うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

「マツコ会議」感想。大人気ホラー作家・雨穴から大ヒットの極意を学ぶ。 

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「マツコ会議」に雨穴が出る、ということで、朝から楽しみすぎてそわそわしていた。

23時の15分前には、やること全部済ませてテレビの前で待っていた。

 

最初、マツコが雨穴にもホラーにも余り興味がなさそうなのが気になった。

これは余り深堀りされず面白くないかもしれない。

そんな不安が心をよぎった。

だが後半は、マツコが雨穴の作品というよりは、雨穴という人に興味を持った感じが伝わってきた。

 

「だんだん可愛く見えてくる」

とマツコが言ったように、雨穴のキャラはホラーの語り手によくある「怖い」「不気味」「おどろおどろしい」感じではない。「ゆるく抜けた」感じだ。

戦略的にやっているなら、「少し抜けたキャラのほうがホラーとの相性が良い」と思いついたことに脱帽する。

動画を見ていると、謎の核心に迫る場面で雨穴はちょっとズレた言動をする。雨穴の動画は物語そのものもさることながら、語り手である雨穴のキャラ(言動や視点)の面白さがある。

「ゆるキャラ」っぽく、人が気軽に愛しやすい*1

あれだけ情報を隠した得体のしれないキャラなのに可愛く見える、というのは凄いことだ。

 

番組を観て驚いたのは、動画の設定の作り込み具合だ。

「変な絵」の話のきっかけになる「七篠レン 心の日記」を実際に150日分書いてネットにアップした、という話を聞いて驚愕した。

七篠レン 心の日記

「ストーリーには直接出てこない背景の作り込み」は、読み手の内部にリアリティを生じさせるためにとても重要だと思う*2が、それでもなかなかここまでは出来ない。

実際に自分で150日分書いたほうが話を書く上でもいい、とわかっていても、ストーリーに実際に出すわけでもないものを作り込むということをやる人はほとんどいないだろう。どんな短文日記でも、150日分考えて書くのはかなりの労力だ。

 

番組を観て「ヤツヱメヂキ」も動画を見てみた。

ヤツヱメヂキ - YouTube

これも作り込みが凄い。

ヤツヱメヂキの造形も面白いし、二重底に入っていた文書の書き方など全部がストーリーの世界観を補強している。

 

番組の最後に雨穴がマツコに対して、「変化が激しい中で、いつの時代も自分というものブレずに保つのはどうしたらいいか」という質問をする。

この質問に対するマツコの回答が良かった。

「こっちのほうが得だから、こっちのほうが生きやすいからという理由で変わるのはカッコ悪い。そういう見栄だけで自分は根本は変えずにやって来た。『変わらない』のは自分のため、それだけだ。逆にブレたほうが生きやすいならブレていい」

マツコは話し始めと話し終わりの両方、「もう雨穴さんはわかっていると思うし、そういうことをやっていらっしゃる」と言っている。

雨穴について言えば、この人は「これが時代のトレンドだから」「このほうが得だから」という感覚でやっているとは思えない。

マツコが「優しい人柄に見える」と言ったように、「人を楽しませたいと思ったら、そのことに手を抜かず労力をとことん割くことに苦を覚えない人」なのだろうなと思う。

自分が今回のマツコ会議を見て思ったのは、マツコも雨穴も「自分が何が出来て何が得意で、どういう人間か」をよく分かっている。だからそういう自分でいて(いるしかなくて)周りがそれをどう評価するからは結果論だと思っているのではないか、ということだ。

 

今のように情報が溢れている時代だと「こうすれば成功できる」「こうなりたければこうしろ」というメソッドや格言は山のように溢れている。

そういう「人のやり方」を素直に受け入れられる人ほど、やってみて駄目だった、もしくは続かなかったら「自分は駄目なんだ」と思ってしまいがちではと思うが、自分は何回か書いている通りそれは違うと思っている。

その再現性を可能にする最大の条件は、そのメソッドを使う本人の傾向だからだ。

だからそのメソッドを使って駄目だった場合、フィードバックすることは「自分は駄目だ」ではなく、「なぜこの方法は自分にとっては有効ではなかったのか」ここから転じて「『(他の多くの人にとって有効だと言われる)この方法が有効ではなかった』という事実から、自分はどういう特性を持つ人間だと考えられるか」だと思う。

そういうことの積み重ねによって、「自分(の特性や傾向)を知ること」が最も大事なことだ。

「その方法が自分以外のすべての人間にとって有効」だとしても、自分にとって有効でなければ何の意味もない。

そこで「自分は駄目だ」と法則のほうに自分を合わす必要はまったくない。ちょっともったいないと思う。

「自分を知って、自分に合う(苦にならない)方法(生き方)を探す」

大事なのはそういうことだと思うのだ。

 

雨穴を見ていると「この人絶対にいつの時代も、ストーリーには出てこない150日分のブログを作り込んで、ヤツヱメヂキの精巧な模型を作るだろう」と思う。

結果的に人気作家・YouTuberになったが、ここまで人気が出なくても同じようなことをやっていたと思う。

今後も面白い作品をたくさん作って欲しい。

「ヤツヱメヂキ」に出てきた「暗村の儀式」が欲しい。出してくれないかな。

 

雨穴の動画の感想。

www.saiusaruzzz.com

 

「変な絵」「変な家」の感想。

www.saiusaruzzz.com

www.saiusaruzzz.com

 

*1:「通りすがりの人が気軽に愛せる」のはキャラにとっては強烈な武器になる

*2:個人的にはストーリーそのものよりもむしろ重要だと思っている。ストーリーはこの世界観のごく一部分なので