韓国のアニメ映画「整形水」をアマプラで視聴した感想。
不美人な容貌のせいで周りから蔑まれる不遇な立場にある、メイク係のイェジの下に、塗るだけで姿形を変えられる「整形水」の紹介メールが届く。
長い間、容貌のせいで虐げられてきたと感じていたイェジは、半信半疑ながら「整形水」を試してみる。
昔のポリゴンのような不自然な動きなので、古いアニメなのかなと思ったら2020年の作品で驚いた。
アニメーションの動きが直線的すぎる。髪の毛に一本一本の動きがなく、ムースで固まったような動きしかしない。
ただそれが低い評価につながるか、というとそんなこともなく、「こういうものだ」と割り切ってしまえばそれほど気にならない。
気になったのはレイティングがPG-12(小学生以下の子供は保護者同伴での鑑賞を推奨する)なこと。
個人的にはR15(15歳未満の入場・鑑賞を禁止)にしたほうがいいのでは、と思った。
レイティングの基準については余り詳しくないけれど、「描写自体がどうこう」というよりその描写に対して、批判的な視点がストーリー内にないことが気になった。描写も「イェジ(ソレ)が整形水を販売する女性を殺害するシーン」や「ソレが裸で逆さ釣りにされるシーン」(ネタバレ反転)とか気になったけどさ。
*以下話の核心以外の若干のネタバレあり。注意。
途中まではテンプレ的な話で、見ていて退屈だった。
「こういう展開かこういう展開のどっちかかな」と白けた気持ちで見ていたら、予想の斜め上の展開だった。思わず画面に向かって「おみそれしました」と頭を下げたくなった。
「展開が唐突すぎる」という感想を見たけれど、自分はそうは思わなかった。
むしろ前半のテンプレ展開と後半の「捻ったオチ」の相性が抜群によかったと思う。
前に「登場人物がどんな言動をとっても不自然に感じさせないために、登場人物を記号化(テンプレ化)する手法がある」と書いた。(ミステリーなどと相性がいい)
「整形水」は登場人物も前半の展開もテンプレなので、後半に超展開がきても余り矛盾を感じないし、唐突さも感じない。
イェジがネットに誹謗中傷を書き込んだり、自分のことしか考えないような嫌なキャラなので、どんなひどい目にあっても感情移入せずに見ていられるのも良かった。
イェジに少しでもいいところがあったら、後味が悪かったかもしれない。
描写のエグさに、いい意味で無頓着なところも良かった。
浴槽の中で肉が溶ける描写とか、ラストの展開も「どうだ、エグいだろう」という作り手の思惑による強調がない。
殺害シーンも殺し方がやたら生々しく、丹念に描写しているわりには、演出は淡々としている。
こういう「作り手の側で、ストーリーにアクセントをつけない演出(特に残酷描写)」が、かなり好みだ。
テーマ性も、姿形を重視すること(いわゆるルッキズム)への批判や皮肉を見て取る人もいるようだが、自分はそういう主張はほとんど感じなかった。
ただ背景として描きやすいから用いたように見える。エンタメの場合はテーマとして扱いきれないくらいなら、それくらい割り切っていたほうが見やすくていい。
オチでうわっと思わせる超展開のストーリーを作る。
目的をこの一点だけに絞って全てが作られているところ、そしてそのオチに十分満足出来たところが良く、個人的には満足だった。
一般的な評価は余り高くないけれど、四の五を言わず容赦のないホラーを観たい、という人におススメしたい。