うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

小説

好きな作家のおススメの作品を聞かれたときの、永遠とも思える五分間の思考。

先日、友達から 「仕事関係の人が、綾辻行人の作品を初めて読んで面白かったって言っていた。読んでみようかと思って、うさるが好きだって言っていたのを思い出した。おススメの作品ある?」 というlineがきた。 一瞬でテンションのメーターが振り切れた。 …

ノーベル賞作家が描く殺人という運命。ガルシア=マルケス「予告された殺人の記録」

犯人が誰かはわかっていた。 犯人が殺害を決意していることを、町中のほとんどの人が知っていた。 どうやって殺そうとしていたかも知っていた。 なぜ犯人が相手を殺すのかも知っていた。 犯人自身が話していたからだ。 それにも関わらず、被害者は犯人によ…

【小説感想】高橋克彦「炎立つ」は、「この歴史の先に現代がある」ことを実感させてくれた。

高橋克彦の「炎立つ」全5巻を読み終わった。 炎立つ 全5冊合本版 (講談社文庫) 作者:高橋克彦 発売日: 2017/08/18 メディア: Kindle版 傑作と名高いのもうなずける。 すごい話だった。 「炎立つ」は、異なる年代の主人公三人の話を通して、奥州藤原氏の勃…

小説版「犬鳴村」を読んで、「怖い」という感覚はどこから来るのか話したくなった。

映画化されて話題になっている「犬鳴村」の小説版を読んだ。 犬鳴村 [小説版] (竹書房文庫) 作者:久田樹生 出版社/メーカー: 竹書房 発売日: 2020/01/16 メディア: Kindle版 話としてはよくできていて、特に引っかかりもなくすらすら読めた。 怖さを求めて…

【「炎立つ」キャラ語り】「世界を変える異能を持ちながら、性格は小者」源頼義の人物像が面白い。

「炎立つ」第一部の粗筋は、俘囚と理不尽に蔑まれながらも、必死に自分たちの民や国を守る阿倍氏の領土に、朝廷や源氏が自分たちの欲望や保身のために攻め込むというものだ。 個人的には主人公サイドである阿倍氏陣営よりも、敵役である源頼義陣営のほうがず…

【「炎立つ」キャラ語り】世界が強いる「物分かりいい症候群」と戦う流麗がカッコいい。

前九年の役、後三年の役、奥州藤原氏の隆盛と滅亡がわかりやすく描かれている。 大河ドラマでも屈指の名作と名高い、「炎立つ」の小説版を読んでいる。 炎立つ 壱 北の埋み火 (講談社文庫) 作者:高橋 克彦 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1995/09/06 メデ…

小部隊の戦術学が楽しく学べる「愚者の渡しの守り タイムループで学ぶ戦術学入門」感想

愚者の渡しの守り: タイムループで学ぶ戦術学入門 作者:アーネスト・スウィントン 出版社/メーカー: 国家政策研究会 発売日: 2018/03/25 メディア: Kindle版 経験が浅い青年士官が本隊が来るまで、河の唯一の渡河地点「愚者の守り」を50名の小部隊を指揮して…

ミステリーをメタ視点で読み解く面白さ「ロジャー・アクロイドは、なぜ殺される? ー言語と運命の社会学ー」を紹介したい。

アガサ・クリスティの代表作で、超有名なトリックが使われている「アクロイド殺し」を、物語の構造や言説、表紙や献辞を含めた本そのものの作り、クリスティが当時置かれていた状況や人生などから、多角的に読み解く、という非常に面白い本。 アクロイド殺し…

「犯罪者には田中が多い」が面白かったことと文章について思うこと。

kakuyomu.jp 昨日、はてブであがっていたこれが面白かった。 差別の構造を皮肉っていながら、それをまったく気にしなくても読めるエンターテイメントに仕上がっている。 短編でこれができるってどういう力量だ、と思ったら、作者は既に商業作品を出している…

村上春樹「国境の南、太陽の西」は、なぜあんなクソみたいな奴が主人公なのだろう。

国境の南、太陽の西 (講談社文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1995/10/04 メディア: 文庫 購入: 15人 クリック: 230回 この商品を含むブログ (285件) を見る 「国境の南、太陽の西」を初めて読んだときの、なんとも言えない嫌悪と困惑…

漫画版「十角館の殺人」1巻が発売。読んでみたら、やっぱり面白い。

「十角館の殺人」が漫画になっていた。 TwitterのTLで綾辻行人が「漫画版『十角館の殺人』の一巻が発売されました」とつぶやいていたのを見かけたので、さっそく購入して読んでみた。 十角館の殺人(1) (アフタヌーンコミックス) 作者: 綾辻行人 出版社/メ…

MBTIのタイプにおける典型的なキャラとそれについての雑談(その2)

www.saiusaruzzz.com 前に書いたこの記事の続き、というか補足。 記事を書いたあとに思いついたことやキャラについて。 *創作の中の話に限定しています。書いてあることはすべて個人的な考えです。専門家ではないので、雑談程度に読んでください。 NTJ世界…

コバルト文庫の思い出。

「コバルト文庫はラノベかどうか」というまとめを見つけて、コバルト文庫のことを思い出した。 自分が当時読んでいた、コバルト文庫の思い出を気ままに語りたい。 コバルト文庫を知ったきっかけは、ゲームブックまでさかのぼる。 小学生のとき、創元社のゲー…

【小説考察】アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」の事件と犯人を細かく検証してみた。

*本記事には、アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」の重大なネタバレが含まれています。本編未読のかたは、本編から読まれることをお勧めします。 そして誰もいなくなった (クリスティー文庫) 作者: アガサ・クリスティー,青木久惠 出版社/メーカ…

「紅蓮館の殺人」の解決部分の説明が、なぜおかしく感じたのかをもう少し考えてみた。

www.saiusaruzzz.com 前回の「紅蓮館の殺人」の感想の続き。ネタバレがあるので注意。 「犯人の行動(犯行を含む)の根拠に犯人の性格を持ってきているけれど、それは根拠にならないのでは」ということを書いた。 タイムリーな記事を読んだので、補足的に考…

【小説感想】館が燃え落ちるまで残り35時間。事件を解決できるか。阿津川辰海「紅蓮館の殺人」

山火事に巻き込まれて逃げ込んだ館で起こった、吊り天井による殺人事件。館が燃え落ちるまでの残り35時間で、殺人事件を解決し、館から脱出することができるか。 「タイムリミット」「クローズド・サークル」「吊り天井」このあたりのワードで興奮した人は、…

リアリティ溢れる警察小説・奥田英朗「罪の轍」の映画化、ドラマ化を熱望する。

罪の轍 作者: 奥田英朗 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/08/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 1963年に起こった「吉展ちゃん誘拐事件」をモデルにして描かれたフィクション。 幼いころ義父から虐待された影響で脳機能に障害を抱え、周…

アガサ・クリスティの後継者と謳われるP・D・ジェイムズのデビュー作「女の顔を覆え」感想

P・D・ジェイムズの「女の顔を覆え」を読んだ。 女の顔を覆え (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 129-6)) 作者: P・D・ジェイムズ,山室まりや 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1993/05 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る P・D・ジェイムズ…

田中芳樹「灼熱の竜騎兵」(レッド・ホット・ドラグーン)の続きを妄想してみた。

灼熱の竜騎兵 1 (EXノベルズ 35-1) 作者: 田中芳樹,北爪宏幸 出版社/メーカー: エニックス 発売日: 2002/08 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 「灼熱の竜騎兵」既刊のおさらい 2504年、惑星ザイオンは建前上は自治権を認められていたが、…

【ドラマ感想】池井戸潤原作「ノーサイド・ゲーム」を最終回まで見た感想

昨日、池井戸潤原作、大泉洋主演「ノーサイド・ゲーム」が最終回だった。 【Amazon.co.jp限定】ノーサイド・ゲーム Blu-ray(オリジナルミニポーチ付) 出版社/メーカー: アミューズ 発売日: 2020/01/10 メディア: Blu-ray この商品を含むブログを見る ラスト…

【ドラマ感想】宮部みゆき原作「楽園」のここが気になる。

宮部みゆき原作、仲間由紀恵主演「楽園」を見た。 第1話 メディア: Prime Video この商品を含むブログを見る あらすじ 住宅街で発生した火事によって焼け出された土井崎夫妻は「16年前、中学生だった娘を殺害し、床下に埋めて生活していた」と告白した。 殺…

【映画感想】竹内結子主演「残穢ー住んではいけない部屋ー」は、原作ファンにも原作未読層にもおススメの面白さ。

Amazonプライムビデオで小野不由美原作の「残穢ー住んではいけない部屋ー」を見た。 残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋― 発売日: 2016/06/09 メディア: Prime Video この商品を含むブログを見る すごくよかった。 原作では少しわかりにくい「穢れの伝染の…

「ノーサイド・ゲーム」の第七話にモヤモヤする。「社会人としてどうなんだ」ってどうなんだ。

www.tbs.co.jp 第七話で、「サイクロンズに移籍する」と言い出した里村に対する君嶋の説得と、そのあとの展開にだいぶモヤモヤした。 君嶋は里村を説得するにあたって、里村がラグビーをするために会社や他の社員たちが払った労力を持ち出している。それを無…

姉妹が死んだ理由を考える話かと思いきや。「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」

何十年か前に同級生だったリズボン家の十代の五人姉妹が全員自殺した事情を関係者に聞きながら、当時のことを思い出す話。 何かの事象が起こった理由を、色々な立場の人の話を聞きながら探り当てる話、いわゆる「藪の中」系統が大好きなのであらすじに惹かれ…

モームが語る「ドストエフスキーが描く女性像は偏っている」について

anond.hatelabo.jp 結論としてこうなる。Fateに感じる気持ち悪さは、那須きのこ氏が人間を描けていないからだ。 どこかで似たような話を聞いたことがあるな、と考えて、モームが「世界の十大小説」の中でドストエフスキーについて似たようなことを話している…

【MBTIを用いてキャラ語り】創作における内向感情型について INFP(ロイエンタール)対ISFP(尾形)

MBTIを用いたキャラ語り。 *創作の中の話に限定しています。専門家ではないので、雑談程度に聞いてください。 参考文献は記事末尾に掲載。 内向感情を主機能として使うINFPとISFPのキャラについての、個人的な考え。 内向感情型のひとには、「静かな水は深…

読者を「暴力と流血の歴史」に基づいた仮説的世界の神にする。コーマック・マッカーシー「ブラッド・メリディアン」

「ザ・ロード」の興奮を引きずったまま、「越境」に引き続き、「ブラッド・メリディアン」を読んだ。 ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤 (ハヤカワepi文庫) 作者: コーマックマッカーシー,黒原敏行 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2018/08…

誰かが「災厄」になることを食いとめる「家族という関係性が病んでいる」という考えかた

www.saiusaruzzz.com 前回、「ゴールデンカムイ」の尾形は、アダルトチルドレンの類型のひとつであるスケープゴートではないか、という記事を書いた。「今の時点では自分にはそう読める」というその解釈に基づいて、今回の記事を書いている。 尾形は気の毒…

村上春樹・柴田元幸「本当の翻訳の話をしよう」を読んで、黒原敏行の翻訳にだいぶお世話になっていることに気づいた。

本当の翻訳の話をしよう 作者: 村上春樹,柴田元幸 出版社/メーカー: スイッチパブリッシング 発売日: 2019/05/09 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 村上春樹と柴田元幸の翻訳についての本を読むのは、「翻訳夜話」「翻訳夜話2 サリンジャー戦記…

コーマック・マッカーシー「ザ・ロード」が素晴らしかったので、個人的な解釈を語りたい。

映画化もされたコーマック・マッカーシーの「ザ・ロード」を読んだ。 ザ・ロード (ハヤカワepi文庫) 作者: コーマック・マッカーシー,黒原敏行 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2010/05/30 メディア: 文庫 購入: 11人 クリック: 54回 この商品を含むブロ…