うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

【漫画感想】「憂国のモリアーティ」を6卷まで読んだので、良かった点と気になった点を語りたい。

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コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズシリーズ」を原作・原案にした「憂国のモリアーティ」を既刊6卷まで読んだ。

 

 原作は余り関係なく、若き日のモリアーティが活躍する話で、内容自体はオリジナルなのかなと思っていたが、読んでみたら意外にもがっつり原作を踏襲する内容だった。

モリアーティだけではなく、部下のモラン大佐、ポーロックも出てくる。ホームズサイドもワトソンはもちろん、ハドスンさん、マイクロフト、レストレード警部などおなじみの人たちがほとんど出てくる。

事件も、原作の事件をアレンジしたものが多い。

 

「モリアーティ教授」はウィリアム、アルバート、ルイスの三人で一人という発想は面白いなと思ったら、これも原作に準拠しているのか。知らんかった。

コナン・ドイルはモリアーティの設定をそんなに作りこんでいなかったようで、恐らく名前のかぶりや職業の違いはミスだと思うけれど、それをこんな風に設定に組み込んできたのは恐れ入った。

絵がかなり好きだ。

自分が子供のころ読んだ「ホームズシリーズ」では、骸骨みたいに痩せた幽霊のようだったモリアーティがこんな美青年になってしまうとは。

 

ホームズもめっちゃ恰好いい。

労働者階級の言葉も使える、って原作にもあったような…。バイオリンを弾いたり、原作の小ネタがまんべんなくちりばめられている。

 

 自分は細かいところはほとんど忘れてしまっているだけれど、これならば熱烈な原作ファンも納得して楽しめるんじゃないかなと思う。

原作も読み返したくなる。

 

気になったのは、エピソードごとの出来不出来の差が激しいところだ。

モリアーティが後ろから糸を引く事件は「横暴なふるまいをする悪い貴族を、恨みがある人物に協力して倒す」ずっとこのパターンだ。

ターゲットになる悪党が全員、判で押したように同じタイプなので、エピソードの読み味が全部一緒だ。途中で読むのを止めようかと思うくらい退屈だった。

 

特にそれが顕著だったのは、モランがメインになった「黄金の軍隊を持つ男」だ。

女王の大叔父でインド総督という大物だし、「私こそ真の愛国者だ」と大ゴマで啖呵を切っていたので、さすがに少しは違うタイプの悪かな?と思ったら、今までと同じような小悪党でむしろびっくりした。

この話は展開も予想から一ミリも外れたものではなく、退屈だった。

同じような話が続くと、エピソードに絡めて主要キャラを描こうとしても、同じような面からしかアプローチできないから、結局は深く堀り下げられない。

このエピソードはモランメインの話なのに、この話がなくても想像ができるような背景や性格しか描けていなくてもったいない。

 

これに対してホームズが初登場する「ノアティック号事件」やホームズとモリアーティが推理勝負をする「二人の探偵」、アイリーン・アドラーが 初登場する「大英帝国の醜聞」は面白かった。

特に「ボヘミアの醜聞」を元ネタにした「大英帝国の醜聞」は出色の出来だ。

アイリーンの人物像も良かったし、書類の中身と背景の陰謀の内容も面白かった。「フランス革命を英国が影で操っていた」「ロベスピエールはホームズの祖先」というのは、さすがに盛りすぎか?と思ったけれど、ロベスピエールがやったことをモリアーティたちが現代で行い、そのモリアーティたちとロベスピエールの子孫であるホームズが戦う、というこの構図は面白い。

アイリーンもモリアーティの一味に加わったし、先が楽しみだ。