う。
毎度毎度「そのまま受け取ればこうだろ?」というポイントで、自分の偏った認識によって勝手に誘導されてしまう。クリスティーの小説を読むと「物事をそのまま受け取る」ことがいかに難しいか、ということに気付かされる。
そういう風に翻弄されるのが、滅茶苦茶面白いところだが。
「普通に読むと何ということのない話だが、何だか引っかかるものがある」話が最も好きだ。(ジャンルでは「意味怖話」が近い)
そういう話を常に探しているが、ジャンル名がない上に、好みの問題もあるので見つけるのがなかなか難しい。作者が考えて仕掛けを作っている場合もあれば、(たぶん)特に何も考えておらず自然にそういう構造になっている話もあるのでさらに難しい。
自分にとっては希少な宝のようなものなので、いざ見つかると凄い勢いでのめり込んでしまう。堪能しつくしたあとは「こんな素晴らしい物語を生み出してくれてありがとうございます」と感謝の気持ちでいっぱいだ。
一見するとこれがそうとは思えない、というのものが金脈だったりする可能性もあるので、これからも辛抱強く探そうと思う。