うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

小説

「ナイルに死す」の新訳(黒原敏行訳)が欲しい&翻訳について思ったこと。

最近出版されたアガサ・クリスティーの「ナイルに死す」の新訳の訳者が、黒原敏行だった。 ナイルに死す〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 15) 作者:アガサ・クリスティー 発売日: 2020/09/11 メディア: 文庫 硬質な純文学を訳すことが多い、という…

【銀河英雄伝説キャラ語り】ビュコックとメルカッツはどちらが強いのか? から始まる雑談。

銀河英雄伝説の同盟側ではビュコックとアッテンボローが好きだ。 昔々メルカッツが一番好きな兄ちゃんと「ビュコックとメルカッツは、艦隊戦で戦ったらどちらが強いのか?」というテーマで語り合ったことがある。 子供のときって本当暇だったよなあ、と言い…

漫画版「十角館の殺人」2巻感想。コミカライズの面白さは、作画者の解釈が楽しめるところ。

漫画版「十角館の殺人」2巻が発売された。 十角館の殺人(2) (アフタヌーンコミックス) 作者:綾辻行人 発売日: 2020/08/21 メディア: Kindle版 第一の殺人が起こり、いよいよ話が始まった感がある。 二巻を読んでいて不思議な感覚に襲われた。 「先が楽し…

自分が好きなものには、自分のためにおけけパワーしていきたい。

話題になったおけけパワー中島。 突如トレンド入りした「おけけパワー中島」とは、同人女たちの深い業をすべて背負い心を搔き乱す「概念」だった…様々な考察集まる - Togetter 先日、「感想がもらえないので筆を折る」という作家の文章を読んだ。 そのこと自…

【小説感想】「タタール人の砂漠」多くの人にとって普遍的な人生の話&カフカについて

タタール人の砂漠 (岩波文庫) 作者:ブッツァーティ 発売日: 2013/04/17 メディア: 文庫 街の人々から忘れ去られた辺境の砂漠の砦に配属された青年将校が、「いつか来る」と言われている「タタール人の襲来」を待ち続ける話。 「イタリアのカフカと称される」…

【小説感想】ミステリー×民族学×幻想×ハイデガー 奥泉光「葦と百合」

*ネタバレ注意。 葦と百合 (集英社文庫) 作者:奥泉光 発売日: 2014/11/07 メディア: Kindle版 (あらすじ) 学生時代、自然と共生するコミューン「葦の会」に入って音信が途絶えた恋人と友人のことを思い出し、式根はその跡地を訪れる。 しかし「葦の会」…

奥泉光「ノヴァーリスの引用」アンチミステリの皮とかぶった精神的な殺し合いに厨二が瀕死の重傷を負う。

ノヴァーリスの引用/滝 (創元推理文庫) 作者:奥泉 光 発売日: 2015/04/26 メディア: 文庫 天気がいいから散歩していたら、突然横からきたダンプカーにはねられた。 どうせいつかは通る道だから、もしくは通ってきた道だからと言っても読みたい気分のときに読…

奥泉光「滝」別解。「松尾犯人説」を考えてみる&まとめ

ノヴァーリスの引用/滝 (創元推理文庫) 作者:奥泉 光 発売日: 2015/04/26 メディア: 文庫 どこまでやるんだという感じだが、せっかくなのでとことん考えてまとめてみた。 感想その1。 www.saiusaruzzz.com 感想その2。 www.saiusaruzzz.com ミステリー風に…

奥泉光「滝」の自分の感想を読んだらまったくしっくりこないので、もう一度考え直してみた。

www.saiusaruzzz.com 書いた直後から「いやでも、ちょっと違うんじゃないか」という気がしていた。 何だかピンとこない。 この話は「神」がすごく重要な要素なのに、上の感想ではすっぽり抜け落ちている。そういう話なら、巡礼者ではなく普通の登山者でも成…

【小説感想】他人に自分の悪を引き受けさせ、狂わせる人間の恐ろしさ 奥泉光「滝」

罠と悪意にからめとられ、極限状態に追いつめられていく少年たちの心理を緻密に描き出した傑作と名高い「滝」(裏表紙紹介) 滝 作者:奥泉 光 メディア: 単行本 あらすじ とある宗教団の若者組の少年五人は修行の一環として、山岳の七つの神社を二泊三日かけ…

【小説感想】我孫子武丸「修羅の家」 「『モチーフにしている事件のほうを語りたくなる』という感想になってしまう」ところがどうなのか。

*ネタバレしているので、未読の人は注意。 *「殺戮にいたる病」のネタバレもしています。 修羅の家 作者:我孫子武丸 発売日: 2020/04/14 メディア: Kindle版 面白かっただけに、ちょっと残念。 帯を見たら、「殺戮にいたる病」を読んだことがある人はすぐ…

ウソップ視点で見た「ワンピース」みたいな話=「選ばれていない人」視点の話について。

主人公が最強でない作品 「ウソップが視点人物のONEPIECE」みたいなのが見たい つまり、ずっと一貫して弱ペダやバキみたいにならない作品 あるいは主人公に特殊な能力がほとんどないかあっても劇中世界では凡人に近いレベル。(イシドロ視点のベルセルクと…

天城一の密室分類で「かまいたちの夜」を考えてみた&雑談

*本記事には「かまいたちの夜」の重要なネタバレが含まれています。 かまいたちの夜 発売日: 1994/11/25 メディア: Video Game 天城一の密室犯罪学教程 (宝島社文庫) 作者:天城 一 発売日: 2020/07/04 メディア: 文庫 「天城一の密室犯罪学教程」を読んでい…

「信頼のできない語り手」と「信頼のできない視点」についての雑談

先日見た「かまいたちの夜」の解説動画の中で、「『かまいたちの夜』は選択肢を間違うと、主人公がプレイヤーにとって『信頼のできない語り手』に変貌する」という考えが述べられていて面白いなと思った。 「信頼のできない語り手」は何か作為があったり、も…

【小説感想】持たざる者の残酷な世界への叫び 「なしくずしの死」

なしくずしの死〈上〉 (河出文庫) 作者:ルイ‐フェルディナン セリーヌ 発売日: 2002/03/01 メディア: 文庫 なしくずしの死〈下〉 (河出文庫) 作者:ルイ‐フェルディナン セリーヌ 発売日: 2002/03/01 メディア: 文庫 反ユダヤ主義の差別的言動から国家反逆罪…

【ドラマ考察】「Nのために」のねじれまくっているストーリーの構造のすごさについて考えたい。

第1話 「セレブ夫婦殺人事件…15年前に隠された秘密」 メディア: Prime Video 湊かなえ原作・榮倉奈々、窪田正孝主演ドラマ「Nのために」を観終わった。 引きが強いサスペンスドラマとして面白いが、中盤からストーリー展開について「?」と思うことが多くなる…

「雲のように風のように」と「後宮小説」の思い出

*ネタバレあり。 www.twellv.co.jp 懐かしい。 もう一度見たくて、ずっとアマプラ対象にならないかと思っていたら、BSで7月1日(水)に放送されるそうだ。 「後宮小説」との出会いは、うちの親が仕事関係の付き合いで「第一回日本ファンタジーノベル大…

【小説感想】今邑彩「少女Aの殺人」はミステリーとしてもノワール小説としても良かった。

*この記事は今邑彩「少女Aの殺人」と宮部みゆき「火車」のネタバレを含んでいます。 昔読んだ「金雀枝荘の殺人」が面白かったことを思い出して、今邑彩「少女Aの殺人」を読んでみた。 少女Aの殺人 (中公文庫) 作者:今邑彩 発売日: 2012/12/19 メディア: Ki…

【小説感想】「ザリガニの鳴くところ」 主人公の相手役が一番ヤバい奴に見えて怖かった。

「2019年アメリカで一番売れた本」 「全米500万部突破、感動と驚愕のベストセラー」 「ザリガニの鳴くところ」を読んだ感想。 ザリガニの鳴くところ 作者:ディーリア・オーエンズ 発売日: 2020/03/05 メディア: 単行本(ソフトカバー) 1960年~70年代、差別…

ループする絶望を体感できるゲームブック「護国記」が面白かった。

久しぶりに「このゲームでしか味わえない面白さを味わえた」と思うゲームをプレイした。 護国記 (幻想迷宮ゲームブック) 作者:波刀風 賢治 発売日: 2018/10/21 メディア: Kindle版 不穏な空気はあるものの、それなりに平和だった「高ツ原五国」の壱の国に、…

文豪の未完のミステリー チャールズ・ディケンズ「エドウィン・ドルードの謎」の謎を考えてみた。

ディケンズがミステリーを書いていた、しかも未完、知らなかった…、ということでさっそく読んでみた。 エドウィン・ドルードの謎 (白水Uブックス) 作者:チャールズ・ディケンズ 発売日: 2017/01/26 メディア: Kindle版 結論から言うと「ミステリー」という…

好きな作家のおススメの作品を聞かれたときの、永遠とも思える五分間の思考。

先日、友達から 「仕事関係の人が、綾辻行人の作品を初めて読んで面白かったって言っていた。読んでみようかと思って、うさるが好きだって言っていたのを思い出した。おススメの作品ある?」 というlineがきた。 一瞬でテンションのメーターが振り切れた。 …

ノーベル賞作家が描く殺人という運命。ガルシア=マルケス「予告された殺人の記録」

犯人が誰かはわかっていた。 犯人が殺害を決意していることを、町中のほとんどの人が知っていた。 どうやって殺そうとしていたかも知っていた。 なぜ犯人が相手を殺すのかも知っていた。 犯人自身が話していたからだ。 それにも関わらず、被害者は犯人によ…

【小説感想】高橋克彦「炎立つ」は、「この歴史の先に現代がある」ことを実感させてくれた。

高橋克彦の「炎立つ」全5巻を読み終わった。 炎立つ 全5冊合本版 (講談社文庫) 作者:高橋克彦 発売日: 2017/08/18 メディア: Kindle版 傑作と名高いのもうなずける。 すごい話だった。 「炎立つ」は、異なる年代の主人公三人の話を通して、奥州藤原氏の勃…

小説版「犬鳴村」を読んで、「怖い」という感覚はどこから来るのか話したくなった。

映画化されて話題になっている「犬鳴村」の小説版を読んだ。 犬鳴村 [小説版] (竹書房文庫) 作者:久田樹生 出版社/メーカー: 竹書房 発売日: 2020/01/16 メディア: Kindle版 話としてはよくできていて、特に引っかかりもなくすらすら読めた。 怖さを求めて…

【「炎立つ」キャラ語り】「世界を変える異能を持ちながら、性格は小者」源頼義の人物像が面白い。

「炎立つ」第一部の粗筋は、俘囚と理不尽に蔑まれながらも、必死に自分たちの民や国を守る阿倍氏の領土に、朝廷や源氏が自分たちの欲望や保身のために攻め込むというものだ。 個人的には主人公サイドである阿倍氏陣営よりも、敵役である源頼義陣営のほうがず…

【「炎立つ」キャラ語り】世界が強いる「物分かりいい症候群」と戦う流麗がカッコいい。

前九年の役、後三年の役、奥州藤原氏の隆盛と滅亡がわかりやすく描かれている。 大河ドラマでも屈指の名作と名高い、「炎立つ」の小説版を読んでいる。 炎立つ 壱 北の埋み火 (講談社文庫) 作者:高橋 克彦 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1995/09/06 メデ…

小部隊の戦術学が楽しく学べる「愚者の渡しの守り タイムループで学ぶ戦術学入門」感想

愚者の渡しの守り: タイムループで学ぶ戦術学入門 作者:アーネスト・スウィントン 出版社/メーカー: 国家政策研究会 発売日: 2018/03/25 メディア: Kindle版 経験が浅い青年士官が本隊が来るまで、河の唯一の渡河地点「愚者の守り」を50名の小部隊を指揮して…

ミステリーをメタ視点で読み解く面白さ「ロジャー・アクロイドは、なぜ殺される? ー言語と運命の社会学ー」を紹介したい。

アガサ・クリスティの代表作で、超有名なトリックが使われている「アクロイド殺し」を、物語の構造や言説、表紙や献辞を含めた本そのものの作り、クリスティが当時置かれていた状況や人生などから、多角的に読み解く、という非常に面白い本。 アクロイド殺し…

「犯罪者には田中が多い」が面白かったことと文章について思うこと。

kakuyomu.jp 昨日、はてブであがっていたこれが面白かった。 差別の構造を皮肉っていながら、それをまったく気にしなくても読めるエンターテイメントに仕上がっている。 短編でこれができるってどういう力量だ、と思ったら、作者は既に商業作品を出している…