うさるの厨二病な読書日記

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【ドラマ「銀と金」】西条達也役の大東駿介の演技がすごすぎる&本編へのこうるさい文句

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毎週土曜日テレビ東京で放映中のドラマ「銀と金」についてです。

www.tv-tokyo.co.jp

見るうちにじょじょに不満が出始めた

一話は素晴らしいできで、原作の大ファンである自分も絶賛する記事を書きました。

ただ……絵画詐欺編あたりから、かなり不満が出始めていました。

その不満点について、具体的に書きたいと思います。

 

①性的な要素が多く、話が生臭い。

「銀と金」が特徴のひとつに、青年漫画でありながら性的要素がまったく出てこない点があります。

主人公の森田は「金と女が欲しい」と言ったり、ポーカー編の西条も「女の子をいただいちゃう」と言いながら、実際にはそういうシーンはまったく描写されません。

象徴的なのが、ポーカー編で美緒たちが西条にホテルに呼び出されたシーンです。イカサマポーカーで女の子を騙して「いただいちゃう」ような男なのに、西条はこのとき、美緒たちにいっさい性的なちょっかいを出しません。

普通の漫画なら森田との関係をからかうなどの生臭さを出しそうなものですが、そういうこともいっさいしません。

 

原作の「銀と金」で主要キャラの中で唯一の女性キャラである神威編の田中沙織も、「神威と愛人関係にある」とかそういう設定があっても良さそうなものですが、性的なことはいっさい臭わされません。田中というキャラは、男性キャラであっても代替可能なくらい女性的要素がありません。

登場人物たちが言っていることと比べると、この性的要素の排除ぶりは逆に不自然なくらいです。

 

別に、性的なシーンを入れること自体に反対しているわけではありません。

例えば「ゲーム・オブ・スローンズ」のような世界観であれば、露骨な性的シーンはむしろ必要不可欠だと思うくらいです。

 

ただ「銀と金」という漫画の世界観においては、「女を抱きたい」とか言いながら、まったく興味がなさそうなところ、性的な生々しさなどを排除したある種のストイックさは重要な要素だと思います。

このストイックさがあるから、「金も女も手に入れたいけれど、その欲望の先にあるものが見たい」という森田の言葉に強い説得力が生まれるのだと思います。

こういう要素のひとつひとつの積み重ねが、「最終的には、欲望の先にあるものを追求する」という物語の方向性のメタメッセージになっています。

 

「絵画詐欺編」で青木が女性化して中島の愛人だという設定も、むしろ設定としてはこちらのほうが自然だし、物語としても面白いと思います。

それなのに、なぜ原作だと青木は男なのか、という点を組んで欲しいんです。

西条たちが「女の子をいただいちゃう」シーンだって、ちょっと描写を入れておけば喜ぶ読者もいるかもしれません。それなのに、なんでそういうシーンを省いているのか、ということがすごく重要だと思います。

そういうことを別に原作者も狙ってやっているわけではないとは思いますが、そういう要素の積み重ねが「銀と金」の世界を作っているんだと思います。

 

こんな生臭い話……「銀と金」じゃない。

青木の女体化といい、ポーカー編の露骨な性的シーンといい、本当にがっかりしました。シーンの作り方が上手いなあと思うだけ、余計に。

 

②森田というキャラの解釈が違うと思う。

演じている池田壮亮の解釈なのか、監督の解釈なのかは分からないのですが、森田のキャラが余りに原作と違いすぎます。

 

森田の一番いいところは、自分と敵対したりどうしようもない悪党にすら共感や同情を示す、人間という生き物に対する慈しみだと思います。

梅谷や川田や勝広、邦男のことを真剣に心配したりとか、敵対した中条や西条にですらどこか同じ悪党として理解を示す。

福本漫画の世界でいう「甘さ」ですね。

これが森田というキャラの設定で、絶対にはずせないポイントだと思います。

そしてクールな銀さんに対して、どちらかというと熱い男です。

ドラマの森田は、クールで頭がよくてすかした現代っ子という風です。個人的に余り好きなタイプではありません。というかむしろ嫌い…。

という個人的な好みは抜きにしても、これは「銀と金」の森田じゃないだろうと見ていて思います。

 

③パロディネタが寒い

なんだよ、西島さんって…。

あれ、面白いと思ってやっているんですかね…。勘弁してくれ。

 

船田のキャラ変とか、「絵画詐欺」編やポーカー編の物語の改編とか、むしろ上手いなと思います。

これが「銀と金」でなければ、普通に面白いドラマだと思います。

でも「その改編は上手いかもしれないけれど、そこを変えたら「銀と金」じゃないんだよ」と思う点が多すぎます。

 

不満を抱えながら、ここ最近は惰性で見ていました。

 

しかし……あの西条が登場します。

 

原作よりもムカつく、狂気と気持ち悪いさを持つ西条

「銀と金」中で一番キライなキャラは神威秀峰なんですが、二番目にキライなのがこの西条です。

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(引用元:「銀と金」3巻 福本伸行 双葉社)

嫌い……というか、面白くないキャラなんですよね。

有賀みたいなぶっ飛んだ部分もない、秀峰や蔵前のような狂気もない、中条のような背景の重みも感じさせない。

なんで室内なのに、ずっと帽子とマフラーつけているんだよ、などまったく関係ないところでイライラします。

ただの甘やかされたお坊ちゃんという感じで、蔵前に金をむしりとられていたときも「ざまあ」という心境にしかなりませんでした。(ひどい)

 

ドラマの西条は、原作ではイマイチ表現されきれていなかった「何かが欠けている」部分が、うまく表現されていました。

人生で負けてこなかったがゆえに、他人の痛みが分からない、人をモノのように見ている。

そういう人間が持つ当たり前の倫理がまったく通じなさそうな気持ち悪さを、大東駿介は非常にうまく演じていました。

原作の西条は「ただの嫌味なお坊ちゃん」でしたが、ドラマの西条は狂気じみていました。原作の西条に輪をかけてムカつきましたし、目が離せないキャラになっていました。

うーん、こいつが真っ青になるあの場面が早く見てみたい、ということがドラマを見るモチベーションのひとつになりました。

 

しかし、「はやく西条の血の気のひく顔を見て、カタルシスを得たい」という視聴者の期待を裏切るように、ドラマの西条は「気持ちの悪い悪党」からさらに変化していきます。追い詰められれば追い詰められるほど、何だか人間味のあるいい表情になっていくのです。

あんなに気持ち悪い奴だったのに、真顔になるとカッコいいし、

「ここで胃をキリキリさせているのは、オレと森田だけだ」

「お前が残りの三億円を出すのかよ」

と追い詰められて激高するシーンも良かったです。

あんなにイヤな奴なのに、その迫力に美緒も何も言い返すことができません。

 

そして森田が「オレもギリギリだった」と告白したシーンの、あのホッとした無邪気な子供のような表情。

どう考えても卑劣な最低野郎なのに、「よかったね」と言ってあげたくなってしまいました。

ああいうシーンがあるから、森田が最後に西条を認める気持ちが分かるんですよね。

握手じゃなくて、森田が抱きしめるのも良かったです。

そうそう、これでこそ「銀と金」の森田だよ。髪型も森田になったし。

原作だとこのシーン、握手なので「お前のその人をなめきった態度、オレは嫌いじゃなかった」というセリフが、完全にただの嫌味にしか聞こえませんでした。

 

役者さんが上手くそのキャラを表現してくれると、そのキャラに対する他のキャラの態度にも説得力が出てきます。

もしこのシーンの西条が今までどおり人間味を出していない演技であれば、森田が西条を励ましたり、抱擁するのも「嫌味か?」「何やってんの?」と見ているほうは思います。

 

西条を演じた大東駿介さんですが、名前は聞いたことがあるものの、主演クラスの役のイメージが余りないです。

これからぜひ、様々な役を演じて欲しいと思います。

西条のスピンオフが見たい。ぜひ検討をお願いします。

 

麻雀編に期待

ドラマはいよいよ、最終編である「麻雀編」に入りました。

大好きな蔵前を誰が演じるか楽しみにしていましたが、柄本明さんでしたね。善人面の笑顔が、背筋が凍るくらい怖かったです。

色々文句を言いましたが、このドラマの悪役のセレクトについては文句のつけようがありません。

西条のおかげでだいぶテンションが上がりましたので、麻雀編は楽しく見たいと思います。

 

「オレが牙、お前の強運が翼、二人でこの国の牙城を撃つ」

銀二のこのセリフ、カッコいいけど、漫画ならではセリフですのでドラマで使うとは思わなかったです。下手な人が言ったら、たぶん、画面が凍りつくと思います。

これをリアルで言って漫画にならないところは、さすがリリー・フランキーだと思いました。

 

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