うさるの厨二病な読書日記

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【「エネアド(ENNEAD)」シーズン1考察】設定&疑問点からの考察まとめ。

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「エネアド(ENNEAD)」のシーズン1を読み返して設定と疑問点のまとめ、そこから考察をしてみた。(*シーズン1のネタバレあり。注意)

 

 

エジプト神話の死生観を頭に入れると、話が理解しやすい。

「エネアド」のストーリーは「エジプト神話」の死生観が大きく関わるが、特に詳しい説明がされずにそれが当たり前の前提として話が進む。

これを押さえておかないと話がわかりにくい。

 

「エジプト神話」において、人間は

カー=魂

バー=個性、人格

レン=名前

シュト=影(人の中に潜んでいるもの)

イブ=心臓

この五つの要素から出来ていると考えられていた。

 

人は死ぬと心臓(イブ)を天秤にかける「死者の裁判」を受ける。

イブは心臓。死後、人が生き返って永遠の命を得るために、心臓は決して失われてはならないものとされていた。人をミイラにして保存するのも、心臓を保つという理由からといわれている。

(引用元:「ゼロかわかるエジプト神話」かゆみ歴史編集部/株式会社イースト・プレス P26/太字は引用者) 

死者はカー(魂)とバー(個性)があわさった究極の形「アク」になることが出来れば、永遠の命を得て楽園で暮らすことができると考えられていた。(略)

万が一、天秤が偏った場合は、幻獣アミメトが心臓を喰らってしまい、死者は楽園どころか二度と生まれ変わることが出来なくなってしまう。

(引用元:「ゼロかわかるエジプト神話」かゆみ歴史編集部/株式会社イースト・プレス P26-28/太字は引用者) 

 

「エジプト神話」において、死ぬことは自然なことで避けることではない。カー(魂)とバー(人格)、イブ(心臓)を持った状態で死ねば審判を通過したあと、また生まれ変わればいい。

生まれ変わりを繰り返して「アク」(永遠の命)の状態になり、楽園にいくことを目指す。

真に恐ろしいのは、「死」ではなく「消滅」である。

魂が砕かれれば死者の流れに乗り、審判の場に行けない、また「アク」を得る可能性がなくなってしまうからだ。

死とは混沌の川の流れによって導かれるもの。

欲望のままその流れに逆らえば、その先に必ず何の罪もない者たちの犠牲がついてくる。

そこから生まれた呪いは我が(セトの)剣となり、また新たな死を生み出す。

(引用元:「エネアド」5話/MOJITO)

 

「魂」がドゥアトに行けない→呪いになる。

「魂」が砕かれる→消滅

 

(引用元:「エネアド」66話/MOJITO)

セトが犯した「『死者の秩序』を乱した罪」はこのことを指している。

魂を失うことは「死」ではなく「消滅」だ。一般的に言われる「死」は、「エネアド」の中では「消滅」のほうが近い。

「エジプト神話」で恐れられているのは「消滅」である。

 

シュト(影)と鏡、セクメトとハトホルの関係。

シュト(影)は人間を構成する五要素のうちのひとつであり、「人の中のネガティブな部分」を指している

ハトホルからホルスに贈られた鏡の設定は、このシュトと関連が深いのではと考えた。

鏡が光った瞬間、ホルスが我を忘れてセトを襲ったのは「シュト」が表に出たためではないか。

「人のネガティブな部分」を、セクメトは見透かし操ることができる。

あたしは厄災だから、他の誰より感情というものに敏感なの。

挫折、怒り、絶叫、寂しさ。

その全てがあたしの糧になる。(略)

それが君の前に、あたしがまた現れた理由。

(引用元:「エネアド」29話/MOJITO/太字は引用者)

セクメトは「人のネガティブな感情そのもの」だと考えてもいい。

だから「影(シュト)」に干渉することが出来る。

 

そう考えると、セトを襲った後のホルスとセクメトの会話も筋が通る。

「急に体が勝手に……。そんな無惨なことをどうして俺が……」(略)

「本当の望みではなかった。あんたもネフティスも。鏡に幻惑された被害者だ。(略)そぅ~、そういうことにしよう。で、そうしたら? 全部なかったことになる?」

「そ、それは……なりません」

(引用元:「エネアド」37話/MOJITO/太字は引用者)

セトを襲ったホルスは、鏡によって目覚めさせられた影(シュト)である。

ホルスが我を忘れる寸前に、鏡のセクメト?側の目が開く。その時にセトは頭を錐で刺されたような感覚を覚え、その直後ホルスはセトを襲う。

 

同様にネフティスも、鏡の外にいるネフティスは影(シュト)なのではないか

17話でホルスが鏡に入った時、ネフティスは第一声で「そんな馬鹿な。彼女がまた動きだしたのか?」と言っている。またホルスが鏡を出る時に、「ここを出た瞬間、彼女の舞台が始まることを忘れないで」(20話)と言っている。

この「彼女」はセクメトではないか、と思う。

 

ホルスが鏡に入った時は、鏡に彫られたセクメトではないほうの女性の目が開いている。

(引用元:「エネアド」17話/MOJITO)


セクメトの目が開く→シュト(影)が外に出る。

女性の目が開く→本体が鏡の中に入る。

こういう仕組みになっているのではないか。

 

「エジプト神話」は色々な説が入り乱れているが、その中のひとつにハトホルはセクメトと同一視されているという説がある。

この話が獅子の女神セクメトのエピソードとそっくりであることから見て取れるように、ハトホルはセクメトと関連づけられ、「ラーの目」としての役目を担った。

(引用元:「ゼロかわかるエジプト神話」かゆみ歴史編集部/株式会社イースト・プレス P159/太字は引用者)

立腹したラーが怒りをこめてえぐり取ったラー自身の右眼から、セクメトは誕生する。

(引用元:「ゼロかわかるエジプト神話」かゆみ歴史編集部/株式会社イースト・プレス P134/太字は引用者) 

セクメト=ハトホル=「ラーの目」なのだ。

 

ハトホルはセトから逃げる時に火を使い、セトはそのことを「あいつ、いつから火を使えるようになったんだ?」と怪訝に思っている。

(引用元:「エネアド」17話/MOJITO)

 

28話では、セクメトも火(らしきもの)を使っている。

(引用元:「エネアド」17話/MOJITO)

仮説としてセクメト=ハトホル=ラー(の目)と考えると、この三人は同じ目的を持って動いているのではと考えられる。

 

太陽神ラーの目的

セトたち四兄弟が生まれる前の神々は、「完璧な肉体と精神」を持っていた。

このことはホルスがアヌビスに、「神になる条件」として話をしている。

永遠に生きる神にとって、家族は不要な存在なはずです。(略)

人間のように生き、人間のように思考し、人間のように恋をするようになってから神たちは惰弱になりました。

我々が神になれなかった理由は、彼らと同じく惰弱だったから。

神として生きていけるほど、崇高ではないからです。

(引用元:「エネアド」62話/MOJITO/太字は引用者)

ラーは「惰弱な存在」であるセトたち四兄弟を仲間割れさせることで、神々を元の「崇高な存在」に戻そうとしているのではと思う。

 

そんな誓い、神にとってどんな得があるというの?

単身でも完璧な存在がそんな不完全な関係に縛られて(略)

元々神同士の関係にそんな余計な規則なんてなかったんです。

(引用元:「エネアド」70話/MOJITO/太字は引用者)

47話でオシリスが「無駄だ。最も偉大な太陽ですら、俺を殺せなかった」と言っているので、ラーはオシリスを消滅させたいと望んでいるが出来なかったと思われる。四兄弟を仲間割れさせることを思いついたのではないか。

 

セトたちが生まれる前、ラーは四兄弟の両親であるゲブとヌトの夫婦に「365日、どの日も子供を産んではならない」という呪いをかけている。

イシスはそれは「自分たち四兄弟がエジプトを治めるというトトの予言があったからだ」と思っていた。

しかし、トトの予言は「ゲブとヌトの子供が、エジプトの未来を変えるだろう」(64話)というものだった。トトはその予言でなぜラーが「二人の子供を産むことを禁じる」ような極端なことをしたのか訝しんでいる。

66話ではネフティス(影)が「私たちが神になった理由があるはず→元々は神ではなかった」とセトに話している。

 

ラーがオシリスに玉座を奪われたところから推測すると、元々の「単身で生きられる崇高な神々」と「人間のように生きる神になった四兄弟」の勢力争いが話の根底にあるよのではと思う。

 

その他の疑問

①第13話 イシスがハトホルの鏡について思い出した時の「待って、鏡? 何なの? この既視感は一体」の既視感は何なのか。

②第16話 ハトホルが「お母さまを味方につけられるのは私だけ」と言ったのはどういう意味か。→第11話でトトが「太陽神は誰の味方にもならない」と言っているが。

③第35話 セクメトが「すべての罠を完成させたのがネフティスだったら?」というのはどういう意味か。→恐らく訳の問題で本来は「セトのハマった罠の大きな要因が、ネフティスだとしたら?」くらいの意味ではないかと推測。

④第57話 イシスがナイル川を氾濫させ「好き勝手させない」と言った時に出てきたイシスの影は何なのか。→イシスが自分自身にかけた呪いかとも思ったが、「さっき、何かおぞましいものが」と正体がわかっていないようなので違うように見える。イシスのシュトでいいのかな。

⑤第64話 「太陽神はまだ、エジプトの維持を望んでいる」と言ったゲブに、イシスが「あなた、誰?」と言っているが、この時のゲブはゲブではないのか?

⑥第66話 セトたち四兄弟が「神になった」なら、彼らを神にしたのは誰(何)なのか?→「原初(エネアドでは太初)の神ヌン」だろうか。

⑦第66話 この時点でネフティスは自身の神格である「和合」をセトに与えているが、後に裁判で「神格(命)」をかけることと矛盾していないか。→自分はネフセト派なのでネフティスを疑いたくないが、表に出ているネフティスが「影」だとするとセトを陥いれている説もありうる。

⑦第72話 ラーがイシスに「譲るべきでしょう」と言った時に、イシスが感じた視線は誰のものか?

 

シーズン2が完結したらまた考えたい。

日本語版も書籍で出してくれないかな。

 

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今回考察してみた後の感想。

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