増田(匿名ダイアリー)は半ばモキュメンタリー的に楽しむものだと思っているので、嘘松でもいい。
むしろそういうものと思っているのに、嘘臭く感じてまったく乗れなかったのは何故か。
自分が「ママ友と浮気してる」から感じた「嘘臭さ」は、「ママ友同士の恋愛(同性愛)だから」ではない。
この話で一番引っかかったのは、「子供の像」が頭の中にまったく浮かばなかったところだ。
子供の年齢や性格によって、何に気を付けるか、どういう動きをしなければならないかが変わるので、子供がどういう子供かは重要だ。
子供が何歳くらいか、どんな性格なのか、おしゃべりなのか無口なのか、父親との関係はどうなのか、自分との関係はどうなのか、ママ友の子供との関係はどんなものか、で展開がガラリと変わる。
ママ友との不倫を隠すために、増田は「展開」に常に気を配っていなければならない。
「ママ友と浮気している。お互いの家で子供を遊ばせてる間に」
というひと言で終わらせるのは不自然だ。
事細かに描かなくとも「子供の設定」が自然と浮かび上がってくるはずだ。
この話ではどちらの子供も、母親に「この場所でこれをして仲良く遊んでいて」と言われたら、母親が「もういいよ」と言うまで遊んでいる存在でしかない。
「『ママ』友と不倫をする」という設定のために(不倫相手が「ママ」であるために)子供が存在しているように見えてしまう。
ためしに書かれている情報を頼りに「子供が増田とママ友の関係に気付いているか」を考えてみた。
・言われれば増田に着いて来る(ママ友の家には行く)が、言われなければついてこない。(映画や買い物にはついてこない)
・増田がママ友と不倫しているあいだ、まったく干渉してこない。
・増田が子供にバレるのでは、子供に何かあるのではとヒヤリとする場面がない。
・増田がママ友と映画や買い物に行くときは、増田の夫は子供の面倒を見ていると思うが、何も気付く様子がない。(→にも関わらず、増田が『子供の様子から夫が不倫に気付く可能性』をまったく考えていないことも、嘘臭く感じてしまう理由だ。『話の外側に世界が存在しない』感じがする)
・ママ友の子供は、
ママ友のお子さん(うちの子のお友達)が「ママがいつも◯◯くんのママかわいいって言ってる」と言った
と増田の前で言うほど、何か気になることがあると無邪気に口走ってしまう性格。→ママ友の子供は、何も気付いていない可能性が高い。
以上のことから考えると、増田の子供は増田とママ友の関係に気付いているが、一切その素振りを見せずに黙っている。
増田とママ友が一緒に出掛ける時はついて行かないようにし、増田がママ友の家にいる時は、ママ友の子供が何も勘づかないように、一緒に遊ぶことで引き留めている。
こういう構図ではないか。
何とも切ない話だ。
だが話に入りこめていないので、これを読んでも「ふうん」という感想しか浮かばない。雲のようにフワフワした存在としか浮かんでいないので、感情移入が出来ない。
この話がもし創作であれば「子供が気付いるかどうか」を読み手が推測する余地がないほど、子供の存在感がないのは致命的だと思う。
という理由で、自分はどうもこの話には乗れなかった。
【鳥肌】聞いたら確実に後悔する怖い話「ワイのばあちゃんの日記」 - YouTube
これも同じことを感じた。
「鳥肌」を立たせるのがホラーでは最も重要なことだが、意外と立たせるのは難しい。2ちゃんねるでただで語ってくれた話のようなので、文句を言ったらバチが当たるが。
二本目の「夢遊病の弟」は面白かった。
自分が不倫をしているあいだに、子供が行方不明になる話。
未読のかたはぜひ。