読売新聞の書評欄に金石範の「火山島」が紹介されていて、面白そうだなと興味を持った。
韓国では今も余り語られない、「済州島四・三事件」を題材にした小説だ。
早速Amazonで調べてみたが、電書も文庫も出ていない。出ているのは中古の単行本とペーパーバック版のみだ。
全7巻だが、古本すら出品されていない巻もある。
「どうしよう」と思いながら、うろうろと紹介や感想、済州島四・三事件の記事を読んでいたが、やっぱり読みたいと思い、とりあえず一巻を購入してみた。
すんごくいかつい本が来た。
ハードケース付きの蔵書版は好きだけど……置く場所に困る。
新品と言われてもすんなり信じてしまうくらい綺麗だが、中に書き込みがあった。(『書き込みがあるかもしれない』ということは承知の上で買った)
ただその書き込みの箇所が思想などの印象深い言葉ではなく、状況の説明のような箇所なので不思議に感じた。
「南承之は金明宇という名を使っていた」(P33)
「モスクワ三国外相会談(一九四五年十二月末、米ソ英がモスクワで協議して臨時朝鮮政府樹立のための四項目を決定する)」(P46)
登場人物を整理したり、歴史の事実を調べたりしながら読んでいたのかな?と想像すると親近感がわく。
最近は古本でも書き込みがある本は見かけないので、「これはこれで他の人と一緒に読んでいるみたいで楽しいかもしれない」と思ってパラパラめくっていたら、栞紐が挟んである場所に「むずかしい」と書かれていた。
その後の部分には何も書かれていないので、挫折してしまったのかもしれない。
その栞が挟まれている箇所が、モスクワ三相会議協定で決まった三十八度線の設定や「信託統治」という概念の説明など、ストーリー部分からちょっと離れた朝鮮半島の南北分裂の過程の説明(っぽい)ので、確かに目が滑りそうな箇所だ。
モスクワ三国外相会議 - Wikipedia(ウィキでも書きかけ項目になっている。)
自分も途中で挫折した本はたくさんあるし、漫画もゲームも合わないと思って止めることも多い。(最近は特に)
「難しい」「つまらない」「合わない」と思ったら、サッと止めるのもいいと思う。時間は限られているし、コンテンツは山のようにいくらでもある。
ただ勝手に想像すると、この本の前の持ち主の人(書き込み主)は、テーマである「済州島四・三事件」とその周辺の歴史事情には凄く興味があって、知りたいと思う気持ちが強かったのではと思う。
そうでなくては、本にわざわざ「むずかしい」と書き込まない。
自分はコンテンツはとりあえず一人で接するのが好きだ。ゲームもオンラインはまったくしない。
でも「これは自分一人の手では余りそう」と思ったものは(すぐに見切りをつけてしまうけど)もしかしたら、一緒に読む人がいたら読み続けられるかもしれないなと思うことはある。
学生運動時代の「マルクス研究会」とかは、恐らくそういう目的で作られていたんだろうな。
大抵、その内部で滅茶苦茶揉めるけど。
*大揉めする「ノヴァーリスの引用」。
熱量が多すぎると揉める。
少なすぎると自然消滅してしまう。
仕事上の企画とはいえ、「ハードボイルド読書合戦」のように、お互いの好きな本を同じ熱量で読み合えるのは本当に幸せなことだと思う。
↑「哲学平らげ研究会」のように、平和に続いたケースももちろんあるけれど。
仕事のように「義務」と「利益」がなく、人の率先した意思にだけ頼って「何かを続ける」のはなかなか難しい。(主催者の力量によるところが大きいと思う)
「人の意思に拠るだけ」なのはブログもそうだけれど、ブログは自分が書くか書かないかだけだから話がシンプルだ。
途中までは「書き込み主」と一緒に読んでその先は一人旅をしようと思う。人の足跡を追いながら読むと思うと、いつもと違う、読む前のワクワク感がある。