うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

映画

【映画感想】森達也監督「A/A2」 社会が自分から見て整然として理解できるように見えるときこそ、おかしいと思わなければいけないのかもしれない。

地下鉄サリン事件、麻原彰晃逮捕後も教団に残った信徒の姿と各地で起こった住民による反対運動や住民と信徒の交流を追ったドキュメンタリー。 A Amazon 「A」は教団の広報副部長をしていた荒木浩*1を定点として追った作品だが、文字通り「映しているだけ」で…

【映画感想】「リボルバー・リリー」の良かった点と不満だった点

*ネタバレ注意。 綾瀬はるか主演、行定勲監督の「リボルバー・リリー」を観てきた。 映画『リボルバーリリー』公式サイト 良かった点 ①とにかく強くカッコよく美しい綾瀬はるかを撮りたいという目的が首尾一貫していた。 ②格闘シーンは見ごたえがあった。 ③…

【映画感想】「シン・仮面ライダー」 細かい粗は山のようにあっても、この話が好きだと思った理由。

*ネタバレ感想です。未視聴のかたは注意。 シン・仮面ライダー 池松壮亮 Amazon 「シン・仮面ライダー」がアマプラ対象になっていたので早速視聴した。 見ているあいだ、「何かに似ているな」と思った。 思い出したのがこれだ。 CASSHERN 伊勢谷友介 Amazon…

【小説感想】「ノーカントリー・フォー・オールド・メン」はどんな話なのか。殺し屋シガーが何者なのかを考えながら語りたい。

*ネタバレ感想です。未読のかたはご注意ください。 ノー・カントリー・フォー・オールド・メン (ハヤカワepi文庫) 作者:コーマック マッカーシー 早川書房 Amazon ">「ノー・カントリー・フォー・オールド・メン」(以下「ノーカントリー」)は映画化もされ…

佐藤究のマッカーシーの作品の解説にいいねを百連打したい&「ブラッド・メリディアン」の感想続き。

www.hayakawabooks.com 「それな!」という感想しかなく(失礼)いいねを百個くらい押したい。 特に文章に言及した箇所には共感しかない。 どのページを開いてもおわかりのように、コーマック・マッカーシーは会話にカギ括弧を使わず、地の文に読点をほとん…

【映画感想】「MERU/メルー」 人がなぜ山に登るかはわからないがこの映画は凄い。

MERU/メルー (字幕版) コンラッド・アンカー Amazon 正確には映画ではなくドキュメンタリー。 ヒマラヤ山脈の中で前人未踏だった、「MERU/メルー」に三人の登山家が到達するまでの話だ。 有名なエベレストはネパール側からシェルパなどの協力を得て登るが…

【小説感想】高山真「エゴイスト」 恋愛小説かと思いきや……。読後にタイトルの意味を考えて深く頷いた。

鈴木亮平主演で映画化された「エゴイスト」の原作を読んだ。(映画は未視聴) 鈴木亮平の寄稿文によると、作者にRと呼ばれる恋人がいたこととその母親と交流があったことは事実らしいが、「小説」と銘を打っているので「小説として」読んだ感想を書きたい。 …

【映画感想】「THE FIRST SLAM DUNK」は、原作と何が違うのかを熱く語りたい。

*本記事には映画「THE FIRST SLAM DUNK」、漫画「SLAM DUNK」のネタバレが含まれます。ご注意ください。 【映画パンフレット】 THE FIRST SLAM DUNK 監督:井上雄彦 声の出演:仲村宗悟、笠間淳、神尾晋一郎、木村昴、三宅健太 スラムダン…

【映画感想】「罪の声」 前半はスピーディな謎解き展開が面白い。後半は犯人たちの行動に「?」となる。

*ネタバレあり。未視聴のかたは注意。 罪の声 小栗旬 Amazon 未解決のまま時効を迎えた「グリコ・森永事件」をモデルにした話。 前半は、一本の糸を引っ張ると芋づる式に謎が次々と明らかになっていくスピーディーな展開が面白い。 冷静に考えれば、いくら…

【映画感想】「シン・ウルトラマン」シンプルでいながら一本芯が通ったストーリー。特撮やウルトラマンに興味がなくても面白かった。

*本記事にはネタバレが含まれます。未視聴のかたはご注意下さい。 シン・ウルトラマン 斎藤工 Amazon 「シン・ゴジラ」が面白かったし、休みだし観てみるか、くらいの軽い気持ちで見出した。 意外や意外、まったく前知識のない人間でも開始五分で話にのめり…

【映画感想】「すずめの戸締まり」に色々と疑問や不満を感じたので語りたい。

「すずめの戸締まり」を観てきた。 リアルで知人から「面白かったか?」と聞かれたら、「けっこう面白かった」と答えると思う。 これはこれで素直な感想だ。 ただリアルではたぶん話さない、クソ面倒臭い疑問や不満もあるので、聞いてもいいという人は良かっ…

「ほう、では見せてもらおうか。お前が言う『他者を真剣に知る』とは何なのかを」(2022年11月16日(水)読売新聞掲載の新海誠のインタビューの感想。)

イキリタイトル済みません、新海作品のファンです。(秒で謝る) 2022年11月16日(水)の読売新聞に「すずめの戸締まり」と過去作品について、新海誠のインタビューが掲載されていたのでそれを読んだ感想。 新海誠の作品は、「自分にとってのみの世界の意味…

【映画感想】「竜とそばかすの姫」 細田守作品がなぜ面白く思えないのか。その理由を小一時間考えてみた。

※この記事には「竜とそばかすの姫」のネタバレが含まれます。未視聴のかたはご注意下さい。 ※タイトル通り、否定的な内容です。 竜とそばかすの姫 中村佳穂 Amazon 細田守の作品は「バケモノの子」以外は全部観ているが、観るたびに一体、なぜ面白くないのだ…

映画「容疑者Xの献身」を通算五回は観ている人間の、超個人的物語解釈&泣きポイント。

※本記事には映画「容疑者Xの献身」のネタバレがあります。ご注意下さい。 容疑者Xの献身 福山雅治 Amazon 映画「容疑者Xの献身」*1を見るのは、通算五回目くらいだ。 この話の個人的な解釈を以前noteに書いたが、今回観て少し考えが変わった部分もあるので…

【映画感想】芦田愛菜主演「星の子」 社会と教団に共通する構造を、新興宗教信者二世の少女の視点を通して暴く傑作

*映画「星の子」のネタバレがあります。未視聴のかたはご注意下さい。 星の子 芦田愛菜 Amazon 現在、元首相殺害事件に関連して「宗教二世問題」が注目されている。 自分が見たところでは、「星の子」は「宗教二世問題」ではなく、*1それをモチーフにしてま…

【映画感想】「アメリカが最も恐れた男・プーチン」 プーチンの経歴とロシアの時事を追うには便利だが、視点の偏りが難点。

アメリカが最も恐れた男 "プーチン" Evgeniya Albats Amazon ウクライナ侵攻よりも前の2018年の作品。 時間が1時間25分と短めなので、手軽に見れる。 いいところとしては、プーチンの経歴とロシアの時事との関係が非常にわかりやすい。 KGBに入隊して、旧東…

【映画感想】「ちょっと思い出しただけ」 そもそも別れた人の誕生日って、覚えているものなのか?

池松壮亮と伊藤沙莉が演じる元恋人同士の二人が、付き合っていた頃の六年間を思い出すラブストーリー。 監督脚本が「君が君で君だ」の松居大悟だったので、期待値高めで見始めた。 *ネタバレ注意。 ちょっと思い出しただけ 池松壮亮 Amazon 驚くくらい何も…

【アニメ感想】「整形水」 韓国発のサイコスリラー。「何だ、このテンプレ話は」と思っていたらオチで仰天した。

韓国のアニメ映画「整形水」をアマプラで視聴した感想。 整形水(字幕版) Moon Nam-sook Amazon 不美人な容貌のせいで周りから蔑まれる不遇な立場にある、メイク係のイェジの下に、塗るだけで姿形を変えられる「整形水」の紹介メールが届く。 長い間、容貌…

「ハイコンテクストだからこそ意味を考えたくなるコンテンツ」について。

「ハイコンテクストすぎて意味がわからん」と途中で投げ出すものもあれば、「ハイコンテクストだからこそ意味を考えたくなる」ので、何度も通読して寝食も忘れて文章ひとつ、語ひとつの意味まで考えたくなる作品もある。 今回は後者の「ハイコンテクストだか…

【映画感想】映画「ドライブ・マイ・カー」は原作の謎解きだったが、解釈違いが辛かった。

*タイトル通り、基本的に否定的な内容です。 *ネタバレあり感想です。未視聴のかたはご注意下さい。 ドライブ・マイ・カー インターナショナル版 西島秀俊 Amazon *記事内の青字は、映画・原作からの引用。 映画「ドライブ・マイ・カー」は原作の謎解きを…

【小説感想】村上春樹「ドライブ・マイ・カー」を読み直して気付いた文章の凄さ。

ゴールデン・グローブ賞を受賞した記念に、「女のいない男たち」に収録されている「ドライブ・マイ・カー」をもう一度読み直した。 女のいない男たち (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon 監督の濱口竜介は、原作に強く惹きつけられて映像化したくなっ…

【映画感想】「君が君で君だ」 七割くらいの人にとってnot for meの作品だと思うが、自分にとっては素晴らしい作品だったので全力で語りたい。

*本記事には「君が君で君だ」とネタバレが含まれます。未視聴のかたはご注意ください。 この映画の粗筋は、 同じ女の子を好きな三人の男が、女の子が好きな「尾崎豊」「ブラッド・ピット」「坂本竜馬」にそれぞれなりきって、生活を見守るために、その子の…

「秒速5センチメートル」は補陀落渡海の話ではないか、と今さら気づいた。

www.saiusaruzzz.com (前提)「秒速5センチメートル」がこういう話に見える、自分の思いつきの話。 補陀落渡海は、入口を塗りこめた箱を舵のない船に積んで、そこに人が入り極楽浄土を目指して沖に流すという風習だ。 補陀落渡海 - Wikipedia 補陀落渡海を…

【映画感想】「ミッドサマー」 「旧劇場版エヴァンゲリオン」とテーマが被っているが、結論が違うところが面白かった。

*本記事には「ミッドサマー」のネタバレが含まれます。未視聴のかたはご注意下さい。 ずっと観たいと思っていた「ミッドサマー」を観た。 ミッドサマー(字幕版) フローレンス・ピュー Amazon 観る前は「2時間30分か。長いな」と思っていたが、観始めたら…

【映画感想】「ジョーカー」 「狂っているのは世界なのか、私なのか」という永遠の命題に答えた傑作。

*この記事は映画「ジョーカー」の結末までのネタバレが含まれています。 今さらだけど「ジョーカー」を見た。 凄くよかったので、未視聴の人は、感想を読む前に見て欲しい。 読みやすさを優先して断言調で書いているが、ただの個人的な感想だ。 ジョーカー(…

【漫画感想】和久井健「東京卍リベンジャーズ」の一巻を読んだら、人気にたがわず面白かったので既刊23巻を大人買いした。

*一巻のみ若干のネタバレがあります。 「東京卍リベンジャーズ」は支部で凄い人気なので気になっていたが、最近は「漫画は完結したら読もう」と思っているので、読んでいなかった。 先日ちょうど相方と「最近、ヤンキー漫画*1って見かけなくなったな」と話…

【映画感想】細田守監督「未来のミライ」を面白く見るたったひとつの方法

自分は細田守監督作品とは余り相性がよくない。 「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」と三作観て、「自分には合わないな」と思ったので、その先の作品は観ていなかった。(「時をかける少女」は良かった。) 今更ながらアニメ映…

【小説感想】村上春樹「女のいない男たち」 自分の特異性をどうやりくりしていくか。

公開された「ドライブ・マイ・カー」のPVが良かったので、久しぶりに読んでみた。 女のいない男たち (文春文庫) 作者:村上春樹 発売日: 2016/10/07 メディア: Kindle版 映画はコロナが治まっていたら見に行きたいけれど……どうかな。 ひとつひとつの話を読み…

【アニメ感想】代わり映えしないからこそ、いつでも迎えてくれる場所「空の青さを知る人よ」

アマプラで「空の青さを知る人よ」を見た。 「公開当時見ておけば良かった」とずっと思っていたので、見れて良かった。 空の青さを知る人よ 発売日: 2020/06/10 メディア: Prime Video 全体の印象としては、「誰かに支えられているとはどういうことなのか」…

【映画感想】「翔んで埼玉」に見る「埼玉県民は埼玉を知らない」というリアリティ

翔んで埼玉 発売日: 2019/09/11 メディア: Prime Video 面白かった。 無茶苦茶なコメディか、と思いきや、意外と王道のストーリー展開だった。 麗の配役にGACKTを思いついた人は天才だと思う。 一番笑ったのは流山で対峙した千葉の軍勢の中に、チーバくんと…