歴史
ソ連で活動しているCIAの諜報員が「共産主義を歴史に登場させない」という目的のために、歴史に干渉してエンゲルスを有罪にしようとする。 そんな筋書きに興味を持って、小川哲の「嘘と正典」を読んでみた。 嘘と正典 (ハヤカワ文庫JA) 作者:小川 哲 早川書…
日本の歴史 (25) 太平洋戦争 (中公文庫) 作者:林 茂 中央公論新社 Amazon 太平洋戦争(十五年戦争)は、知れば知るほど何なんだろうなという思いが強くなる。 「戦争は自国も他国も含めて多くの人が犠牲になる、悲惨であり起こしてはいけないものだ」 そうい…
※この記事には「特攻の島」全9巻のネタバレが含まれます。未読のかたはご注意ください。 人間魚雷と言われた兵器「回天」に乗り込む若者たちを描いた「特攻の島」全9巻を読んだ。 特攻の島 完全版1 作者:佐藤秀峰 佐藤漫画製作所 Amazon 凄い話だった。 普…
日本の歴史 24 (中公文庫 S 2-24) 作者:大内 力 中央公論新社 Amazon 昭和恐慌の流れを読んでいると現代の状況と重なる部分が多い。 資本主義においてはだいたい同じようなことが問題として起こって、似たような流れになるのかなと感じたので、大まかにまと…
少し前に「済州島四・三事件」に興味を持った。 この事件は韓国でも長く触れられることのない件だったが、2000年代に入ってようやく公に解明しようという機運になった。 日本だと金石範の「火山島」が有名なので読んでみた。 火山島 1 作者:金 石範 文藝春秋…
オパールの炎 作者:桐野夏生 中央公論新社 Amazon 桐野夏生のインタビューを読んだことをきっかけに、ずっと読みたいと思っていた「オパールの炎」を読んだ。 一気読みしてしまった。 桐野夏生の作品は、何よりまず創作として抜群に面白い。先が気になって、…
戦前の共産党の組織はレーニンが作ったボルシェビキを元型としており、さらにボルシェビキはロシアで生まれた過激派組織「人民の意志」をモデルにして作られているという話を読んだ。 「人民の意志」に影響を与えたネチャーエフは、ドストエフスキーの「悪霊…
www.saiusaruzzz.com ↑の本を読み終わったタイミングで、ちょうどNHKで1998年に制作されたルワンダの虐殺についての番組を放送していたので、合わせて見てみた。 「なぜ隣人を殺したか」は、94年4月のジェノサイドの時に、幼い甥と姪を殺してしまった少年フ…
日本語で出版されている中では一番ルワンダで起こったジェノサイドについて詳細に描かれている「ジェノサイドの丘」を読み終わった。 ジェノサイドの丘〈新装版〉―ルワンダ虐殺の隠された真実 作者:フィリップ・ゴーレイヴィッチ WAVE出版 Amazon この本を読…
「100分de名著」で取り上げられて話題になったジーン・シャープ「独裁体制から民主主義へ ー権力に対抗するための教科書ー」を読んだ。 独裁体制から民主主義へ―権力に対抗するための教科書 (ちくま学芸文庫) 作者:ジーン シャープ,Sharp,Gene 筑摩書房 Amaz…
ビラヴド (ハヤカワepi文庫) 作者:トニ モリスン 早川書房 Amazon アフリカ系女性で初めてノーベル文学賞を受賞したト二・モリスンが、実際の事件を基に奴隷制度の傷痕について描いた話。 奴隷としての過去を持ち、現在は自由の身になったセサは、娘のデンヴ…
*前回。 www.saiusaruzzz.com これまで「自分は宮廷の権力闘争に興味はないし、藤原家の行く末もなるようになればいい」と距離を取っていた道長がいよいよ後に最高権力者になる片りんを見せ始めた。 痣だらけの顔の道兼と対峙した時、今まで通り気圧される…
立花隆の「日本共産党の研究(一)」を読んでいる。 日本共産党の研究(一) (講談社文庫) 作者:立花隆 講談社 Amazon その中に書かれたこの文章が良かった。 私の基本的な社会観はエコロジカルな社会観である。多様な人間存在、多様な価値観、多様な思想の…
「資本論」入門書二冊目「ゼロからの『資本論』」を読んだ。 ゼロからの『資本論』 (NHK出版新書) 作者:斎藤 幸平 NHK出版 Amazon 池上彰の本が「わかりやすく伝えること」を第一にしているのに対して、「ゼロからの『資本論』」は著者の視点や主張がかな…
竹田教授の哲学講義21講―21世紀を読み解く 作者:竹田 青嗣 みやび出版 Amazon ↑をもう一度読み直して、学んだこと考えたことのまとめ。 この本を三回通読して、自分が勘違いしていた*1と気付いた。 この記事では、自分が「哲学とはそういうものだったのか」…
経済学に何ができるか - 文明社会の制度的枠組み (中公新書) 作者:猪木 武徳 中央公論新社 Amazon メインは経済の話だが、それ以外もなぜそんな社会制度があるのか、どんなリスクに対応しているか、ということが書かれていて面白かった。 副タイトルである「…
地下鉄サリン事件、麻原彰晃逮捕後も教団に残った信徒の姿と各地で起こった住民による反対運動や住民と信徒の交流を追ったドキュメンタリー。 A Amazon 「A」は教団の広報副部長をしていた荒木浩*1を定点として追った作品だが、文字通り「映しているだけ」で…
火山島 1 作者:金 石範 文藝春秋 Amazon 二段組のページ構成で390ページなので、読むのが大変そうだなと思っていたが、意外や意外。長いとも思わずスルスル読めてしまった。 以下読んでいて面白いと思ったポイントと気になったポイント。 1巻の後半は主人公…
*ネタバレ注意。 綾瀬はるか主演、行定勲監督の「リボルバー・リリー」を観てきた。 映画『リボルバーリリー』公式サイト 良かった点 ①とにかく強くカッコよく美しい綾瀬はるかを撮りたいという目的が首尾一貫していた。 ②格闘シーンは見ごたえがあった。 ③…
www.saiusaruzzz.com 「火山島」の第一章を読み終わった。 第一章を読み終わった時点でも「知識としてはうっすら知っているけれど、詳しくは知らなかった」と思うことが多い。 創作は歴史そのものではなくあくまで創作として読まないと危ういけれど、その反…
読売新聞の「朝鮮戦争休戦七十年の特集」の番外編として、四人の識者が今後の朝鮮半島について見解を寄せている。 「現在の北朝鮮の体制は、そろそろ崩壊するのではないか」 「韓国の尹政権は北朝鮮との対話の窓口を閉ざしている。それは危うい」 など色々な…
暴君~新左翼・松崎明に支配されたJR秘史~ 作者:牧久 小学館 Amazon 「無力な労働者たちが結束して、自分たちを抑圧する権力(会社・経営者)と戦う」 内輪もめや内部分裂や裏切りや労使協調はあっても、労働運動は基本的にはこういうものだと思っていた…
www.hayakawabooks.com 朝イチでコーマック・マッカーシーの訃報を目にした。 もう89歳だったんだな。 一時期Twitterで流行っていた「名刺代わりの小説10選」を作るとしたら、必ず入るのがマッカーシーの「ブラッド・メリディアン」だ。 こんな小説を自分も…
竹田教授の哲学講義21講―21世紀を読み解く 作者:竹田 青嗣 みやび出版 Amazon 個々の人物の思想の説明もわかりやすく面白かったけれど、それ以上に「哲学を読む時にどういう角度で読むべきか」「哲学とはそもそも何なのか」という話が面白かった。 その中で…
年末に見逃した「帝銀事件と松本清張」が、たまたまテレビをつけたら放映していたので視聴。見たのは第二部のドキュメンタリー部分。 www.nhk.or.jp 結局「帝銀事件」の真相は未だに分かっていない。 731部隊の人間が、秘密兵器の実験を行っていた登戸研究所…
文藝賞の最終候補になり単行本化が決まっていたが、抗議によって急遽発売中止になったいわくつきの作品。 パルチザン伝説 作者:桐山 襲 河出書房新社 Amazon 東アジア反日武装戦線が起こした事件をモデルにしているため、抗議を受けて発売が困難になったらし…
www.saiusaruzzz.com www.saiusaruzzz.com 戦後の左翼の歴史を追う池上彰と佐藤優対談本の三冊目。 1970年前後を境に学生運動を中心とした新左翼の活動は衰退していき、左翼の活動は労働運動に主戦場を移していく。 三冊目では、左派(の理念)がなぜここま…
前巻の感想。 www.saiusaruzzz.com 激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972 (講談社現代新書) 作者:池上彰,佐藤優 講談社 Amazon 戦前からの左翼の歴史を振り返った「1945-1960」に続いて、「激動 日本の左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」…
池上彰と佐藤優の対談形式の本「真説 日本左翼史 戦後左派の源流」の一冊目、1945-1960の歴史を読んだ。 真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960 (講談社現代新書) 作者:池上彰,佐藤優 講談社 Amazon 共産党の除名問題の時に「新左翼が起こした…
先日買った「世界」3月号に、「冷戦期の大量殺害をグローバルに考察する」というタイトルで「ジャカルタ・メソッドー反共産主義十字軍と世界を作りかえた虐殺作戦」を紹介している記事があった。 共産主義思想への弾圧は戦前の話は比較的伝わってきている。…