NHKで放送されたアガサ・クリスティ原作のドラマ「蒼ざめた馬」の感想。
「蒼ざめた馬」か。随分、渋い選択だな。
ノン・シリーズものだし、クリスティの作品の中では知名度は余りないけれど、怪奇色の雰囲気が楽しめつつ、謎解きもしっかりしている。
何故か自分の中では「シタフォードの秘密」とごっちゃになりやすく、見始めるまで「シタフォードの秘密」の内容を想像していた。
どちらもスピリチュアル要素があるからだと思うけど。
※以下ネタバレあり。
途中まで内容をボンヤリとしか覚えていなかったからか、かなり面白かった。
「蒼ざめた馬」の女性三人組が、神秘と不気味さの雰囲気がよく出ていていい仕事をしている。
犯人を思い出すまで、主人公の自作自演だと思っていた。前の奥さんも殺していて、再婚した妻も殺すために計画したんじゃなかったかな、と思っていたが、そうだ、雑貨屋の主人が犯人だ、と思い出した。
原作だと金持ちだらけの名簿の中で、一人だけ雑貨屋が混じっているのはおかしい、と思うことが、疑うきっかけだったような気がしたけど、記憶がはっきりしない。
主要登場人物、という感じではないので、そこだけが若干不満だった。
「同じ被害者のふりをしている」「そうか、あれは誘導だったのか」など意外性は十分あるのに、人物像として印象が薄いので「こいつが犯人だ」と言われても「ふうん」くらいで終わってしまう。
「蒼ざめた馬」という謎の集団を隠れ蓑にして、裏で殺人の依頼を実行するという構図はホームズの超有名作品を彷彿させる。
①怪奇色がある
②「蒼ざめた馬」は、実は利用されているだけで何も関わりがない。
というこの話独特の部分が好みだ。
「殺人を示唆するが暗黙のため、証拠が残らない」ところは、後のあの作品を思い出すけれどこういう「人間の心理の隙間をつく」話がやっぱり上手いなあと思う。
もっとこういう不気味な怪奇的な雰囲気が覆っていて、しかし真相はしっかりミステリーになっている話が読みたかった。